衛宮士郎 (プリズマ☆イリヤ)

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ここでは『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』における衛宮士郎について説明する。
Fate/stay night』でのイリヤについては「衛宮士郎」を参照。

衛宮士郎(Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ)

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』に登場する衛宮士郎。
イリヤの義兄として一緒に暮らしている。

略歴
衛宮切嗣の養子。切嗣と妻のアイリが色々あって籍を入れていない状態のため、義妹のイリヤとは姓が異なる。
切嗣とアイリはいつも家を空けているため、普段はイリヤと、アインツベルン家の使用人であるセラリーゼリットと暮らしている。学校では友人であり生徒会長の柳洞一成の手伝いなどをしている。
人物
基本的な性格骨子は『stay night』の士郎と変わらない。ただし家庭環境の違いかこちらの方がやや人間味が増しており、年相応の助平心なども持ち合わせているようである。
妹やその友達の他、家のメイド、学校ではクラスメイト後輩、そして突如現れた転校生の遠坂凛ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトら、多くの女性と(無自覚に)フラグを立てている。
能力
魔術とは関係のない一般人。魔術は使えないが、料理はこちらの世界でもかなりの技術を身につけている。耐久力は(ギャグ補正もあり)stay night本編並み。
原作ではあまり作らなかった中華料理も得意としている。むしろ、「これ一つあれば料理を全部こなせる」という考えから旅先にも中華鍋を持ち込むほど。
本編よりも女難が激しくなっており、しばしばエッチなハプニング(所謂ラッキースケベ)に遭遇しては後で酷い目に遭うことが多い。

衛宮士郎(Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ:平行世界)

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』で登場。美遊の義理の兄にして、平行世界の「衛宮士郎」。
他との区別のため、ファンからは「美遊兄」と呼ばれることもある。アニメ版では「美遊の兄」とクレジットされている。

略歴
衛宮切嗣に助けられてから世界を救うための旅をしており、5年ほど前に冬木市にやってきた際に美遊に出会った。切嗣の死後に託された美遊を妹として共同生活を送る傍ら、桜とジュリアンとともに学校生活を送るが、美遊の所在をジュリアンに知られてしまい、奪われてしまう。
言峰からエインズワース家の目的や世界の現状を知らされるも、美遊を助けることを選び、エインズワース家との戦いの末に妹の美遊を平行世界に逃がすことは成功するものの、自身は囚われの身となっていた。美遊が元の世界に連れ戻され再びエインズワース家に囚われた後、救出に訪れたイリヤ達と遭遇し、妹の救出を託す。イリヤ達とエインズワース家の戦いのどさくさに紛れ、子ギルによって救出された彼は、妹を助けるため再び戦場に立った。
人物
妹と過ごしていた時間があるせいか、本編やプリヤ時空の士郎と比べると若干女性の扱いに慣れている。
幼少時は切嗣を「正義の味方」として憧れたが、冬木に訪れた際に切嗣が闇に飲み込まれそうになる大量の被害者を前に背を向けてしまったことに加えて美遊に対して道具に近い態度を取ったこと、死亡した切嗣から世界を救うことができる美遊を託されるも、そうなれば美遊が世界を救済するために永遠に魂と器を世界に縛られることを知った士郎は「正義」に対して迷いを抱いてしまう。ならばいっそのこと力を失ってしまえばとさえ願ってしまうが、美遊が「士郎と本当の兄妹になりたい」という願いを聞き、美遊の兄になることを決めた。
それまでのぎこちない笑いではなく心から笑うことができ、周りに目を向けることができたが、美遊に対して朔月家から連れ出されたという事実を隠し続けることに耐えられず、それを打ち明け、懺悔して本当の兄妹になろうとするが、それもエインズワース家に見つかったことで崩れ落ちてしまう。
奇跡を起こす存在である美遊を奪い取ろうとする人間や勢力、即ちエインズワース家に美遊を連れ去られた挙句、親友だったジュリアンも一転して敵対状態に陥り、更に言峰から世界と美遊のどちらかを選ぼうとも正義は崩れることを突きつけらてしまう。その最中、桜から聖杯戦争の開始を告げられ、日常を共に過ごした桜さえも聖杯戦争に関わりのある家系の関係者であることを知り、その果てに彼女は兄である慎二の手により死んでしまった。
正義に憧れたのに何一つ救えず、ただ漠然と真似て取り繕ってきただけの偽物である事を、全てを失い、こうして剥き出しになった自分が無価値な存在である事も、そういった過酷な出来事を経て思い知った。だからこそ「本当を始めよう」と、守護者となった別の可能性の自分の力を、たった一人の妹を守るために振るうことを誓った。エインズワース家からの刺客を次々と倒し、ジュリアンと再会した彼は妹を犠牲にして人類を救おうとするエインズワース家を「正義」と認めながらも、その考えを否定し「悪」となった。
能力
『stay night』同様に投影魔術を駆使して戦うが、クラスカードで繋がった英霊が守護者となった別の可能性の自分を前借りしており、起源すらも錬鉄の英雄と同じになっている。かなりの負担を強いるようで、戦うたびに士郎の身体は英霊エミヤに「置換(侵食)」され、髪は白髪化し、体も褐色に染まっていく。声も幽閉された時には、扉越しに聞いたイリヤたちが士郎と認識できなかった程にしわがれている。
本人曰く「魔術回路を先取りしただけで入れ物はポンコツのまま」。「無限の剣製」も使用可能なようだが、エインズワース家との決戦の際には魔力が十分に無い為、不発に終わってしまった。
なお、魔術についても正しい形で教えられたようで、鍛錬の際は強化した定規で鉄パイプをバラバラにしていた。
過去に行われた第五次聖杯戦争ではアーチャーのカードを使用して、ヘラクレスやアーサー王などのカードを使用するエインズワース家からの刺客を悉く撃破して聖杯を手に入れ、ギルガメッシュのカードを使うアンジェリカに対して固有結界を展開して足止めしきるという大金星を挙げたが、本来は魔力量としては到底不可能なレベルであり、美遊の「願い」が効果を発揮して魔力が流れ込んできていたためにできた芸当である。

クラスカード / 宝具

各カードと宝具の詳細な性能は各々のページを参照。ここでは士郎の固有の仕様や、作中での使用状況を記述する。

クラスカード・アーチャー
限定展開
不明。
夢幻召喚
英霊エミヤと一時的に同化し、アーチャーの宝具とスキル、身体能力を会得する。
元はどの英霊にも繋がらない失敗作の「屑カード」だったが、士郎が己の全てを差し出す代わりにエミヤが力を貸すことで変身に成功した。
白いマントの下に右腕が露出した赤い外套を纏い、頭部にバンダナを着けた姿となっている。

使用した武器

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

美遊の元いた世界の衛宮士郎が使用。

定規
強化の魔術の鍛錬に使用。鉄パイプを容易く切り裂いた。
巻き尺
ジュリアンを攻撃する際に使用。金属製の計測部を伸ばした上で強化し、剣のように扱う。
黒鍵
エインズワース家の結界を破壊するために使用。言峰から結構な額で二本入手するが、効果はなかった。
慎二の攻撃を防ぐ際に使用。

投影宝具

本編とは設定自体が別物とされている『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』でのもの。美遊の元いた世界の衛宮士郎が使用。

虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)
斬山剣とも称される、全長数十メートルはある巨大な剣。元々はギルガメッシュの蔵の中に入っていた。
れっきとした神造兵装であり本来なら投影は不可能だが、全行程をキャンセルすることで形だけのハリボテとして投影し、ジュリアンの居場所までの足場にした。
絶・万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)
イガリマと対になる炎の剣。こちらも元々はギルガメッシュの蔵の中に入っていた。
偽・螺旋剣(カラドボルグII)
フェルグスが所有していた、対軍宝具を投影し、改造したモノ。
巨大なデコイで油断させて背後に回り込んだ慎二を返り討ちにするために使用した。
ザカリーでの戦いにおいてもゼロ距離で放って致命傷を負わせた。

登場作品と役柄

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
Fate本編とは異なる並行世界の存在。一般人。イリヤの義兄。
本編以上の凄まじい数のフラグを立てており、しかもそのうち3人は小学生……。
ドライでは美遊の住む世界の彼が登場。エインズワース家に幽閉されていたが、ギルガメッシュの手引きで表に出る。原典同様に投影魔術を使う。

人間関係

プリズマ☆イリヤ

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
義理の妹。「お兄ちゃん」と呼ばれ、慕われている。
アイリスフィール・フォン・アインツベルン
義理の母。ドラマCDでは「母さん」と呼んでいる。
衛宮切嗣
義理の父。家族内の男女バランスから、早く海外から帰ってくることを切に望まれている。
セラ&リーゼリット
家族のような存在。セラからは厳しく当たられているが、若干露骨な好意を向けられている。
美遊・エーデルフェルト
平行世界の自分の妹のような存在。彼女からは「士郎さん」と呼ばれ、慕われている。
クロエ・フォン・アインツベルン
義理の従妹であり、自分の義妹と同一の存在。彼女にも「お兄ちゃん」と呼ばれ、慕われている。
遠坂凛ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
学園のクラスメイト。好意を寄せられており、頭を悩ます一因となっている(煩悩方面でも)。
森山奈菜巳
学園のクラスメイト。彼が無自覚にフラグを立てている女性たちの一人でもある。
嶽間沢豪兎
アルバイトの雇い主。雇われた経緯を推測すると、息子二人のどちらかがクラスメイトなのだろうか?

プリズマ☆イリヤ(平行世界)

朔月美遊
最愛の義妹。彼女からは本当の兄妹になりたいと思われるほどの親愛を寄せられている。
ジュリアン・エインズワース
妹の美遊を捕えた仇敵。かつては穂群原学園での友人同士。
アンジェリカ
美遊を捕えた仇敵の一味であり、自分を長期間拷問した人物。
ただ、敗北してジュリアンから見捨てられた彼女を家に招く等、彼女個人に対してあまり強い悪感情は抱いていない模様。
衛宮切嗣
原作同様に恩人で憧れ。だが、災害に背を向ける姿や美遊に対する態度に迷いも抱いていた。
間桐桜
弓道部の後輩。Fate本編同様に日常の象徴であったが、後に聖杯戦争関係者だと知る。
「何もかも捨てて一緒に逃げよう」と言われて心が揺れるが、美遊を助ける為に彼女を選ばないことを選んだ。
本編の時間軸では衝撃的な再会を果たす。
言峰綺礼
ジュリアンに襲われた自分を助けてくれた存在。彼の説明を受け、美遊を取り戻すことを決意する。
エミヤ
夢幻召喚したカードの元となった英霊。とある平行世界で英霊に至った彼の生涯を理解して、「自分と切嗣の目指した正義の完成形」と評した。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
最愛の妹にできた、平行世界における大切な友達。

名台詞

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

「ハハ、公正にか。安心してくれよ、クロ。俺は―――――料理に関して嘘は許さない」
クロとイリヤのパウンドケーキ勝負の審判として、公正な判定を依頼された時、不必要に真剣な顔で言い放った台詞。これにはイリヤもクロもメロメロ。
その宣言通り、龍子が余計なことをして無残な味に変わり果てたイリヤ班のパウンドケーキを口にした時は正直に感想を伝えている。もちろん言葉を選んではいたが。
では自分の班のパウンドケーキの勝ちか、とクロは確信したがその審判は…?
「まあ、もう望みがない歳になっても真っ平らだっていうならともかく、イリヤはまだまだこれからなんだから…」
アニメ版『プリズマ☆イリヤ』にて、イリヤが何か悩みを抱えているという話題でリズに「胸について悩んでいる」と言われ、慌てながら言った台詞。
小学生の妹の悩みであればこの解答で問題はなかっただろうが、リズが言った悩みは実は士郎が帰ってくる直前にセラが語った悩みであり、無意識で地雷を踏み抜いてしまった。
「俺が俺達がイリヤの両親だ」
第一期アニメBD/DVD特典ドラマCD『アインツ家集合! 家族の団欒CD』にて。イリヤが書く母親についての作文で、セラを母親に設定しその成り行きで士郎を父親にすることに。イリヤからパパと呼ばれると、突如謎の父性が目覚め暴走する。
「いきなりこの対応はないと思うんだよな」
「アポ無しを理由に銃撃されたのは初めてだよ………」
番外編より。エーデルフェルト邸の凛を唐突に訪ねた所、大量の自動追尾銃セントリーガンにバンバン撃たれまくった挙句、RPGロケットランチャーをぶち込まれてしまう。防衛システムに魔術を使っていないのは神秘の秘匿の為だろうが、それでも日本の住宅地のド真ん中でセントリーガンやRPGはやり過ぎである。この件に限らず、「プリズマ☆イリヤ」での士郎は色々と酷い目に遭っている。
「遠坂と一緒に学校に行きたい」
「ただそれだけの俺のわがままだ」
同上。凛に関係ないのになんで自分を学校に来させたいのか問われての返答。この世界では主人公じゃないのにフラグを立てまくっている。
「いや…最近の小学校の宿題って難解なんだな…」
上記とは違う番外編にて。大河作の生々しい宿題を口論しながら解いてるイリヤとクロと美遊を見ての感想。
「誕生日ってのはさ、生まれてきたことを祝福し、生んでくれたことに感謝し、今日まで生きてこられたことを確認する、そんな日なんじゃないか? 」
誕生日を祝う意味が分からないと言った美遊に対して語った、自分なりの誕生日の定義。本編の境遇を考えると色々と深い台詞である。
「ル…ヴィ……ア……?」
「ルヴィアは……おっぱいが大きいなぁ…」
「あれは質量の暴力だ… 見まい見まいと思っても顔のすぐ下で圧倒的な存在感を放つソレに自然と目が吸い寄せられる…
 たまに無防備に当てられるソレの感触は忘れようと思ってもなお深く記憶に刻み込まれ……」
「遠…坂……」
「遠坂は… 足を出しすぎだ…」
「スカートの短さは胸の自信の無さからだろうか… しかしあんな丈で完全なガードなど望むべくも無くしばしば奥の布があらわになる…
 大腿から臀部にかけてのラインは筆舌しがたい美とエロスを…」
「一成はときどき目が怖い…」
「最近の小学生は発育が…」
惚れ薬と間違えて、常備している自白剤をルビーによって注入された結果青白い顔に虚ろな目で語りだしたぶっちゃけトーク。
この士郎の評価にルヴィアと凛は顔を真っ赤にして恥ずかしがり、一成は地味にショックを受け、雀花と那奈亀は「ウチらにも矛先がー!?」と危機感を覚えた。
これが本音なのか自白剤にヤバい成分が入っていたのかは不明。できれば後者だと思いたいが……

Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(平行世界)

「美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように」
「やさしい人たちに出会って―――
 笑いあえる友達を作って―――
 あたたかでささやかな―――
 幸せをつかめますように」
『ツヴァイ』最終巻、最終章、『ドライ』過去編にて。願望器である美遊に向けられた祈り。
この「願い」によって美遊は平行世界へと跳び、すべてが始まった。
「ジュリアン やっぱりお前を倒さない限り 美遊は幸せになれないみたいだ
 お前が全のため一を殺すというなら 俺は何度でも悪を成そう
 ―――覚悟は良いか 正義の味方」
『ドライ』より。正義を名乗り、世界を救済する為に妹を犠牲にしようとするジュリアンに対して。
声は涸れ落ち、姿は砕け、自らを「最低の悪」と呼ぼうとも、ここにいるのは紛れもない「衛宮士郎」である。
「………… ……ああ …そうか…お前はもう
 独りじゃなかったんだな 美遊」
『ドライ』より。イリヤとクロ、凛にルヴィアやバゼットが次々と加勢して。
「いやしかし あの破廉恥な格好はいったい… 兄として注意すべきだろうか…」
『ドライ』より。離れ離れになっていた妹と再会し、共に戦いつつの一言。
やっぱり美遊(というかサファイア)のファッションはかなり際どいようである。
「お前の宝具も見飽きたよ 道を譲れ… 英雄王!!」
『ドライ』より。クロとのコンビネーションで死角を突き、アンジェリカを打倒しての一言。
本物が聞いたら憤死確実の暴言である。アンジェリカと以前に戦った経験はあるらしいが、やはりあの決め台詞を言った上での言葉なのだろうか。
……後から考えると、生き残ってしまった自分を間違いと思う彼が己の心象を誇れる筈が無い以上、言うわけがなかったのであるが。
「そうさ分かってるさ 正しいのは切嗣で 間違っているのは俺だ
 思い出せ!切嗣に救われてから五年間 何を見てきたんだ………! この世界は悲劇で溢れている 滅びに向かうスピードは加速していく一方だ
 天秤の皿に乗っているのは人類全て ならばもう片方の皿に乗せるものの価値なんて考慮すべきじゃない…! 美遊アレは人類を救うためのただの手段重りなんだ…!!
 人と思ってはいけない!! 情を抱いてはいけない!! 一の犠牲で全を救う それこそが…………!!
 それこそが… 正義……… の……… …はずだ…」
『ドライ』より。幼少期で切嗣から美遊を犠牲に世界を救うと聞いて。全を救うために一を切り捨てる…その正義を正しいと信じようとするが、美遊が士郎に迷いを抱かせてしまう。
「暗闇だなんて嘘だ 月が見えなくたって…星は輝いている
 正しく成ろうとすることが間違いのはずがない
 俺が間違いになんてさせないからな…!!」
『ドライ』より。幼少期での切嗣との最期の会話。
奇跡を追い求めた自分の人生を「見えない月を追いかける暗闇の夜のような旅路だった」と評した切嗣に対し、そのあり方が間違いではないと断言する。
この誓いに切嗣は心から安堵し息を引き取った。本編と違い月夜ではなく無数の星の夜での会話になっている。
「出てこいジュリアン!! そこにいるんだろ!?
 確かに俺は!! 正義に憧れただけで何も救えなかった偽物だ! 正義の形を 家族の形を …人としての形を 真似て取り繕ってきただけの抜け殻だった……!!
 俺は最初から間違っていた… 解っていたんだよそんなことは………! だけど…だからこそ俺は……
 『本当』を始めようと思ったんだ………!
 美遊を… 俺の妹を返してくれ…!」
『ドライ』より。エインズワース家の敷地に入れず、結界の外からジュリアンに向けた悲痛な叫び。
「偽物である自分を肯定する」のではなく「本当を始める」。ある意味、衛宮士郎にとっては最も辛く、苦しい選択である。
「こんなものが 俺の人生の果てこたえなのか
 今ようやく 切嗣の言葉の意味を その無念さを理解できた
 全てを救おうとした道の果ては 全てを失う断崖だった
 月の明かりも 星の明かりすらも もはや 見えない
 奇跡は無く 希望も無く 理想は闇に溶けた
 それでも それなのに まだ……が残っている」
『ドライ』より。刺客として送られた慎二に桜を殺害され、痛めつけられた彼は、切嗣の言葉の意味を―――無念さを悟った。
月の光きせきも無く、星の輝ききぼうも無く、そして託された理想みちも失くなった。―――残っているのは、士郎というちっぽけな存在からだのみ。だが…
「―――だから、これは祈りではなく もっと独善的で矮小で どうしようもなく無価値な自分に向けた
 ―――「誓い」だ」
士郎は全てを失ったワケではない。独善的で矮小で無価値な――自分への「誓い」。例えそれが悪だとしても、例えその先が地獄だとしても、大切な美遊いもうとを取り戻す。そして、士郎の戦いはここから始まった。
「彼らは――ただ 子の健やかな成長を願った 富も繁栄も思いのままはずなのに
 親から子への…ごく当たり前の願いだけを叶えてきたんだ 四百年もの間 ひとつの例外もなく…!
 それを 悪だと言うのなら…
 俺は悪でいい」
『ドライ』より。大空洞で再会したジュリアンに対し、朔月家の願いを代弁する士郎。
四百年間、神稚児という力を持ちながら、普通の子としての成長を願ってきた朔月家の思い。
それが人類に対する裏切りになっても、美遊という一人の妹の幸せを願い、士郎はジュリアンの言う「最低の悪」となった。
「…そんなの 考えるまでもない
 俺はお兄ちゃんだからな 妹を守るのは当たり前だろ?」
『ドライ』より。大空洞地下で再会するも、エインズワース家によって既に真実を知ってしまい、涙ながらに諦念の意を示す美遊に対して。それは何を犠牲にしても「きょうだい」であることを決意した彼の示す事の出来る、唯一の無上の愛であった。
「どうすればよかったのか ずっと考えた
 間違い続けた俺だからこの選択も もしかしたら間違いかも知れない
 だけど この願いは本当だから」
上記の続き。ゆえに『兄』は聖杯に願った。世界を救うのではなく、大切な『妹』の幸せ…ごく当たり前の願いを叶えるために。それが、悪だと言われようとも。そして願いは「――我 聖杯に願う」の言葉とともに本節の冒頭「美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように」へと続く。
「無限の剣を内包する世界
 俺にはこの全てが
 墓標に見えるよ」
過去におけるアンジェリカとの戦いで、自身の固有結界を展開して。
たった一人の妹の人並みの幸せの為に全人類を犠牲にする決断をして、別の自分に浸食され、自分が生きていることを何かの間違いと言う果てに至ったのは、無数の剣が墓標のように突立つ、闇に閉ざされて月も星も道も見えない「無明の雪原」であった。
その世界に立つ剣の全てを、世界を展開した張本人は「墓標」だと言い切る。救いの無い世界を興しても、死せる者の武具を叩き起こしてこれを冒涜しても、それでも「たったひとつ」「たったひとりの妹」のために「悪」である兄は、その全てを振るう。それがどれほどの許されぬ罪であったとしても。
「悪いが付き合ってもらうぞ 俺のからだが尽きるまで…!」
別世界で英雄王に対して固有結界を披露した時のようなシチュエーションだが、自分自身を「間違い」と断じた以上、出てくるのは誇りある言葉ではなく妹以外のすべてを閉ざすような言葉。
この時点で、自身の狙いは美遊のための「時間稼ぎ」で、そのために自らの全てを捨て駒と定義し「生きること」そのものを放棄している。ここまでの経歴と決意を思えば当然だが、何とも悲痛かつ悲壮な覚悟を思わせる。当然、その様を理解できないアンジェリカは激怒した。
「―たったひとつが すべてを上回ることだって ある」
アンジェリカの放った『天地乖離す開闢の星』を、固有結界内の全ての剣を束ねて迎撃する。
その全てを切り裂きながら「たとえ全ての剣を束ねても、究極の一には届かない」と叫ぶアンジェリカに対して、
士郎は「―そうだ その通りだ」とそれを肯定する。
士郎にとって「たったひとつ」の美遊の命は、他の全てを束ねたよりも重かった。
『―何か とても大切な繋がりが 消えたと感じた』
ようやく―わかった
ずっと自分を支えてくれてたのは
『戦うための魔力ちからを送ってくれていたのは―』
―美遊だったんだ
恐らくは美遊が「士郎さんと本当の兄妹になりたい」と願った際に、美遊本人も気付かぬうちに繋がっていた魔力パス。
美遊が「美遊が幸せになれる世界」へ旅立った瞬間それは途切れた。
その時士郎はようやく気付く
強敵との七連戦もの間、枯れることなくどこからか湧いて来た力。固有結界を展開し、ハリボテとはいえ神造兵器の投影すら可能とした膨大な魔力。
それは美遊から送られていたものだったのだと。
美遊のために戦った士郎を守っていたのもまた、士郎を想う美遊だった。
「勝ったよ………切嗣」
アンジェリカに押し負け、戦いに負けた士郎の勝利宣言。だが、戦いには負けても「美遊を逃がす」という目的は果たし、紛れもない勝利を得た。
自らを「悪」とし、それが養父の理想とかけ離れたものであると知りながら、士郎はそれでも胸を張って義父に向かいそれを誇った。
それは善悪を超越し「たったひとつ」を貫き続けた「男」が得た「勝利」の言葉だった。

メモ

  • アニメ版のプリズマ☆イリヤシリーズでは、魔法少女ものの世界観に合わせてか原作と比べてかなり童顔にアレンジされていた。が、『ドライ!』における美遊の兄の士郎がその容姿ではギャップが激しすぎると判断されたのか、『ドライ!』のアニメでは一転して原作寄りのデザインに変更されている。

衛宮士郎の詠唱

I am the bone of my sword.
(体は剣で出来ている。)
Steel is my body, and fire is my blood.
(血潮は鉄で、心は硝子。)
I have created over a thousand blades.
(幾たびの戦場を越えて不敗。)
Unaware of beginning.
(たった一度の敗走もなく、)
Nor aware of the end.
(たった一度の勝利もなし。)
Stood pain with inconsitent weapons.
(遺子はまた独り)
My hands will never hold anything.
(剣の丘で細氷を砕く)
――――yet,
(けれど、)
my flame never ends.
(この生涯はいまだ果てず)
My whole body was
(偽りの体は、)
still
(それでも)
“unlimited blade works”
(剣で出来ていた――――!!)
美優の元いた世界の士郎のもの。心象風景も吹雪吹き荒れる闇夜の「雪原」となっている。

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