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サイズ変更なし 、 2022年12月14日 (水) 22:44
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:安珍は、熊野詣の帰りにまた会おうという約束を交わしながらも、清姫に嘘をつき、逃げ出してしまった。現代の倫理でこれを考えれば安珍にも非があった、と思われるかもしれないが、実の所、安珍が取った行動は'''当時としては当然の事'''。と言うのも、当時の男女間の関係においては、'''きっぱりと女性を振る事は酷い侮辱に当たる'''のである。「お前のような女を貰う奴などいるはずがない」と言い放つに等しい。
 
:安珍は、熊野詣の帰りにまた会おうという約束を交わしながらも、清姫に嘘をつき、逃げ出してしまった。現代の倫理でこれを考えれば安珍にも非があった、と思われるかもしれないが、実の所、安珍が取った行動は'''当時としては当然の事'''。と言うのも、当時の男女間の関係においては、'''きっぱりと女性を振る事は酷い侮辱に当たる'''のである。「お前のような女を貰う奴などいるはずがない」と言い放つに等しい。
 
:そのため、やんわりと誤魔化してなぁなぁにした上で、自然消滅を待つ、と言うのは、正しい振り方。「一応の約束をしておいて、実際には二度と合わない」とする安珍の言動は、むしろ礼儀に叶っているのだ。
 
:そのため、やんわりと誤魔化してなぁなぁにした上で、自然消滅を待つ、と言うのは、正しい振り方。「一応の約束をしておいて、実際には二度と合わない」とする安珍の言動は、むしろ礼儀に叶っているのだ。
:一方で、当時の仏教において女性と交わる事(女犯)は大罪であり、当時の基準では破門・島流しが慣例であった。しかも清姫は長者の娘であり、下手に断れば角が立つ。つまり、清姫の立場から見れば少女ゆえの無邪気な愛の告白であってのだろうが、安珍からすれば'''親の権力を傘に来た犯罪を教唆を受け、穏便に断ったら殺された'''と言う、あまりに理不尽過ぎる話となる。
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:一方で、当時の仏教において女性と交わる事(女犯)は大罪であり、当時の基準では破門・島流しが慣例であった。しかも清姫は長者の娘であり、下手に断れば角が立つ。つまり、清姫の立場から見れば少女ゆえの無邪気な愛の告白であってのだろうが、安珍からすれば'''親の権力を傘に来た犯罪の教唆を受け、穏便に断ったら殺された'''と言う、あまりに理不尽過ぎる話となる。
 
:かろうじて安珍に非があるとすれば「もう少し上手く誤魔化せなかったのか」と言う程度。それにした所で、女性との関係の薄い経験の僧に求めるのは酷と言うものである。
 
:かろうじて安珍に非があるとすれば「もう少し上手く誤魔化せなかったのか」と言う程度。それにした所で、女性との関係の薄い経験の僧に求めるのは酷と言うものである。