海洋油田基地セラフィックス
- カルデア前所長マリスビリー・アニムスフィアの虎の子の財産。
- 北海に建設された、アニムスフィア家所有の海洋油田基地であり、カルデア運営の予算を決する資金源の一つで別部署のようなもの。
- 移動式であり、半潜水式のプラットフォームで、100名以上のスタッフが昼夜交代制で運営している。セラフィックスのスタッフは全員がカルデア所属。
- カルデア本部とは遠く離れた施設であるが、カルデアに定時連絡をしており、メールレターやビデオフォンを使用して連絡が出来る。
- あちらの様子を知っているのはカルデア創立時からいるスタッフのみであるが、その古参スタッフもレフの破壊工作によって命を落としていた。
- 終章後にあたる『深海電脳楽土 SE.RA.PH』の時点でセラフィックスと連絡を取り合うスタッフは、ここ数年の通信で交友を深めた通信友達であった。
- 以前から不可視領域の原因の一つと推測したフラウロスが報告し、それを受けたゼパルは玉座での決戦の後にセラフィックスを活動拠点とした。
- これにより『深海電脳楽土 SE.RA.PH』においてセラフィックスは特異点化した上にマリアナ海溝に沈んでおり、外界との連絡も取れず、このままでは10,000mまで沈没して、その水圧によりバラバラにされてしまうという状況に。これを機にセラフィックス内部は地獄と化していく。
- 賃金の低い通常職員とカルデアから派遣された特権職員、昼のスタッフと夜のスタッフが存在しており、石油資源と魔術資源、記録を残した療法士からも「軋轢が生まれるのも当然」「建物も人間関係も複雑に入り組んでいた」と言っている。
- 加えて海洋油田基地という特殊かつ海上での過酷な作業環境もあってか、精神的に追い詰められた職員もいた。
- それもその筈、セラフィックスは「人理継続」という理念によって創られ、まっとうな人間の精神では耐え切れなかったのだ。
- さらに状況が悪化していく内に所長であるヒデヤス・アジマと副所長は処刑され、薬が切れたことで役に立たなくなった医者たちは殺され、ベックマンに逆らった職員は外の怪物への生贄に選ばれた。洗浄エリアの鍵を落としてしまった、多くを食べる、水をこぼした、異邦人だから、気に食わないから、そんな理由で殺された者がいた。ヴラド三世や鈴鹿御前も殺された職員に対して「全員自業自得」とまで言い切っていた。
- 実はセラフィックスは石油採掘と見せかけて霊脈を探索していただけでなく、ある実験のために作られた施設である。海洋油田基地として機能している表側とは別に、内部には秘匿された魔術工房である裏側があり、その裏側を使うことを許された人間はセラフィックスの持ち主、アニムスフィア直属の人間だけである。
- これは他のロードたちの目を欺く手段であり、実験に必要な条件が海底にしかなかったからでもある。また、港から運ばれる機材の中には、一般職員では知りえないものが含まれていた。石油を掘るという作業に見せかけて霊脈(レイライン)を探査する秘匿施設が存在する。
- 天球シミュレーター室、システム・アニムスフィアは放棄されたものの、セラフィックスに根付いた魔神ゼパルによって利用された。
- カルデアの管制室に酷似しており、コフィンも存在している。コフィンに電源を入れれば何年前に死亡した魔術師であっても生体回路として何度も使用できるほか、SE.RA.PHの動力源の役目を果たすが、その電源も終盤でエミヤ・オルタが破壊したことで完全に死亡した。
- 主人公たちの手で事件は収束したものの、BBの手によってこの事件は最終的に虚数事象として処理され、主人公が目を覚ました時にはダ・ヴィンチから一月初めにセラフィックスは解体されて跡形もなくなっていることが語られた[1]。
事件の経緯と末路
- 一月
- 魔神ゼパルがセラフィックスに出現。セラフィックスの掌握を開始し、物質の情報化(電脳化)を始める。
- 外部との連絡がとれなくなり、内部では基地の至るところが唐突に消滅、港の船はすべて炎上し、ヘリも壊されていた。
- セラフィックスの職員には理解できない、『異常』という他ない極限状態が訪れ、基地に残された200名近い人間は、軽い恐慌状態に陥った。
- やがてセラフィックスは閉鎖空間となる。ゼパルは医療チームと共にやって来たキアラに発見され、ちょうど良しと憑依先に選び、潜伏。時間神殿での傷を癒やす。
- 二月
- 暴動と混乱の日々、石油基地の電脳化は少しずつ進んでいく。
- 生存者は昼のスタッフ、夜のスタッフ合わせて100人ほどになった。職員達は比較的安全な(消滅のない)エリア、中央管制室で暮らすようになった。
- 幸い食料の備蓄は十分にあり、『消滅』にさえ巻き込まれなければ希望はあった。医療スタッフも数名生き残っており、キアラも精神が腐っていくのを自覚しながら、セラピストとして職員のために奔走する。
- 五月になれば、カルデアがこの異常に気がつく。それが職員たちの唯一の、そして最大の希望となった。
- 三月
- ゼパル、キアラに名を告げて本格的に共存という名の支配下においた。並行世界の記録から『EXTRA CCC』でのキアラの経歴を知ったゼパルはこちらのキアラを同期させ、能力を引き出す。
- 本来ムーンセルでのキアラの事件は虚数事象[2]なので並行世界を閲覧できるゼパルでも見えないが、閲覧対象のキアラがビースト候補[3]であった為に、ゼパルの被支配化と言う副作用を伴って実現してしまった。
- セラフィックスの電脳化はやがてSE.RA.PH化に変化。セラフィックスは深海下に沈むも電脳化のおかげで維持されるが、時間は少しずつSE.RA.PH内時間に変化し、外界との隔絶が更に進行してしまう。
- 通常職員も特権職員も、分け隔てのない共同体が出来上がったが、治安・風紀を守るための組織、という名目の暴力機構が出来る。ベックマンの手で組織と法律が作られたものの、組織の存在自体はみなの総意、全員が良しとした結果だった。この時点でセラフィックス内の道徳は末期を迎えた。
- キアラ(ゼパル)による、生き残り職員達のカルト化開始。閉塞状態によって狂乱状態になったセラフィックスの職員を救い、癒したキアラがいなければ誰一人として生きていけない依存体制となってしまった。その後において、特に理由もなくクジ引きをするような気楽さでひとりずつそのグループから脱落させた。グループから落とされる危機感と恐怖は、職員たちの人格を崩壊、堕落させて人間性を剥奪した結果、集団のカルト化・暴行・粛清や殺戮が行われていた。
- キアラによる何度目かの試行錯誤の末、天体室が開かれる。副所長はあと一歩、というところで恐怖と自己保身に負けて起動させられなかった。最後のレバーを引いたのは汚れ仕事専門の男だった。
- そして、コフィンの中に保存されていた128人のマスターを介して128騎のサーヴァントを呼んだ事で事態は悪化の一途を辿り、100倍時間は始まった。
- 四月
- セラフィックスの大部分が電脳化。キアラは『EXTRA CCC』での自分が吸収していたBB/GO、メルトとリップのサルベージに成功。
- BB/GOはSE.RA.PH管理者として生き残った職員たちに現状を伝える。ここの時間の尺度は外の100倍=現実世界の1分はここでは100分に相当し、感覚時間では五月にカルデアの救援が来るまで50年以上もかかる、と宣言される。(ただし、三月末にサーヴァントが召喚された時点で「残りの時間はセラフ感覚で一年」とのコメントもあるので、「電脳化された空間内では時間の尺度が100倍になる」という事実だけを伝え、意図的に誤解させた可能性もある)
- 管制室に避難したセラフィックス職員たちの内紛はより悲惨なものに。キアラに乗せられたアーノルド・ベックマンは生き残りを纏め上げ、ほぼ集団を統率するが、逆らった職員は外に追い出して攻性プログラムの餌食にしたり、SE.RA.PH内を見てまわっているメルトたちに攻撃を命じたりした。
- BB/GOは表向きはキアラに従うフリをしたが、センチネルにされたメルトとリップはキアラへの敵愾心を残していた。しかしサルベージされた身、キアラには逆らえないため、とりあえず中立を選び、SE.RA.PH内で状況の把握に努めていた。最終的にメルトたちはキアラに反旗を翻したが、メルトは廃棄処分、リップは拘束されて自由意志を封じられてしまう。
- 数え切れない聖杯戦争の末、キアラはビースト幼体になり、この工程で“本体”の作成に入る。ビーストとして変生する為の次の肉体を、SE.RA.PHそのものにしたことで、SE.RA.PHはキアラへの変生を開始する。この時点で人間として居た殺生院キアラ、そしてそれになんとかすがっていたゼパルは、いつでも切り捨てられる「子機」となった。
- ビースト反応が出た事でムーンセルが事態を察知。ムーンセルに属した存在が原因となるビースト案件だったため、CCC(特殊処理)としてBBが派遣される。そうして地球のSE.RA.PHに出力されたBBだが、既にキアラはBB単独では対応できない事を即座に理解。現地人類の協力を経て倒すしかないとオーダーを立てる。
- ムーンセルのBB、セラフィックスのBB/GOと接触。互いの目的の為、入れ替わりを実行。以後、SE.RA.PHを運営するAIはムーンセルBBとなる。以後はキアラに入れ替わりがバレないよう、「キアラの手下である管理AI」として振る舞う。
- なお、この時点で魔神ゼパルはキアラによって切り捨てられ消滅した。
- 五月
- キアラの完全SE.RA.PH化が完了。セラフィックス諸共2030年のマリアナ海溝にレイシフトする。
- しかし、トラパインが情報分解されながらも単身で通信室に到達し、BBの助けを得てカルデアにSOSを送った。救難信号を受けたカルデアは、BBのガイドと工作を経てセラフィックスへのレイシフトを決行する。
人物
- マーブル・マッキントッシュ
- セラフィックスの職員。実は既に死亡しており、『深海電脳楽土 SE.RA.PH』で主人公たちと行動しているのは魔神ゼパルによって人格が変性した別の人物が化けたものである。
- ヒデヤス・アジマ
- セラフィックスの所長。事件を予見できなかった責任を取らされ、3月に処刑された。
- 副所長
- セラフィックスの副所長。事態を解決できない責任を問われ処刑された。
- アーノルド・ベックマン
- セラフィックス所長の秘書。事務官をしており、セラフィックスが危機に陥った際には担ぎ上げられて職員を仕切っていたが、次第に生き残ったメンバーを好き勝手に処刑する独裁者と化していった。
- 非常に傲慢で自尊心が強く、身勝手で短気で暴虐な性格で、立場や地位、学歴などが下だと見なした者にはあからさまに見下した無礼な態度を取り、非常事態にも拘らず自分の責任問題や保身を真っ先に口に出し、少しでも思い通りにならない事があるとすぐに他人に暴力や暴言をぶちまけたり物に当たり散らしたりするような典型的な小人物。現状のセラフィックスを纏めている現状を鼻にかけている所もかなり目立ち、自分を助けに来た主人公達に対してもセラフィックス内での自分の身分を理由に「自分達を助ける義務がある者、身分が下の者」と見下しながら一方的に「リーダー」を自称し、慇懃無礼かつ高圧的な態度で接する(しかも、これでも当の本人からしたらカルデアのマスターとして丁寧に接していたつもりだったらしい)。
- 最初は比較的安全だった管制室内に突如現れた魔神に怯えながら隠れていて、主人公一行に管制室で遭遇してからは教会で保護されていたが、しばらくして普段の調子に戻るとトリスタンに管制室から通信機を持って来させ、センチネル討伐に向かった主人公一行に好き勝手な事を言い始める。しかし、メルトリリスがセラフィックス地下に墜落して助けに行こうとしている事を聞き、メルトリリスを見捨ててすぐに帰投して自分を天体室に連れていく事を優先するよう指図した所でついに主人公からはっきりと拒絶され、その後八つ当たりでマーブルに暴力を振るったり、メルトリリスを酷く侮辱してどうでもいいと放言したり、生還後に主人公の評価を地に落とすような報告もできると脅したりしながら何度もしつこく従順を迫ったが、そこでとうとう主人公側から一方的に通信を切断された。
- その後、通信を切られた事に激しく逆恨みしながらトリスタンに主人公を連れ戻しに向かわせたが激情は収まらず、怒りに任せて暴れ回りながら管制室近くにある毒薬を使って主人公を脅迫してでも指示に従わせてやると喚いていた所で、セラフィックスの実験の秘密を闇に葬る為に現れたエミヤ〔オルタ〕に銃殺された。
- トラパイン
- 女性職員。カルデアに連絡を試みるために単身で通信室に到達してカルデアにSOSを送るも、情報分解されて事切れた。
- BBはこの時の彼女の人間力を讃え、救難信号発信への手助けをした後に丁寧に埋葬した後、ゼパルとキアラを除くこの事件に巻き込まれた人物全員を助ける決意を固める。
- ホリイ
- 管制室に生きていたとされる職員の一人。ロッカーに籠ってモルヒネを打ち続けていたためモルヒネ中毒の兆候があり、作中の一週間前からロッカーの中で沈黙、あるいは死亡していたと考えられる。
- 殺生院キアラ
- セラフィックスの一角にある教会に勤めていたセラピスト。
- 汚れ仕事専門の男
- 職員内で唯一、キアラと肉体関係を持たなかった。最後に天体室のレバーを下げ、100倍の遅さで流れる時間の中で行われる大量のサーヴァントによる聖杯戦争を開始してしまった。
関連組織
- 人理継続保障機関フィニス・カルデア
- 上位組織。資金の供給先であり、スタッフも形式上は全てここに所属している。
- 魔術協会
- 構成員の中で存在を知っているものは限られているが、秘密が漏れないように警戒していた対象。