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サイズ変更なし 、 2016年9月1日 (木) 03:06
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; 「でも、私はそれ以上に、あの信頼を信じたい。<br /> あの奇蹟を、大切にしたいのです。」<br />「……はい。<br />わたしは一度、死にました。」<br />「すごい爆発が起きて、瓦礫が落ちてきて……<br />下半身の感覚が、すべて失われて。」<br />「あと二分保たない、と正確に把握もできました。<br />……正直、ちょっと怖かったです。」<br />「残されたわずかな時間で何ができるのかを考えたら、<br />何もできないと分かったので。」<br />
 
; 「でも、私はそれ以上に、あの信頼を信じたい。<br /> あの奇蹟を、大切にしたいのです。」<br />「……はい。<br />わたしは一度、死にました。」<br />「すごい爆発が起きて、瓦礫が落ちてきて……<br />下半身の感覚が、すべて失われて。」<br />「あと二分保たない、と正確に把握もできました。<br />……正直、ちょっと怖かったです。」<br />「残されたわずかな時間で何ができるのかを考えたら、<br />何もできないと分かったので。」<br />
:深夜に一人で泣いていたベティヴィエールに会い、成り行きから「獅子王と対決することは怖くないのか」と聞かれ、胸中を語り始める。
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:深夜に一人で泣いていたベディヴィエールに会い、成り行きから「獅子王と対決することは怖くないのか」と聞かれ、胸中を語り始める。
    
; 「――でも。」<br />「手を握ってくれる人がいた。<br />あの炎の中で、助けてくれた人がいた。」<br />「……もちろん、わたしを助けることは不可能です。<br />その人も、それをはっきりと理解していました。」<br />「その人はわたしと違って、自分の命が大切な人です。<br />自分が死ぬ事が怖くて、両膝が震えていました。」<br />「なのに、わたしを気遣ってくれました。<br />わたしのせいで、その人まで死んでしまう――」<br />「そんな思いをわたしがしないようにと、<br />笑顔で、わたしの手を握ってくれたのです。」<br />「……いま目の前にあるわたしの死は変えられない。」<br />「ならその最期の瞬間まで、せめて気持ちを楽する事が<br />いまできる最善だとその人は信じ、行動した。」<br />「……あの時の手の温かさを、わたしは覚えています。<br />そしてそれが、ギャラハッドさんを呼び起こした。」
 
; 「――でも。」<br />「手を握ってくれる人がいた。<br />あの炎の中で、助けてくれた人がいた。」<br />「……もちろん、わたしを助けることは不可能です。<br />その人も、それをはっきりと理解していました。」<br />「その人はわたしと違って、自分の命が大切な人です。<br />自分が死ぬ事が怖くて、両膝が震えていました。」<br />「なのに、わたしを気遣ってくれました。<br />わたしのせいで、その人まで死んでしまう――」<br />「そんな思いをわたしがしないようにと、<br />笑顔で、わたしの手を握ってくれたのです。」<br />「……いま目の前にあるわたしの死は変えられない。」<br />「ならその最期の瞬間まで、せめて気持ちを楽する事が<br />いまできる最善だとその人は信じ、行動した。」<br />「……あの時の手の温かさを、わたしは覚えています。<br />そしてそれが、ギャラハッドさんを呼び起こした。」
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:自分が見た人間の善性、美しさをギャラハッドも認めてくれたからこそ力を委ねられたと彼女は信じ、それを守るために戦うと言葉を結ぶ。
 
:自分が見た人間の善性、美しさをギャラハッドも認めてくれたからこそ力を委ねられたと彼女は信じ、それを守るために戦うと言葉を結ぶ。
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;「それはありません。<br />決して、そんな事はありえない。」<br />「わたしも、このわたしの体も断言しています。」<br />「ベティヴィエールさんが求めた旅の終わりが、<br />無意味なもののはずがない。」<br />「だって貴方は……<br />きっと、いつでも旅を終わらせられたはずです。」<br />「でも終わらせなかった。<br />どんなに辛くて怖くても、ここまでやってきています。」<br />「それは自分のためではなく、<br />他の誰かのための旅だったから。」<br />「ベティヴィエール卿は臆病者ではあっても、<br />卑怯者ではなかったから。」<br />「だから――きっと、旅の終わりには意味があります。<br />貴方の長く歩いた痕跡に酬いるだけの、最後の救いが。」
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;「それはありません。<br />決して、そんな事はありえない。」<br />「わたしも、このわたしの体も断言しています。」<br />「ベディヴィエールさんが求めた旅の終わりが、<br />無意味なもののはずがない。」<br />「だって貴方は……<br />きっと、いつでも旅を終わらせられたはずです。」<br />「でも終わらせなかった。<br />どんなに辛くて怖くても、ここまでやってきています。」<br />「それは自分のためではなく、<br />他の誰かのための旅だったから。」<br />「ベティヴィエール卿は臆病者ではあっても、<br />卑怯者ではなかったから。」<br />「だから――きっと、旅の終わりには意味があります。<br />貴方の長く歩いた痕跡に酬いるだけの、最後の救いが。」
:旅の終わりが無意味なものかもしれないことへの恐怖を吐露したベティヴィエールの言葉を静かに否定し、励ます。彼女もまた、長い旅を続けている身であるからか。
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:旅の終わりが無意味なものかもしれないことへの恐怖を吐露したベディヴィエールの言葉を静かに否定し、励ます。彼女もまた、長い旅を続けている身であるからか。
    
;「それは違う!<br />違う、ことです!」<br />「あなたは間違っている。<br />あなたのいう幸福を、わたしは認めません!」<br />「なぜなら、わたしは!<br />この時代で、多くの命を見てきたから!」<br />「子供を助けるために命を落とした人がいました!<br />その事を嘆く人がいました!」<br />「そして――それでも、生き続けると。」<br />「自分が生きているかぎり、<br />お母さんの人生は続くと顔をあげた人がいました!」<br />「終わりは無意味ではないのです。<br />命は先に続くもの、その場かぎりのものではなく!」<br />「いつまでもいつまでも、多くのものが失われても、<br />広く広く繋がっていくものなのです!」
 
;「それは違う!<br />違う、ことです!」<br />「あなたは間違っている。<br />あなたのいう幸福を、わたしは認めません!」<br />「なぜなら、わたしは!<br />この時代で、多くの命を見てきたから!」<br />「子供を助けるために命を落とした人がいました!<br />その事を嘆く人がいました!」<br />「そして――それでも、生き続けると。」<br />「自分が生きているかぎり、<br />お母さんの人生は続くと顔をあげた人がいました!」<br />「終わりは無意味ではないのです。<br />命は先に続くもの、その場かぎりのものではなく!」<br />「いつまでもいつまでも、多くのものが失われても、<br />広く広く繋がっていくものなのです!」
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:放たれた聖槍の一撃を前に、遂に宝具が解放されその真の姿を現す。
 
:放たれた聖槍の一撃を前に、遂に宝具が解放されその真の姿を現す。
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;「……はい!<br />サー・ベティヴィエールの要請に全力で応えます!」
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;「……はい!<br />サー・ベディヴィエールの要請に全力で応えます!」
:ベティヴィエールの真実を知り、最後の供を頼まれて。彼の忠義と覚悟に涙しながら、獅子王との最後の戦い――「聖剣の返還」に臨む。
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:ベディヴィエールの真実を知り、最後の供を頼まれて。彼の忠義と覚悟に涙しながら、獅子王との最後の戦い――「聖剣の返還」に臨む。
    
;「――そして、巨王は立ち上がりました」<br />「それは古代ペルシャの王。アケネメス朝最後の王」<br />「逆臣バガアスを粛清し、国を正し、運命の相手たる征服王イスカンダルと激突した巨王」<br />「世界最高の戦闘王に立ちはだかった、大いなる壁。無限の勇猛を称えた、巨大な男」<br />「その名はダレイオス三世。彼を倒し得るのは世界にただひとり、イスカンダルのみ」<br />「故に彼は無敵でした。並み居る敵兵をものともせず、打ち砕きます」<br />「左翼から敵大隊、接近。けれど」<br />「絶対無敵。ただ、敵兵は打ち砕かれてゆきます」<br />「右翼から敵大隊、接近。当然――」<br />「究極無敵。ただ、敵兵は薙ぎ払われるのみです」<br />「強大なり、ダレイオス三世。勇壮なり、ダレイオス三世」<br />「その猛進は止まることがありません。それは、まるでかつての生前に戦った征服王を彷彿とさせて」
 
;「――そして、巨王は立ち上がりました」<br />「それは古代ペルシャの王。アケネメス朝最後の王」<br />「逆臣バガアスを粛清し、国を正し、運命の相手たる征服王イスカンダルと激突した巨王」<br />「世界最高の戦闘王に立ちはだかった、大いなる壁。無限の勇猛を称えた、巨大な男」<br />「その名はダレイオス三世。彼を倒し得るのは世界にただひとり、イスカンダルのみ」<br />「故に彼は無敵でした。並み居る敵兵をものともせず、打ち砕きます」<br />「左翼から敵大隊、接近。けれど」<br />「絶対無敵。ただ、敵兵は打ち砕かれてゆきます」<br />「右翼から敵大隊、接近。当然――」<br />「究極無敵。ただ、敵兵は薙ぎ払われるのみです」<br />「強大なり、ダレイオス三世。勇壮なり、ダレイオス三世」<br />「その猛進は止まることがありません。それは、まるでかつての生前に戦った征服王を彷彿とさせて」
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