ヴィクター・フランケンシュタイン
フランケンシュタインの創造者。
- 略歴
- 自然科学を学ぶ学生であった彼は、賢く、美しい理想の人間・「完全な乙女(イブ)」を造りだすという妄執に憑りつかれ、二年の歳月を費やして継ぎ足しした死体に生命を宿すことに成功した。だが生まれたのは涙を流す機能も動いていない木偶人形で、狂乱した挙句に彼女に当たり散らすようになる。
それからは酒に溺れ、慰めようとする少女を虐待しながら過ごしていたが、ある時野犬に襲われ返り討ちにした際に彼女がその臓物を持ってきたことから、失敗作どころか醜い怪物と罵るようになり決定的に関係が断裂した。
そして彼女の「伴侶を造って欲しい」という願いも聞き入れず、全てを拒絶し、逃走の過程で無関係な周囲の人々や婚約者を殺されても、ただただ逃げ続けた。晩年のフランケンシュタイン博士に快活で才気溢れる青年の面影はなく、老人の様な弱弱しさで、最後まで生命倫理に背く実験を行ったことを後悔しながら、北極で狂死した。
『Apocrypha』ではシロウの悪意とそれを面白がった赤のキャスターによって幻影として召喚された。
生前では絶対にやらなかった優しい父の様な態度でバーサーカーを懐柔しようとするが、状況も態度も何もかもが彼女の逆鱗に触れ、顔が空気の抜けたゴムボールのようになるまで殴打され、全身を戦槌で叩きのめされて死亡し消滅した。
- 能力
- 彼をモデルにして書かれた小説では科学者となっていたが、実際は魔術師であった。
登場作品と役柄
- Fate/Apocrypha
- バーサーカーの回想が初出。後に幻影として赤のキャスターに召喚される。
- Fate/Grand Order
- 第四章にて名前のみ言及。また、第四章には直接の出番こそないものの彼の孫である同名の魔術師「ヴィクター・フランケンシュタイン」も登場している。
- 後にフランケンシュタインの幕間の物語に、「もしも生きていたら」という仮定上の存在として登場する。
人間関係
Fate/Apocrypha
Fate/Grand Order
- イヴ
- 仮定上の存在として蘇った後に作り出した、フランケンシュタインの後継機。たどたどしいが、言語能力は持つ。
- 表向きは慈しむような態度で接し、フランケンシュタインを殺して完璧な存在になるように唆すが、実際の所は欠陥品と見なしている。
- そもそも、人造人間の研究自体が「魂が人間に及ばない」という根本的な問題故に行き詰まっており、彼女の創造目的も「自分の魂を肉体は完璧である彼女に移植するため」という完全に自分本位のものであった。
生前
- フランケンシュタイン
- 失敗作。もしくは醜い怪物(フリークス)。
- チャールズ・バベッジ
- 同じ碩学仲間。自身が作り出した「作品」を披露するほどに親密な関係。
その他
メモ
- フランケンシュタインが美少女の姿をしているのに「醜い」と罵ったことから、ファンの間では「目ん玉腐ってんじゃないか?」と評されていた。
彼にとって見た目の可憐さより、涙腺が繋がっている事の方がよっぽど大事らしい。- 実際、彼が作ろうとしたのは「美しい乙女」ではなく「完璧な乙女」である。見目は良くても人間としての機能に欠陥のあるフランケンシュタインは、例えるならば「外装はしっかりしていても起動するとバグっているパソコン」のようなもの。(あくまで彼の基準としては、だが)醜いと言うのも仕方ない所ではある。
- 現代、多くの人に知られる「マッドサイエンティスト」像の原典。19世紀の文学作品において「科学と宗教との間の論争」は避けては通れない物であり、フランケンシュタイン博士という人物は「科学の危険性」を表現するために作り出された。
- TYPE-MOON世界の一部の魔術師には一般人に被害を出すことを厭わない「マッドサイエンティスト」に分類される者もおり、偶発的事故とはいえ島の人間全員が犠牲になった例も存在する。周囲に死を撒き散らしながら逃げ続けた彼は、この世界観においても「マッドサイエンティスト」と言える。
- 創造主(キリスト教の“神”)に成り代わって人造人間やロボットといった被造物(=生命)を創造することへの憧れと、その被造物によって創造主である人間が滅ぼされるのではないかという恐れが入り混じった複雑な感情・心理のことを「フランケンシュタイン・コンプレックス」という。
これはSF作家アイザック・アシモフが「フランケンシュタイン」から作った用語であり、アシモフ氏は後に「ロボットに対する人間の潜在的な恐怖」を描くため、「ロボット工学三原則」という概念も生み出した。