概要編集
20世紀初頭にハワード・フィリップス・ラヴクラフトを初めとした作家達によって創作された作品群における神話。
人知がまったく通用しない神々やその眷属によって翻弄される人間達が主題となっており、以降のフィクションに多大な影響を与えた。
TYPE-MOON世界におけるクトゥルフ神話編集
ギリシャ神話や北欧神話など、さまざまな神話が「かつては実際にあったが、後にテクスチャが剝がれる形で正式な歴史から失われた」とされているのに対し、クトゥルフ神話の神々はこの宇宙(=地球とその円環、太陽系の内的宇宙)に実在していないし、実在したこともない。端的に言ってしまえば完全に架空の存在。
例えばクトゥルフ神話におけるクトゥルフは「かつて人類誕生以前に半魚人の神として文明を築いていたが現在では太平洋の深海に封印されて眠っている」という設定であるが、太平洋のどこを探してもクトゥルフも半魚人の文明も存在しないし、「この宇宙はアザトースが見ている夢である」という設定もアザトースが実在しない以上意味を持たない。
それらの存在は「この宇宙」には存在しないが、「この宇宙の外側」には存在しており、天文学的な確率ではあるが「繋がってしまう」ことはありえる。
例えばフランソワ・プレラーティは薬でトリップして魔術を行使した結果「外側」と繋がってしまい、危険視して魔導書の形で「繋がり」そのものを封印した。
また、上記のハワード・フィリップス・ラブクラフトは怪奇小説として自分の妄想を描いた結果、それが「外側」に存在していた何らかの存在の在り方と完全に一致してしまっていたことが語られている。
要するに、TYPE-MOON世界におけるクトゥルフ神話の神々とは「ラブクラフトの創作した架空の神々と酷似した性質を持つ名状しがたい何か」でしかない[注 1]。
これらの「外側」に存在する存在については知っている人は知っており、魔術関係者の中でも時計塔における伝承科のブリシサンは「禁忌の知識」として伝えている模様。
このようにクトゥルフ神話の神々とこの宇宙との間にはごくわずかな例外を除いて接点は存在しなかったが、『Fate/Grand Order』のとある事件をきっかけに接点ができてしまった。
禁忌降臨庭園 セイレム編集
『Fate/Grand Order』にて、魔術王の討伐後に逃走した魔神柱の残党であるラウムが「人類を救済するためにはこの宇宙にない存在に縋るしかない」という結論に至り、アビゲイル・ウィリアムズを邪神の巫女に据えて世界そのものを書き換えようとした事件。
世界の書き換えそのものには失敗したものの、アビゲイルは邪神の力を持ったサーヴァントであるフォーリナーとして完成し、人類史に刻まれた英霊となってしまった。
これにより、この宇宙の内側に気づいていなかった「外側」の存在がこちらを感知してしまい、彼らからの干渉が発生するようになった。
外側にとってはこの宇宙の時間軸からは独立しているため2017年以前の世界でも干渉は可能であり、例えば葛飾北斎に対しては死の間際にクトゥルフと思しき存在からの干渉があり、それがきっかけでフォーリナーとなっている。
邪神としてはこの宇宙の存在に気づいてはいても直接的に干渉することはできないようで、宇宙の外側と繋がった「英霊の座」を通して一部の英霊の霊基を改ざんしてフォーリナーとしての霊基を形成し、彼らに内部から呼び込んでもらうことを画策している状態である。
虚数大海戦 イマジナリ・スクランブル ~ノーチラス浮上せよ~ 編集
セイレムと同じく『Fate/Grand Order』にて、外なる神が生み出したフォーリナーのヴァン・ゴッホを通し、虚数空間から実数空間へと侵攻しようとした事件。
虚数空間に潜航したノーチラス号に自覚のない先兵としてヴァン・ゴッホを接触させ、彼女を通じてカルデアのフォーリナーを呼び、一個所にまとまったフォーリナーたちを全員「神化」(発狂)させ、外なる神が降臨する依代とする計画であったが、カルデアによって阻止された。
しかしその後、これまでカルデアに与していたフォーリナーの楊貴妃がカルデアを裏切るも、彼女はカルデアのマスターを「天子様」と誤認して外なる神の目論見通りの動きをしなかったため、そちらの計画も失敗に終わった。
人類側から対処も認識もできない外なる神だが、しかし外なる神もまた実数空間には直接手出しはできなかったため、今回の事件では虚数空間にその足掛かりとなる前線基地を構築しようとしていたという。
メモ編集
- 上記のように近代以降のフィクションに与えた影響は大きく、TYPE-MOON関連作家の作品でもクトゥルフ神話の設定を下敷きにしたり影響を受けたものとして、桜井光氏の『漆黒のシャルノス』を始めとするスチームパンクシリーズ、鋼屋ジン氏の『機神咆哮デモンベイン』を始めとするデモンベインシリーズ、虚淵玄氏の『沙耶の唄』、星空めてお氏の『腐り姫』など枚挙に暇がない。
話題まとめ編集
脚注編集
注釈編集
- ↑ 実際、作中でも第三者視点であるマテリアルならいざ知らず、作中の描写には「クトゥルフ」を始めとする固有名詞は「よくわからない呪文の一節」として以外はまったく登場しない。
出典編集