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| ===関連=== | | ===関連=== |
− | ;第四天魔王 | + | ; 第四天魔王 |
− | : 第四天とは、欲界の浄土とされる天界で、兜率天(とそつてん)と呼ばれる六欲天の第四天である。覩史多天(としたてん)とも。 | + | : 第四天とは、天上界のうち欲望に捉われる六つの天界の第四の天部である。欲界の浄土ともされる天界で、兜率天(とそつてん)と呼ばれる。 |
| : 兜率天には七宝でできた宮殿があり、内院と外院の二院に分かれている。内院は必ず仏になることが約束された菩薩が住む世界である。 | | : 兜率天には七宝でできた宮殿があり、内院と外院の二院に分かれている。内院は必ず仏になることが約束された菩薩が住む世界である。 |
| : 内院では弥勒菩薩が修行をおこなっており、釈迦の入滅後56億7000万年後に弥勒仏として下生するとされている。 | | : 内院では弥勒菩薩が修行をおこなっており、釈迦の入滅後56億7000万年後に弥勒仏として下生するとされている。 |
| : 仏伝によると、釈迦もこの世に生誕する前に兜率天で修行をしていたとされ、第四天から降下して摩耶夫人の胎内に宿り生誕したとされている。 | | : 仏伝によると、釈迦もこの世に生誕する前に兜率天で修行をしていたとされ、第四天から降下して摩耶夫人の胎内に宿り生誕したとされている。 |
| + | : 天魔とは、第六天(他化自在天)を支配する天主・第六天魔王波旬を指すものである。仏教において仏道の修行を妨げる悪魔とされ、'''天魔'''、'''波旬'''、'''第六天魔王'''、'''第六天魔王波旬'''と呼ばれる。 |
| + | : ただし、第四天(兜率天)を支配する天主・第四天魔王なる悪魔は本来の仏教には存在しない。 |
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− | : 天魔とは、第六天(他化自在天)を支配する天主・第六天魔王波旬を指すものであり、仏教では仏道の修行を妨げる悪魔とされる'''天魔'''、'''波旬'''、'''第六天魔王'''、'''第六天魔王波旬'''などとされる「仏道を妨げる者」である。 | + | : 原典のひとつである奥浄瑠璃『田村三代記』の代表的な写本では第六天魔王の娘・立烏帽子とされる本と、第四天魔王の娘・立烏帽子とされる本が存在する。 |
− | : ただし、第四天(兜率天)には第四天を支配する天主・第四天魔王なるものは本来の仏教には存在しない。
| + | :『田村三代記』の成り立ちは、江戸時代の東北で御伽草子『鈴鹿の草子』などを下敷きとして発展した奥浄瑠璃の演目のため、伝承が口伝えでのみ継承されてきた性質から'''いつしか第六天魔王の娘が第四天魔王の娘と変化して、そのまま写本となった'''と考えられる。 |
− | : 原典のひとつである奥浄瑠璃『田村三代記』の代表的な写本では第六天魔王の娘・立烏帽子とされており、第四天魔王の娘・立烏帽子とされる写本も存在する。
| + | : 現代では第四天魔王の娘とされた写本の方が広く知れ渡っている事から、こちらの話が有名になったものと考えられる。 |
− | :『田村三代記』の成り立ちは、江戸時代の東北で御伽草子『鈴鹿の草子』などを下敷きとして発展した奥浄瑠璃の演目のため、話が口伝えでのみ継承されてきた性質から'''いつしか第六天魔王の娘が第四天魔王の娘と変化して、そのまま写本となった'''と考えられる。 | |
− | : 現代では第四天魔王の娘とされた写本の方が広く知れ渡った事から、こちらが有名になった。 | |
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| ; 三明の剣 | | ; 三明の剣 |
− | : 鈴鹿御前(立烏帽子)は、三明の剣と呼ばれる'''大通連'''、'''小通連'''、'''顕明連'''という三振りの宝剣を所有している。いずれも御伽草子や奥浄瑠璃などに登場する架空の刀剣であるため実在しない。 | + | : 鈴鹿御前(立烏帽子)は、三明の剣(さんみょうのけん)と呼ばれる'''大通連'''、'''小通連'''、'''顕明連'''という三振りの宝剣を所有している。いずれも御伽草子や奥浄瑠璃などに登場する架空の刀剣であるため実在はしない。 |
− | : 御伽草子『鈴鹿の草子』『鈴鹿の物語』『田村の草子』などでは、三明の剣は天竺真方国の阿修羅王が大嶽丸に贈ったものであるが、坂上田村麻呂に味方した鈴鹿御前の謀略により大通連と小通連の奪取に成功し、坂上田村麻呂を勝利に導いた。しかし、もう一振りの顕明連は大嶽丸が天竺真方国の叔父である三面鬼に預けており、顕明連の神通力を持って大嶽丸の復活を許してしまう事になる。 | + | : 大通連と小通連は天竺にて文珠師理菩薩に打たせ給わった剣で、通力自在の名剣である。大通連と夫婦刀とされる素早丸は、坂上田村麻呂の佩刀と伝わる'''騒速'''(そはや)がモデルとされ実在している。 |
− | : 『田村三代記』では立烏帽子(鈴鹿御前)が最初から所持している。大通連は文殊菩薩の化身(または文殊菩薩の打った智慧の剣)とされ、小通連は普賢菩薩の化身(または普賢菩薩の打った慈悲の剣)とされる。
| + | : 顕明連は近江の水海に棲む蛇の尾より取れた剣とされ、'''双無き剣'''とも'''水海剣'''とも呼ばれる。旭日にかざして虚空を三度振れば三千大千世界を見渡すことができるという。 |
− | : 顕明連は'''双無き剣'''や'''水海剣'''とも呼ばれ、近江の水海に棲む蛇の尾より取れた剣とされる。旭日にかざして虚空を三度振れば三千大千世界を見渡すことができるという。 | + | : これら三明の剣は仏教語の「三明六通」に由来するものと考えられる。また「文珠師理菩薩」や「三千大千世界」などにも仏教の影響が見受けられる。 |
− | : これら三明の剣は、釈迦如来と二脇侍である文殊菩薩と普賢菩薩がモチーフであり、「三明の剣」や「三千大千世界」など仏教からの影響が見受けられる。
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− | : 大通連と夫婦刀とされる素早丸は、坂上田村麻呂の佩刀と伝わる'''騒速'''(そはや)がモデルとされ、田村麻呂が奉納したというお寺に現在まで大切にされている。 | |
| : もっとも、彼女を祀る鈴鹿峠の片山神社には「鈴鹿流薙刀術発祥之地」の碑が建ち、京都祇園祭の山車である鈴鹿山の御神体でも大長刀を手にしていることから、鈴鹿姫信仰の上では刀剣より薙刀を振るう印象が強く浸透している。 | | : もっとも、彼女を祀る鈴鹿峠の片山神社には「鈴鹿流薙刀術発祥之地」の碑が建ち、京都祇園祭の山車である鈴鹿山の御神体でも大長刀を手にしていることから、鈴鹿姫信仰の上では刀剣より薙刀を振るう印象が強く浸透している。 |
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