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:戦場となった病院前の大通りへ、作家が書斎から舞台へと躍り出る。気に入った役者達へ<ruby><rb>ささやかな花束</rb><rt>宝具</rt></ruby>を贈るために。
 
:戦場となった病院前の大通りへ、作家が書斎から舞台へと躍り出る。気に入った役者達へ<ruby><rb>ささやかな花束</rb><rt>宝具</rt></ruby>を贈るために。
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;「多かれ少なかれ恩讐なんざ誰でも抱く。ガキでも語れるもんだ。<br>だが、お前さんの、エドモン・ダンテスの、巌窟王モンテクリスト伯の恩讐を語れるのは誰だ?<br> ……俺だ、俺だけだよ復讐者。<br>弟に菓子を取られたガキの恨みと、人生を丸ごと全部奪われた手前の恨み、どこが違う? もちろん違う!<br> だが、それを誰よりも劇的に語れるのはお前さんじゃあない。<br>あんたは何万、何十万もの民衆の心に語りかける事ができるか? 俺は語れる! その為にペンがある!<br> ……いや、逆に言うとな、あんたはもう、何百万、何千万の人間に語り終えたも同然だぜ!<br> 書き記すのは確かに俺の筆だが、その俺にその生き様を見せつけたのは、他でもないお前さん自身なんだからよ!」
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;「多かれ少なかれ恩讐なんざ誰でも抱く。ガキでも語れるもんだ。<br>だが、お前さんの、エドモン・ダンテスの、<ruby><rb>巌窟王</rb><rt>モンテクリスト伯</rt></ruby>の恩讐を語れるのは誰だ?<br> ……俺だ、俺だけだよ復讐者。<br>弟に菓子を取られたガキの恨みと、人生を丸ごと全部奪われた手前の恨み、どこが違う? もちろん違う!<br> だが、それを誰よりも劇的に語れるのはお前さんじゃあない。<br>あんたは何万、何十万もの民衆の心に語りかける事ができるか? 俺は語れる! その為にペンがある!<br> ……いや、逆に言うとな、あんたはもう、何百万、何千万の人間に語り終えたも同然だぜ!<br> 書き記すのは確かに俺の筆だが、その俺にその生き様を見せつけたのは、他でもないお前さん自身なんだからよ!」
 
:かつてある復讐者にそれをモデルに小説を書かせろと言った結果、フォークを突きつけられながらも椅子から立ち上がり、まるで軍隊を前に演説する粗野な指揮官のように朗々と語る。しかし見様によっては相手の殺意を買い煽るような語り口にも拘らず何故か憎めない。物書きとしての矜持をこれでもかと最大限にアピールしている故なのか。
 
:かつてある復讐者にそれをモデルに小説を書かせろと言った結果、フォークを突きつけられながらも椅子から立ち上がり、まるで軍隊を前に演説する粗野な指揮官のように朗々と語る。しかし見様によっては相手の殺意を買い煽るような語り口にも拘らず何故か憎めない。物書きとしての矜持をこれでもかと最大限にアピールしている故なのか。