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; 人物
 
; 人物
: 肉体と一体化した黄金の鎧と胸元に埋め込まれた赤石が目を引く青年。
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: 肉体と一体化した黄金の鎧と胸元に埋め込まれた赤石が目を引く青年。<!--一人称は「オレ」。-->
 
: 全ての物事を「それも有り」と解釈し、下された命令の好悪は考えず、その命令がどういう事態を引き起こすのかも敢えて思考を止めている。彼にとっての第一義は自らを召喚したマスターに仕えることであり、命令に逆らう事はまず無い。そもそも逆らうという考え自体が存在しないように振舞っている。
 
: 全ての物事を「それも有り」と解釈し、下された命令の好悪は考えず、その命令がどういう事態を引き起こすのかも敢えて思考を止めている。彼にとっての第一義は自らを召喚したマスターに仕えることであり、命令に逆らう事はまず無い。そもそも逆らうという考え自体が存在しないように振舞っている。
 
: 絶世の美男子だが、目付きは鋭く、他人を寄せ付けないものがあり、幽鬼のような白い肌といつも表情を崩さないため冷酷な人物に見られがち。敵には容赦なく、言動も余分なものが無いため、一見すると人間性を感じさせないが、本当は大変思慮深く義理堅い人物で、英霊の中でも特に人間的に優れた人物。顔の知らないマスターであろうとも、その安否や負担を忘れる事は無く、戦闘中は常に自らの能力に制限を用いて戦っている。
 
: 絶世の美男子だが、目付きは鋭く、他人を寄せ付けないものがあり、幽鬼のような白い肌といつも表情を崩さないため冷酷な人物に見られがち。敵には容赦なく、言動も余分なものが無いため、一見すると人間性を感じさせないが、本当は大変思慮深く義理堅い人物で、英霊の中でも特に人間的に優れた人物。顔の知らないマスターであろうとも、その安否や負担を忘れる事は無く、戦闘中は常に自らの能力に制限を用いて戦っている。
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; 日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)
 
; 日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)
: ランク:A++(CCC) / EX(Apocrypha)<br />種別:対軍・対神宝具(CCC) / 対神宝具(Apocrypha)<br />レンジ:40~99(CCC) / 2~5(Apocrypha)<br />最大捕捉:千単位(CCC) / 1人(Apocrypha)
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: ランク:A++(CCC) / EX(Apocrypha<!--、Grand Order-->)<br />種別:対軍・対神宝具(CCC) / 対神宝具(Apocrypha<!--、Grand Order-->)<br />レンジ:40~99(CCC) / 2~5(Apocrypha<!--、Grand Order-->)<br />最大捕捉:千単位(CCC) / 1人(Apocrypha<!--、Grand Order-->)
 
: 由来:インドラが黄金の鎧を奪う際、彼の姿勢が余りにも高潔であったため、 それに報いて与えた光槍。
 
: 由来:インドラが黄金の鎧を奪う際、彼の姿勢が余りにも高潔であったため、 それに報いて与えた光槍。
 
: 雷光でできた必滅の槍。黄金の鎧と引換に顕現し、絶大な防御力の代わりに強力な"対神"性能の槍を装備する。
 
: 雷光でできた必滅の槍。黄金の鎧と引換に顕現し、絶大な防御力の代わりに強力な"対神"性能の槍を装備する。
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== 真名:カルナ ==
 
== 真名:カルナ ==
カルナ。パーンダヴァ王家とカウラヴァ王家の戦いを描いたインドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する、「倒される側の英雄」。人間の姫であるクンティーと太陽神スーリヤとの間に生まれた黄金の英雄で、インド神話の大英雄アルジュナのライバルとして名高い。
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:カルナ。パーンダヴァ王家とカウラヴァ王家の戦いを描いたインドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する、「倒される側の英雄」。
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:人間の姫であるクンティーと太陽神スーリヤとの間に生まれた黄金の英雄で、インド神話の大英雄アルジュナのライバルとして名高い。
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彼の母・クンティーはクル王パーンドゥの妻だったが、パーンドゥは子供を作れない呪いを掛けられてため、后達は各々の手段で子供を設けるしかなかった。クンティーは任意の神々と交わって子供を産むマントラを会得していて、この方法でパーンドゥの子供を産んだ。だが彼女はパーンドゥの妻となる前にマントラの実験でスーリヤを呼び出し、子を一人設けていた。クンティーはしたたかな女で、初出産の恐れと神々が自分の子を認知するかという不安から、スーリヤに“この子供が貴方の息子である証拠が欲しい”と願った。スーリヤは彼女の言葉を聞き入れ、生まれてくる子供に自らの威光を与え、後の不死身の黄金の英雄・カルナが誕生した。
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:アルジュナが主人公であれば、カルナの役回りは悪役であるはずだが、マハーバーラタの物語では身分制度に苦しみながらも戦い続けた、悲劇の英雄である。
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だが、王の后となる事が決まってたクンティーにとって、息子は無用な存在でしかなく、これほどの恩寵、誠実さを示されながら彼女はカルナを捨ててしまう。こうして母に捨てられたカルナは自らの出自を知らず、ただ太陽神スーリヤを父に持つ事のみを胸にして生きていく。母の顔を知らず、またその母が彼を産んだ動機が不純であったためか、カルナの姿は見目麗しいものとは言えず、父の輝かしい威光は備わっているものの、その姿は黒く濁っていた。顔は常に酷薄なままで、母が居なかった為に人の感情の機微を学べず、その一挙一動は粗暴だったため、周りの人間からは煙たがられる日々を送っていた。そんな境遇で育ったカルナだが、彼は母や周囲の人間を一切恨まなかった。むしろ全てを肯定していた。
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:彼の母・クンティーはクル王パーンドゥの妻だったが、パーンドゥは子供を作れない呪いを掛けられてため、后達は各々の手段で子供を設けるしかなかった。
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:クンティーは任意の神々と交わって子供を産むマントラを会得していて、この方法でパーンドゥの子供を産んだ。だが彼女はパーンドゥの妻となる前にマントラの実験でスーリヤを呼び出し、子を一人設けていた。
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:クンティーはしたたかな女で、初出産の恐れと神々が自分の子を認知するかという不安から、スーリヤに“この子供が貴方の息子である証拠が欲しい”と願った。スーリヤは彼女の言葉を聞き入れ、生まれてくる子供に自らの威光を与え、後の不死身の黄金の英雄・カルナが誕生した。
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「''俺が生を受けたのは父と母あってこそ。<br /> 母がどのような人物であれ、俺が母を貶める事はない。<br /> 俺が恨み、貶めるものがあるとすれば、それは俺自身だけだ''」
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:だが、王の后となる事が決まってたクンティーにとって、息子は無用な存在でしかなかった。加えて、当時では結婚前の娘が子供を産むのは一大事であり、悩んだ末にカルナを川に捨ててしまう。これほどの恩寵、誠実さを示されながら。
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:幸いにも、御者の夫婦に拾われたであったが、母に捨てられたカルナは自らの出自を知らず、ただ太陽神スーリヤを父に持つ事のみを胸にして生きていく。
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:母の顔を知らず、またその母が彼を産んだ動機が不純であったためか、カルナの姿は見目麗しいものとは言えず、父の輝かしい威光は備わっているものの、その姿は黒く濁っていた。顔は常に酷薄なままで、母が居なかった為に人の感情の機微を学べず、その一挙一動は粗暴だったため、周りの人間からは煙たがられる日々を送っていた。
   −
カルナはその外見とは裏腹に優れた徳と悟りを得た少年であった。神の子でありながら天涯孤独の身であったため、カルナは弱き者達の生と価値を問う機会に恵まれた。その結論として、彼は自らの潔癖さを貫く道を選んだ。
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:そんな境遇で育ったカルナだが、彼は母や周囲の人間を一切恨まなかった。むしろ全てを肯定していた。自分が生を受けたのは父と顔を知らぬ母がいてこそ。
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:その外見とは裏腹に優れた徳と悟りを得た少年であった。神の子でありながら天涯孤独の身であったため、カルナは弱き者達の生と価値を問う機会に恵まれた。その結論として、彼は自らの潔癖さを貫く道を選んだ。
 +
:カルナにあるものは「父の威光を汚さず、報いてくれた人々に恥じる事なく生きる」という信念だけで、“冷酷、無慈悲ではあるが、同時に尊厳に満ちている”という英雄カルナのスタンスはこうして形作られていった。
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:自分が人より多くのものを戴いて生まれた以上、人より優れた“生の証”を示すべきだ。そうでなければ、力無き人々が報われないのだから。
   −
「''人より多くのものを戴いて生まれた自分は、人より優れた“生の証”を示すべきだ。<br /> そうでなければ、力無き人々が報われない''」
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:成長するにつれて武術の才能を顕にし、青年にカルナはクル族の競技会に参加することとなる。協議会ではパーンダヴァ五兄弟がその武芸によって名声を欲しい侭にし、特に三男アルジュナの弓の腕は素晴らしく、誰も敵う者はいまいと称えられていた。
 +
:普段誰も羨まず、誰も憎まないはずだったカルナは、アルジュナと彼の武芸を目にしたことで消極的な姿勢を守り切れず、飛び入りで協議に参加しアルジュナに並ぶ武芸を披露する。
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:そして優劣を決しようとアルジュナに挑戦しようとするが、王族であるアルジュナに挑戦するにはクシャトリヤ(カースト制度でいう所の武門、王族。カルナは商人である「ヴァイシャ」、あるいは奴隷の「シュードラ」であったと言われる)以上の資格が必要とされ、カルナはそれがなかった。
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カルナにあるものは「父の威光を汚さず、報いてくれた人々に恥じる事なく生きる」という信念だけで、“冷酷、無慈悲ではあるが、同時に尊厳に満ちている”という英雄カルナのスタンスはこうして形作られていった。
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:身分の差から挑戦を断られ、笑いものにされてしまったカルナを救ったのは、パーンダヴァと対立する王家であるカウラヴァ百王子の長兄、ドゥリーヨダナだった。
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:彼はカルナを気に入り、その場で王族として迎え入れた。これによってカルナは不名誉から救われたかに見えたその時、彼の出世を聞きつけた養父が現れたことで本来の出自が判明してしまった。
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そうして青年に成長したカルナはクル族の競技会に参加することとなる。協議会ではパーンダヴァ五兄弟がその武芸によって名声を欲しい侭にし、特に三男アルジュナの弓の腕は素晴らしく、誰も敵う者はいまいと称えられていた。普段誰も羨まず、誰も憎まないはずだったカルナは、アルジュナと彼の武芸を目にしたことで消極的な姿勢を守り切れず、飛び入りで協議に参加しアルジュナに並ぶ武芸を披露する。そして優劣を決しようとアルジュナに挑戦しようとするが、王族であるアルジュナに挑戦するにはクシャトリア(カースト制度でいう所の武門、王族。カルナは商人である「ヴァイシャ」、あるいは奴隷の「シュードラ」であったと言われる)以上の資格が必要とされ、身分の差から挑戦を断られ笑いものにされてしまった。
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:“御者の息子風情が恥を知れ”と、自分達より上の武芸を見せたカルナの身分を物笑いにしたパーンダヴァ五兄弟にカルナは激怒した。
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:自分の事なら甘んじて受けるが、養父を侮辱された事は聞き逃せない。例えそれが欲に駆られて名乗り出た養父だとしても、カルナにとっては捨て子の自分を育ててくれた、大恩ある父であったからである。
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:ここにカルナと五兄弟の対立は最早引き下がれない物となるが、日没を迎えたことで協議会は幕を下ろした。
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そんなカルナを救ったのはパーンダヴァと対立する王家であるカウラヴァ百王子の長兄、ドゥリーヨダナだった。彼はカルナを気に入り、その場で王族として迎え入れた。これによってカルナは不名誉から救われたかに見えたその時、彼の出世を聞きつけた養父が現れたことで本来の出自が判明してしまった。
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:以後、カルナは自分を救い、王族として扱ってくれたドゥリーヨダナを友とし、彼らカウラヴァ百王子のために奮戦することとなる。その先に待つ、パーンダヴァ五兄弟――血を分けた大英雄・アルジュナとの過酷な戦いを理解した上で。
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パーンダヴァ五兄弟は自分達より上の武芸を見せたカルナを更なる笑いものにした。“御者の息子風情が恥を知れ”と。カルナはこの言葉に激怒した。自分の事なら甘んじて受けるが、養父を侮辱された事は聞き逃せない。例えそれが欲に駆られて名乗り出た養父だとしても、カルナにとっては捨て子の自分を育ててくれた、大恩ある父であったからである。
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:カウラヴァ百王子とパーンダヴァ五兄弟の対立は激しさを増し、カルナはドゥリーヨダナ達を勝たせるために、その力を振るい続けた。パーンダヴァでカルナに対抗できるのはアルジュナだけで、そのアルジュナをもってしてもカルナとの直接対決は死を覚悟しなければならないものだった。いくつかの衝突、因縁、憎しみ合いを経て、両陣営の戦いは最終的に「クルクシェートラの戦い」で決着を迎える事となった。
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ここにカルナと五兄弟の対立は最早引き下がれない物となるが、日没を迎えたことで協議会は幕を下ろした。以後、カルナは自分を救い、王族として扱ってくれたドゥリーヨダナを友とし、彼らカウラヴァ百王子のために奮戦することとなる。その先に待つ、パーンダヴァ五兄弟――血を分けた大英雄・アルジュナとの過酷な戦いを理解した上で。
+
:戦いが本格的に始める前、カルナの母であったクンティーは彼に自らの出自を明かし、パーンダヴァ陣営に引き入れようという最後の賭けに出た。
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:クンティーはアルジュナの従者にして戦友であるクリシュナに事情を明かし、二人だけでカルナと面会する事に成功する。カルナは宿敵アルジュナの友人であるクリシュナに礼を欠かさずに迎え入れ、実の兄弟同士で戦うことの無益さを涙ながらに語り、アルジュナ達と共に戦い、栄光を手にするべきだと説得する母の言葉を静かに聞き入れた。
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カウラヴァ百王子とパーンダヴァ五兄弟の対立は激しさを増し、カルナはドゥリーヨダナ達を勝たせるために、その力を振るい続けた。パーンダヴァでカルナに対抗できるのはアルジュナだけで、そのアルジュナをもってしてもカルナとの直接対決は死を覚悟しなければならないものだった。いくつかの衝突、因縁、憎しみ合いを経て、両陣営の戦いは最終的に「クルクシェートラの戦い」で決着を迎える事となった。
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:けど、母と名乗るのが遅すぎた。カルナを省みるのが遅すぎた。それを恥と思わないのであれば、どうか答えて欲しい。
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:――母を名乗る貴女が、自らに何の負い目もないというのなら、自分も恥じる事なく過去を受け入れる、と。
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戦いが本格的に始める前、カルナの母であったクンティーは彼に自らの出自を明かし、パーンダヴァ陣営に引き入れようという最後の賭けに出た。クンティーはアルジュナの従者にして戦友であるクリシュナに事情を明かし、二人だけでカルナと面会する事に成功する。カルナは宿敵アルジュナの友人であるクリシュナに礼を欠かさずに迎え入れ、実の兄弟同士で戦うことの無益さを涙ながらに語り、アルジュナ達と共に戦い、栄光を手にするべきだと説得する母の言葉を静かに聞き入れた。その後に、カルナは告げた。
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:クンティーは身勝手な女ではあったが、それは生来の天真爛漫さと無邪気さから来るもので、決して恥を知らない女ではなかった。彼女とて、自らの行いが我欲に満ちたものだと自覚、自責はあった。
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:今まで独りで育ち、養父たちに感謝し、何の憎しみも抱かないカルナに、醜い嘘をつく事だけは彼女には出来ず、答えられずに項垂れて立ち去ろうとした。
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:だがカルナは「母親としての情」に訴え、自らの過去を明かすという危険を冒したクンティーの覚悟に応え、アルジュナ以外の実力に劣る兄弟たちには手を出さない事を誓う。
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:そうして、カルナなりの母への愛として館の外にクンティーを自ら送り出し、これが親子の最後の別れとなった。
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「''貴女の言葉は分かった。兄弟たちと手を取り、正しい姿に戻る。<br /> それは何一つ欠点のない、光に満ちた物語だろう。<br /> だが、一つだけ答えて欲しい。<br /> 貴女はその言葉を、遅すぎたとは思わないのか?''」
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:そして最終決戦直前、カルナの懐柔は出来ないと悟ったアルジュナの父である雷神インドラはバラモン僧に化け、沐浴をしていたカルナから黄金の鎧を奪った。
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:だがカルナは父から授かった不死性を失い、自らの破滅を受け入れたにも関わらず、戦いを辞めると言わなかった。アルジュナへの愛しさの余りに姑息な計略で鎧を奪った自分への恨みすら口にしないカルナの潔さに感じ入った。
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母と名乗るのが遅すぎた。カルナを省みるのが遅すぎた。それを恥と思わないのであれば、どうか答えて欲しい。
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:そうしてまで戦いに赴くのは、父スーリヤの威光を汚すことがカルナにとっての敗北に等しい。
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:何しろ、その為だけに生きてきた。自らを産み、育ててくれた者たちに胸を張れるように生きてきたカルナにとって、自らの命は、自分自身のものですらなかった。
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――母を名乗る貴女が、自らに何の負い目もないというのなら、自分も恥じる事なく過去を受け入れる、と。
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:それに、ドゥリーヨダナにも恩がある。スーリヤへの不敬となるが、カルナの背負う太陽の火でもなく、絶対的なスーリヤの輝きでもなく、人間が見せる不完全な魅力こそが太陽だと。その姿にスーリヤそのものの神性を見たインドラは自らの槍を彼に与えた。
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:自分はこの高潔な英雄から命以上の物を奪った。その見返り当る物を与えなければ自らの名誉を貶める事になるし、何より己の息子にも与えなかった最強の槍を、この男なら使いこなせるのでは、惚れてしまったのだ。
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クンティーは身勝手な女ではあったが、それは生来の天真爛漫さと無邪気さから来るもので、決して恥を知らない女ではなかった。彼女とて、自らの行いが我欲に満ちたものだと自覚、自責はあった。今まで独りで育ち、養父たちに感謝し、何の憎しみも抱かないカルナに、醜い嘘をつく事だけは彼女には出来ず、答えられずに項垂れて立ち去ろうとした。だがカルナは「母親としての情」に訴え、自らの過去を明かすという危険を冒したクンティーの覚悟に応え、アルジュナ以外の実力に劣る兄弟たちには手を出さない事を誓う。そうして、カルナなりの母への愛として館の外にクンティーを自ら送り出し、これが親子の最後の別れとなった。
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:こうしてカルナはインドラを見送り、自らの肉体と一体化していた鎧を失い、幽鬼のように痩せ細った姿となって戦場に向かった。そして迎えたアルジュナとの最後の戦い。
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:カルナの周囲に既に味方は無く、身を任せる戦車の御者すらパーンダヴァに内通する敵だった。呪いによる数々の重荷、異母兄弟である弟への感情に動きを狭められ、戦車の車輪は轍に嵌り、カルナの動きが止まった。
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<!--
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:もはやアルジュナの矢をかわすことができないが、アルジュナとしても車輪が嵌っている間に攻撃することは、戦争前に取り決めた「戦闘不能に陥った人間を攻撃してはならない」ルールを破ってしまう。
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:そのルールを無視しろと、従者であるクリシュナの囁きに応じてしまったアルジュナは、生涯の痛恨を抱いてしまう。
   −
そして最終決戦直前、カルナの懐柔は出来ないと悟ったアルジュナの父である雷神インドラはバラモン僧に化け、沐浴をしていたカルナから黄金の鎧を奪った。だがカルナは父から授かった不死性を失い、自らの破滅を受け入れたにも関わらず、戦いを辞めると言わなかった。アルジュナへの愛しさの余りに姑息な計略で鎧を奪った自分への恨みすら口にしないカルナの潔さに感じ入り、インドラは何故と問う。
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:対するカルナは、彼ほどの英雄が道義に反してまで自分を倒そうとする事に喜びを覚え、奇妙な誇りを抱く。
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-->
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:そこで長く、見えない縁に操られるように覇を競い合った兄弟は<!--アルジュナとカルナは-->ここぞとばかりに渾身の一撃を放ち合う。
   −
「''アナタを恨む事はない。一枚上手だっただけの話だろう。<br /> むしろ――そうだな。<br /> 神といえど父親である、というのが俺には喜ばしい''」
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:果たして、アルジュナの弓は、太陽を撃ち落した。
   −
では戦いに赴くのは何故だ、とインドラは尋ねた。
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:カルナは死後、父スーリヤと一体化したと言われている。『施しの英雄』と呼ばれ、何かを乞われたり頼まれた時に断らない事を信条とした聖人。
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:非常に高い能力を持ちながら、血の繋がった兄弟と敵対する悲劇を迎え、様々な呪いを受け、その真価を発揮する事なく命を落とした英雄。
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「''俺にとって敗北とは、父の威光を汚す事だ。<br /> 死が待っているにしても、逃げることは出来ない''」
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:余談ではあるが、アルジュナがカルナは自分の兄である事を知っていたかどうかは定かではない。カルナがクンティーの息子である事を知っていたのは当事者であるカルナとクンティー、スーリヤ、それとクリシュナだけと思われる。
 
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何しろ、その為だけに生きてきた。自らを産み、育ててくれた者たちに胸を張れるように生きてきたカルナにとって、自らの命は、自分自身のものですらなかった。
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「''それに、ドゥリーヨダナにも恩がある。<br /> 俺は何故か、あの厚顔で小心な男が眩しくてな。<br /> 我が父への不敬となるが、偶にあの甘い光こそが、日の暖かさだと思うのだ''」
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カルナの背負う太陽の火でもなく、絶対的なスーリヤの輝きでもなく、人間が見せる不完全な魅力こそが太陽だとカルナは語る。その姿にスーリヤそのものの神性を見たインドラは自らの槍を彼に与えた。
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自分はこの高潔な英雄から命以上の物を奪った。その見返り当る物を与えなければ自らの名誉を貶める事になるし、何より己の息子にも与えなかった最強の槍を、この男なら使いこなせるのでは、惚れてしまったのだ。
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こうしてカルナはインドラを見送り、自らの肉体と一体化していた鎧を失い、幽鬼のように痩せ細った姿となって戦場に向かった。そして迎えたアルジュナとの最後の戦い。カルナの周囲に既に味方は無く、身を任せる戦車の御者すらパーンダヴァに内通する敵だった。呪いによる数々の重荷、異母兄弟である弟への感情に動きを狭められ、戦車の車輪は轍に嵌り、カルナの動きが止まった。そこで長く、見えない縁に操られるように覇を競い合った兄弟はここぞとばかりに渾身の一撃を放ち合う。
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――果たして、アルジュナの弓は、太陽を撃ち落した。
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カルナは死後、父スーリヤと一体化したと言われている。『施しの英雄』と呼ばれ、何かを乞われたり頼まれた時に断らない事を信条とした聖人。非常に高い能力を持ちながら、血の繋がった兄弟と敵対する悲劇を迎え、様々な呪いを受け、その真価を発揮する事なく命を落とした英雄――それがカルナである。
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余談ではあるが、アルジュナがカルナは自分の兄である事を知っていたかどうかは定かではない。カルナがクンティーの息子である事を知っていたのは当事者であるカルナとクンティー、スーリヤ、それとクリシュナだけと思われる。
      
== 登場作品と役柄 ==
 
== 登場作品と役柄 ==
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