:外界を体験した彼はアリマゴ島の惨劇など珍しくない、日常茶飯事な出来事であると思い知った。悲劇の再発防止に父を殺した行為など大海から一滴の水を掬い上げたに等しい。この手で殺したことに価値を見出そうとするならば、父と同類の異端の魔術師たちを全て殺した果てにしか見出せない。ゆえに魔術師を狩る生き方を躊躇なく決めた。ハンターとして生きるため苛烈すぎる経験と鍛錬を積みながら過ごし、血と硝煙にまみれた生活を送っていたため既に眼差しは10代のものではなくなっていた。そんなある日、仕事の途中にナタリア一人と他の大勢の命を天秤にかけねばならない場面に直面した彼は、再び非情な決断を強いられる。彼が下した選択は正しかった。死ぬしかない者が殺され、死ぬ理由のない者たちが救われた。それが『正義』でなくてなんなのか。今更止まれない、止まったら追い求めたものは無になる。支払った代価も積み上げた犠牲も無価値になる。だからこれからも自身の理想を憎み、呪いながら、理想に従うのだろうと彼は悟った。 | :外界を体験した彼はアリマゴ島の惨劇など珍しくない、日常茶飯事な出来事であると思い知った。悲劇の再発防止に父を殺した行為など大海から一滴の水を掬い上げたに等しい。この手で殺したことに価値を見出そうとするならば、父と同類の異端の魔術師たちを全て殺した果てにしか見出せない。ゆえに魔術師を狩る生き方を躊躇なく決めた。ハンターとして生きるため苛烈すぎる経験と鍛錬を積みながら過ごし、血と硝煙にまみれた生活を送っていたため既に眼差しは10代のものではなくなっていた。そんなある日、仕事の途中にナタリア一人と他の大勢の命を天秤にかけねばならない場面に直面した彼は、再び非情な決断を強いられる。彼が下した選択は正しかった。死ぬしかない者が殺され、死ぬ理由のない者たちが救われた。それが『正義』でなくてなんなのか。今更止まれない、止まったら追い求めたものは無になる。支払った代価も積み上げた犠牲も無価値になる。だからこれからも自身の理想を憎み、呪いながら、理想に従うのだろうと彼は悟った。 |