魔術協会・三大部門の一角。別名「巨人の穴倉」。蓄積と計測の院。魔術世界における兵器倉庫。禁忌の穴倉。
入る事は容易く、出ることは難しい、地下深くに広がる墓所のような学術棟。
西暦以前から存在する、エジプト・アトラス山脈を根拠とする錬金術師を極める者たちの学舎。人類の滅びの未来を確定されたものとして、その滅びの到来を少しでも遅くすることを目的としており、人類が長く生き延びられるのならば種として変態・退行しても構わないと考えている組織。錬金術に特化し、独自の成長を遂げた学院。
地上のものとは比べものにならない魔術礼装の貯蔵庫だが、実際は発明を繰り返しては失敗作とされた悍ましい兵器の山の廃棄場に近い。
アトラス院の院長には「アトラシア」という称号が与えられる。
時計塔に所属しているような、中世を発祥とする西洋魔術に傾倒した現代錬金術とは別物で、魔術の祖と言われる、世界の理を解明する錬金術師の集まり。その発端はエジプト神話における魔術の祖、女神イシスの流れにある。
錬金術として万物・物質の流転は共通のテーマだが、アトラス院ではそれに加えて事象の変換も研究している。また、アトラスの錬金術師は転生を実現したミハイル・ロア・バルダムヨォンを軽視している。
錬金術、その中でも思考分割、高速思考といった、人体を演算装置とする術に特化している。魔術回路数が少ないことも特徴で、単体では自然干渉系の術はまったく使えない。故に神秘を学ぶ過程において魔力に頼らず、多くの道具に頼った。その在り方は科学技術の発展による発展に近かった。
しかし「自らが最強である必要はない。最強であるものを作ればいいのだから」との考えから、それをよしとしている。
魔術師というよりは自らの肉体をマン・マシーンとして使う異能者たち。自身の肉体を『正しく、強く、速く』知性を働かせるための容れ物として扱っていた。
「人間とは運動機能(五感)をもった類い稀なる計算装置である。情報を収集し、解析し、生まれ出る数々の問題に、労働力としてダイレクトに対応できるよう進化した知性体が我々人間である」というのを信条としている。
中心部は500メートル地下に存在し、通路は折り重なり
内部には作り物の空と、一つの街ほどもある空間が存在し、人間に必要なもの、生活に必要なものが揃っている。中心にはオベリスクの形をしたアトラス院最大の記録媒体、疑似霊子演算装置トライヘルメスが存在する。
他の二部門を始め外部との交流は基本的に無く、中でもプラハの協会とは致命的に仲が悪い。『2015年の時計塔』では「光さえ抜け出せないという『生きた奈落』」と表現されている。流石にロードと最低限の連絡は交わしていた模様。
ただし、稀に他の協会や聖堂教会からの依頼で錬金術師を貸し出すことがある。そのためにはアトラス院創立時にアトラス院が発行した「契約書」が必要。七枚だけ発行されたこれを回収することも、アトラス院の目標の一つ。西暦2000年までに四枚は回収したが残りの三枚の行方はようとして知れないという。
「自らが最強である必要はない。我々は最強であるものを創り出すのだ」という格言を信条とし、多くの武器(兵器)の製造をしており、その最たるものが魔術世界で言う、七つの禁忌。「七大兵器」として展示されている。アトラス院は世界を滅ぼす兵器を七つまで作り上げ、その段階で自分たちの限界を認め、これを封印した。プラハの錬金術師からは「アトラスの封を解くな。世界を七度滅ぼすぞ」と言われており、初代院長が演算した世界の終末を回避するために兵器を作り続け、そしてその兵器は世界を滅ぼしうるがために廃棄され続ける。
また、疑似霊子である魂を観測可能なエネルギーとして扱い、魔術回路を持つ生命、ホムンクルスを創造した。
魔術協会は基本的に全てそうだが、「自己の研究は自己にのみ公開する」という規律が、アトラス院では特に徹底されている。アトラス院は天才たちの集まりであり、それぞれ独立した工房で各々の研究に没頭し、何のタブーもないため非人道的な兵器を作っても咎めはないが、一つだけ条件があり、それは「ここで作られたものを、決して外に持ち出さない」というアトラス院の絶対原則。それを二千年以上、そのルールを頑なに守ってきた。
だが、前述の“アトラスの誓約書”があれば、原則を免除して技術提供や魔術礼装の提供を受ける事が出来る。
ゴルドルフ・ムジークからは「人の心のない兵器屋、技術屋の集団」と評されている。
所属者
- ズェピア・エルトナム・オベローン
- 数代前の院長。後に発狂し、同院を去ったものと思われる。
- シオン・エルトナム・アトラシア
- アトラス院次期院長候補生。
- ヘルメス・シリス・アトラシア
- 詳細不明。特性は「未来」
- 玄霧皐月
- 封印指定を受け失踪。
関連用語
- 疑似霊子演算装置トライヘルメス
- オベリスクの形をしたアトラス院最大の記録媒体。カルデアに送った霊子演算装置トリスメギストスの元になったオリジナル。今の地球上の科学では生成できないオーパーツ、賢者の石と呼ばれるフォトニック結晶によって作られている。
- トライヘルメスが設置されている場所の造りはカルデアの管制室と同じ。あらゆる事象が記録されているが、アクセス権がなければ使えず、アトラス院の錬金術師でなければ全てを知ることは出来ないが、単純な事実、結果だけなら知ることが出来る。
関連組織
- 魔術協会
- 部門の一角。他の部門(時計塔、彷徨海)との交流は途絶えている。他の魔術師たちとは違い、アトラス院は生命体として高次の段階への進化を目的としていない。
- 人理継続保障機関フィニス・カルデア
- アトラスの契約書と引き換えに霊子演算装置・トリスメギストスの設計図を提供し、その他にも多くの技術を提供している。
アトラス院(Fate/EXTRA)
別名「蔵書の穴倉」。
『EXTRA』の世界では、マナが枯渇した2030年代においては魔術協会そのものが消滅し、マナに頼らない魔術大系を持つ彼ら錬金術師のみが旧き魔術の探求を続けている。魔術協会の崩壊後も在り方を変えず、逃亡した魔術師を迎えることはせず、世界から孤立した閉鎖社会であり続けている。
霊子虚構世界の聖杯戦争にも根源に至るための聖杯を求め、ラニ=Ⅷを送り込んでいる。
ラニの言葉によれば、彼女の師であるシアリム・エルトナム・レイアトラシアがアトラス院に残った最後の一人。これは長く次代の子供が生まれず、古参も自決死続きだったことが原因で、魔力枯渇とは関係ない。
西欧財閥の支配は人類の滅亡を加速させると結論付けているが、西欧財閥にもそれに対抗するレジスタンスにも特段の対立も協力もしていない。まともな手段では未来を手に入れるのが絶望的であることを考えると、納得の結論である。
技術水準はフォトニック結晶の研究において西欧財閥の先を行くが、それでも3cm角の筐体を製作するのが限界。またホムンクルスを鋳造する技術はあるのだが、その素材がもうないため実質的にラニが最後のホムンクルスである。
凄腕の霊子ハッカーに関する記録を収集したライブラリーを所有し、ラニはその内容を熟知している。
2021年以降、クローン売買シンジケートからクローンを購入しており、その数は毎年百人単位で、クローンの密売組織にとっては有力な購入先である。
2032年に近づくとその数はさらに増加し、大量のクローンを購入してアトラス院の施設内で生育させ、「様々な人体改造を施している」「クローンに遺伝子レベルの注文をつけている」といった噂もある。
「Fate/the Fact」の調査によれば、アトラス院が購入しているクローンは魔術回路を遺伝子レベルで組み込んだものであり、アトラス院に供給するためのクローン製造工場がアフリカ大陸に所在するとのこと。
所属者
- シアリム・エルトナム・レイアトラシア
- ラニの「製作者」であり、師でもある錬金術師。
- ラニ=Ⅷ
- シアリムの従者であるホムンクルス。
関連組織
アトラス院(MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア)
『Fate/EXTRA』前夜を思わせるシアリムの世界と、いくつかのイフ世界におけるアトラス院が描写されている。
シアリムの世界では院長はシアリムになっており、彼女自身も自分が最後のアトラシアになると確信している。
シアリム自身は自分が院長になるなどまったく思っていなかったが、古参の錬金術師達の推薦を受けて就任した。
その後、その古参達は相次いで自決死したが、その真相は世界がどうしようもなく行き詰まっており、シアリムの世代でアトラスが終わってしまう事を理解したからである。シアリムがアトラシアとなったのも、一言で済ませるなら「後始末という貧乏くじを引かされた」だけである。
そんな状況でもシアリムは解決策を模索し続け、少しでも滅びを先に延ばす為に「世界の進歩を止める」ことを目指し、他の組織を説得する為の材料として「至高の頭脳とゆらぎを併せ持つ人間であっても自分の未来さえ変えられない」ことを証明するべく実験を行った。これが、『路地裏ナイトメア』の中核になる物語である。
他のイフとして「シオンが院長を続けた場合の世界」「シオンがズェピアを正しいと見なした世界」のアトラス院が登場しているが、後者はタタリとなったシオンの手によって壊滅した。
なお、その際にアトラス院の最高幹部達が描写されたが、それは「ズェピアを正しいと見なしたシオンを危険視し、専用の研究室を与えて管理する(実質上の飼い殺し)」という陰険な有様で、シオンからも「時計塔のやり方と何も変わらない」と酷評された。
言及作品
メモ
- 実在のアトラス山脈はモロッコからアルジェリアに跨るものだが、このアトラス院が根拠としているのはエジプトにあるアトラス山という設定
- 外観は、近未来的な四角錐が無数に立ち並んだり逆向きに地面に突き刺さっていたりというアヴァンギャルドな代物で、スーパーコンピューターとピラミッドの合いの子を連想させる。背景に見える砂漠や「まともな」ピラミッドからの浮き具合がなんともシュールである。
- 時計塔は時代が進むにつれて、俗な権力争いにばかりかまけたり、噛ませ犬的なキャラクターを大量生産するなどイメージダウンが著しく、彷徨海はそもそも話題に出る事すらない。これらガッカリな他の部門と比べれば遥かに重要度が高い部門だったりする。その反面、その技術力から、世界存亡に関わる厄ネタの根本にも成り得る。
- …だったのだが、上層部がアレなのはこちらも同じで、自己公開のみの原則も有名無実化しているらしい。実際、シオンがアトラス院に帰還した後ほぼお咎めなしだったのは、経験したタタリのシステムと、そこから発展させた自己完結型演算器「オシリスの砂」のシステム概念の知的所有権を放棄した上で提出したからだとか。権力志向の腐敗というよりは、マッドサイエンティスト寄りでのアレさではあるが。
- 上記のように歴代のアトラシアは全員「滅びは避けられない」という未来に至り、滅びを回避する為に躍起になっている(オシリスの砂となったシオンを除く)。
- 歴代の院長は必ず発狂し、その結果として世界を滅ぼしてしまう禁忌の兵器を創り出した。或いは未来に挑み、これに敗北した結果として発狂したともされる。
- 「滅びを回避する」ことが主目的となっており、「滅びた後でも人間が生きていけるようにする」『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』のエインズワース家とは路線が異なる。
- 実は、歴代のアトラシアは「人間を進化させる」という答えの可能性には全員たどり着いており、そちらのほうが建設的で楽だと見なしているが、「人類を進化させると宇宙の寿命が縮まる」という結論にも同時に達してしまったらしく、「進化せずに滅びから逃げ続けるしかない」という絶望的な答えに至ったようである。
- 後に判明した並行世界の編纂事象・剪定事象の設定を考えると、人類を進化させて可能性を増やすことで「今自分が生きている世界」が剪定事象の対象になる可能性が高くなることを危惧していたのかもしれない。
- なお、世界そのものの代弁者としてのアルクェイドからは「世界をずいぶんか弱いと見くびるのだな」と一蹴された。
- 『EXTRA』の世界では、アフリカのクローンの密売シンジゲートとの関係や西欧財閥とレジスタンスの抗争へのしたたかな対応など、世俗的な面ではキナ臭いイメージが強く描かれている。
- 『Grand Order』の世界ではズェピア・エルトナムが最後の院長となっている。アトラス院自体は2016年まで存続しており、後継者も存在はしたようだが院長としての名前は記されていない。
話題まとめ
脚注
注釈
出典