アサシン(Apocrypha・赤)
- 真名:セミラミス
- 身長:167cm/体重:51kg
- スリーサイズ:B89/W58/H87
- 属性:秩序・悪
「暗殺者」のクラスのサーヴァント。聖杯大戦において、シロウ・コトミネに召喚された。
暗闇のようなドレスを身に纏った美女。
- 略歴
- 真名はアッシリアの女帝セミラミス。世界最古の毒殺者であり、夫であったニノス王を毒殺し、男を物にするために戦争を起こすなど、数十年に渡って暴政を敷いた。
- 聖杯大戦においてシロウによって召喚され、彼と共に獅子劫を除いた赤のマスター達を傀儡とし、彼らのサーヴァントを使って暗躍している。
- ミレニア城塞攻略戦においては空中庭園からルーラーの妨害に当り、集中爆撃によってシロウの正体が露見しないよう努める。その後、バーサーカーの宝具によって半壊したミレニア城塞から、大聖杯を首尾よく奪取する。
- 人物
- 美貌と英知を兼ね備えた、傲慢かつ好色で、派手好きな女性。女帝として君臨していただけに、気位が高く、王を王とも思わない豪放磊落な赤のライダーや、常に飄々としている獅子劫のような自分に靡かない男達を嫌っている。また、その退廃的な雰囲気から赤のセイバーやアーチャーから露骨に嫌われている。特にセイバーは彼女が自分の母に似ているために、完全に敵視している。
- 彼女にとって「男性」というものは「玩具」であり、企みに嵌った事で富も権力も何もかもを奪われた人間は数知れない。
- また女として振る舞い男を自由にして良いのは自分だけの特権である、という認識であるため、彼女にとって「女性」というものは「自分一人」だけ。母デルケットが男の誘惑に負けて姦通の末に自分を産み、その挙句に「お前は恥だ」と罵りながら水辺に捨てた事を根にもっており、男に弄ばれるような惰弱な女は神であろうと容赦しない。
- 聖杯への願い、と言うよりシロウの『救済』が行われた後の世界で望むのは「唯一の王として、この世界に君臨する事」。
- シロウに対する感情は、色仕掛けにも権力への誘惑にも全く動じず、自分の人生観では計り知れない彼の生き方と願いに興味を持った事が切っ掛け。当初は彼が狂った理想を叶えるのも、志半ばで倒れ絶望するのも愉しめる、と利害の一致による同盟関係に近かった。
- だがシロウと接していく内に彼女も変わり始め、無意識に彼の身を案じるようになり、女帝として君臨する事を望んでいながらたった一人の男から目を離せなくなっていく。
- 能力
- 毒物と奸計の使い手であり、文字通りの「毒婦」。
- 極めて希少なスキル『二重召喚(ダブルサモン)』によって、「暗殺者」としての能力と「魔術師」としての能力を併せ持ち、魔術師ではない赤のキャスターの欠点を補っている。
- 鳩を使い魔として使役し、ルーマニア全土を監視している黒のキャスターと同等の索敵網を構築している。また他のサーヴァントとの連絡にも鳩が使われている。
- 戦闘方法もキャスターのスキルに拠る所が大きく、空中庭園からEXランクの魔力を引き出し、全方位に発生させた魔方陣からAランクの対魔力を無理矢理貫通するほどの砲撃を乱れ撃ちし、地上に爆撃を行う。また空中庭園の強化によって数千体の竜牙兵を生み出すことが可能で、空中庭園の警護として竜牙兵と妖鳥を融合させた「竜翼兵」を大量に有する。
- 基本的に近接戦闘は行わないが、シリアの魚神デルケットの血を引いており、黒い神魚の鱗を装甲として展開する事で防御を行う。
宝具
- 虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)
- 想像を絶する巨大な浮遊要塞。セミラミスが生前に作り上げられたと伝えられている空中庭園。
- 規則正しく並べられた緑豊かな浮島と、大理石で出来た床や柱で構成されている。全体にあらゆる種の植物が絡んでおり、混沌の醜さと絢爛の美しさが同一化している。
- 魔力による顕現は不可能で召喚に彼女が生きていた土地の木材、石材、鉱物、植物、水といった材料を全て揃え、長時間の儀式を行ってようやく完成する。このような面倒なプロセスが必要なのは、彼女が実際は空中庭園など建設しておらず、後付けの神秘として自身に刻み付けられたためで、「虚栄」とは事実に反する紛い物である事を意味する。
- だが、真実よりも遥かに巨大かつ出鱈目で、浮遊に使われている『逆しまである』という概念を利用し大聖杯を格納するための機能がシロウの要望によって組み込まれており、宝具でありながら持ち主の意思で作り変えることが出来る。
- 巨大な戦略拠点であるのはもちろんとして、キャスターのクラス別スキル『陣地作成』における『大神殿』に相当する効果があり、どこへ行っても内部は彼女の領域として扱われ、ステータス全てが強化され、魔法の領域に踏み込んだ魔術すら使用可能となる。
- だが欠点は多く、彼女はこの庭園の外に出た途端、戦闘能力のほとんどを失い大幅に弱体化する。また余りに巨大なため隠密行動は事実上不可能であり、一応一般人対策の認識阻害の効果は持っているが魔術的な探知は無力化できず、迷彩や偽装を用いて敵陣に奇襲をかける事もできない。更に移動速度が遅く、運用には工夫が求められる。
登場作品と役柄
- Fate/Apocrypha
- 「赤」のサーヴァントとして登場。
人間関係
- シロウ・コトミネ
- マスター。彼の理想を「面白い」と評し、己が望み同然と、全面的に協力している。
- キャスター
- 一応、同志。彼もシロウに協力しているが、「物語」を求めて、自陣の不利になるような行動を平気でするため、その存在に頭を痛めている。
- アーチャー
- マスターを傀儡として指令を与えている。だがアサシンの退廃的な雰囲気は「純潔の狩人」であるアーチャーとは相容れないもので、彼女たちに不信感と苛立ちを募らせている。
- ただ自分と同じ「捨て子」という境遇から思う所があるのか、アーチャーの願いを「気を悪くするなよ」と前置きした上で、「実現不可能なのではないか」と冷静な指摘をしている。
- ライダー
- マスターを傀儡として指令を与えている。だがライダーは傲慢な上に王族であるアサシンを毛嫌いしており、本来の聖杯戦争なら真っ先に殺そうとすると評されるほどに相性は悪い。
- 後にライダーが彼女がシロウに向けている感情に気づいてからは、お互い徐々に打ち解けていったが、それをネタに弄られる羽目に。
- 獅子劫界離
- セイバーのマスター。初対面で誘惑するが、不吉な気配を感じ取った彼に拒絶される。彼の飄々とした態度と、誘惑されても全く反応しなかった所が気に障ったのか、彼らを消すべきだとシロウに提案するが、あっさり却下される。
名台詞
- 「———ほう。まぁ、確かにそうだな。王というのは、基本的に誰よりも優れたもの、そして多くのものを求める。それは王たる者の宿命よな」
「それは権力という、何よりも必要なものを得ていたが故の戯れよ。王たる者は、基本的に暴虐だ。暴虐でなければならないのさ」 - シロウに「霊体化を嫌う英霊は、王族が多い」と言われて返した言葉。誰よりも優越であるがゆえの傲慢、自由であるがゆえの残虐性を説いた稀代の暴君の理論。
- 「何を――莫迦な、ことを」
- ライダーに試合中、シロウの為にずっと気を張り詰めて彼の姿を見守っていたことを指摘されて。
- 普段の余裕は欠片もなく、羞恥の余りに狼狽しており、それを追及されると光弾を放つほど。
メモ
- キャラクターデザインは森井しづき氏。設定制作を担当したのはTYPE MOON。
- ファンからの通称は「蝉」、もしくは「蝉様」。由来はそのまま名前の読み。あまり日本ではなじみの無い名前だからだろうか。
- 奈須氏一押しのキャラクター。ただ「運命はもう決まったようなものだな(笑)」「………ソラウ臭がする」と、額面通り受け取るには余りに危険なコメントがされている。
が、作中における描写ではソラウに似た印象は受け難く、むしろマスターに対する忠節はメディアに近い……どっちにしろ危険ではあるが。 - 東出氏によれば、シロウとの関係は「おしどり夫婦」。
- シロウに対しては「狂っているゆえに共にいるのが楽しく、成功しても破滅しても面白い」と感じている。が、それと同時に、シロウの不興を買ってでも彼を守ると言う意志も見せており、その態度を見たライダーから「忠実なサーヴァント」と思われるほど。明らかにデレている。
- 若奥様と同じくエルフ耳。彼女より長い。
- 彼女は魚の女神デルケトーとシリア人の間にできた娘であるとされ、幼くして捨てられ、鳩によって育てられたという。死後は鳩となって飛び去ったという逸話もあり、彼女自身が鳩の化身だといわれる。これが彼女が鳩を使役できる所以と思われる。
- その魔術に特化した能力や、暗殺者には相応しくない目立ち過ぎな宝具から、「魔術も使えるアサシン」と言うよりは「気配遮断も使えるキャスター」という表現がしっくりくる。
- メタ的な理由としてはやはり、キャスターとの兼ね合いによるものだろう。「キャスターらしからぬキャスター」の穴を埋める為、「キャスター以外のクラスでキャスターの役割を果たすサーヴァント」の存在が求められ、結果としてこのような設定になったのだと思われる。
- 特に、巨大な上に材料が現世由来の宝具は先述したように隠密性ゼロ。しかもミレニア城塞はトゥリファス中心地にあり、目撃者は少なく見積もっても数万人。後にユグドミレニアの認識操作を始めとした隠蔽工作でミレニア城塞での大規模な戦闘は「隕石の落下」ということで落ち着き、一応移動中は姿を隠している事が分かった。
だが大海魔の件で分かるように、例え隠蔽工作が上手くいくとしても本来は衆目に神秘を晒すような事は絶対に行ってはならない振る舞いである。また彼女のマスターは本来「神秘の秘匿」を担うはずの監督役なのだが、その職務を放棄して大聖杯を得る為に手段を選んでいない事がよく分かる。- 空中庭園がどう見ても「キャスターとしての宝具」である事から「アサシンとしての宝具」も所有している可能性があるが、その点については今のところ不明。
- 彼女の宝具に限らず、英霊はその時代のイメージに大きく左右され、生前は持っていなかった能力を後付で所有する事は少なくない。聖杯大戦においても黒のランサーの鮮血の伝承は「後の口伝」を具現化するものだし、黒のアサシンに至ってはその能力のほとんどが死後の伝承によって形成されている。他作品でも、複数の英霊のイメージが統合されているアーチャー (EXTRA・緑)などがこれにあたる。
- 王ではあるが、「カリスマ」が足りないのか、赤の陣営で彼女を頼りにしているのはマスターであるシロウだけである。
- もっとも、モデルになったサンムラマートという女性は玉座には座らず、アッシリア王となった息子の摂政を務めていたので、王に比べて「カリスマ」が低いのは当然かもしれない。また、そもそもルーラー襲撃の指示など、やっている事がすでに「カリスマ」でどうにかなるレベルの不審さではない。
- 付き合いが長くなってきたことで他のサーヴァントとの距離感も少しずつ縮んでいった。だが今度はシロウに恋心を抱いている事をほぼ全員に見破られており、それを指摘される度に慌てふためいている。
各マスターごとのステータス
筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 | 備考 | |
不定 | E | D | D | A | A | B |
話題まとめ
- バビロンの空中庭園
- 世界七不思議の一つ。紀元前600年ごろにバビロニアで実際に建設されたと思われる巨大庭園。名称から空に浮かぶ庭園のように思われるが、実際は高台に造られた屋上庭園である。
- 実際に敢行したのは、ネブカドネザル二世であると史実には記録されている。
- 実在していたという記録はあるのだがどこに建設されたのかもわからず、バビロンの遺跡から見つかった資料にも庭園の存在をほのめかすものはなかった為、本当に実在していたかは不明である。
- なお、ルーラーによれば、ネブカドネザル二世はセミラミスの使うような紛い物ではない、「本物の空中庭園」を宝具として所有するらしい。
- 王を毒殺した動機
- 夫であるニノス王を毒殺して玉座を奪った悪女というイメージが先行しているが、実情はだいぶ異なる。セミラミスにとってニノス王は2人目の夫で、最初の夫はアッシリアの将軍オンネスであった。
- オンネスは老人と言ってもよい年齢だったが、夫婦仲は非常に良好だったという。しかし、セミラミスの美貌に目を付けたニノス王は無理やり2人を引き離して彼女を後宮に入れ、更にオンネスを自殺に追い込んでしまう。
- セミラミスは何気ない風を装って二ノス王に軍事などの献策を行う事で王の信頼を得ていき、遂に王妃となるも、婚姻の数日後に王を毒殺する。つまり、毒殺した理由は夫の復讐であり、玉座の簒奪はにの次なのである。それくらい、オンネスに深い愛情を注いでいたのであろう。
- モデルとなった女性
- セミラミスのモデルとなったサンムラマートは紀元前9世紀~8世紀のアッシリア王妃で、シャムシ・アダト五世 の妻であった。夫の死後、息子のアダト・ニラリ三世が王位に付くも成人していなかったので摂政になったとされる。摂政として統治を行ったのは5年程だが、関係が深い宦官を重要なポストに付けるなどしたので後にアッシリアが弱体する一因を作ったと言われている。ただし、この時期のアッシリアは領土拡大戦争を繰り返し成功させて国力を高めており、アッシリアの黄金時代とも言える時代であった。
- 夫を毒殺する事や、1人の男の為に戦争を起す事はやっておらず、なぜセミラミスのような人物像が出来上がったのかは、よく判っていない。