炎上汚染都市 冬木 | |
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副題 | 序章 |
人理定礎値 | C |
年代 | A.D.2004 |
シナリオ担当 | 奈須きのこ |
概要
特異点F。西暦2004年1月30日の日本の地方都市、冬木市。元々は大聖杯を巡っての聖杯戦争が繰り広げられていた。
レイシフトする半年前にカルデアスで2016年が絶滅する事が観測され、カルデアは半年間その未来消失の原因をラプラスとトリスメギストスを用いて過去2000年までの情報を洗い出し、その結果、2015年までの歴史には存在しなかった“観測できない領域”として発見された。人類史というドレスに染みついた、小さな汚れのようなもの。
カルデアはこの特異点を人類絶滅の原因と仮定し、
聖杯戦争が起こりサーヴァントが戦闘を行っていること自体は本来の歴史通りであるものの、
聖杯による魔術的な災害が発生しており、比喩ではなく町の全てが燃え盛っている光景は並行世界の十年前の大火の比ではなく、未確認座標としか表記されないそれは元の場所の名前すら識別が困難なほどの有様。何処まで行っても焼け野原で住人の痕跡も存在しない。街は炎上し人間はいなくなっている。スケルトンなどの低級の怪物と聖杯戦争の参加者だった七騎のサーヴァントだけが存在している。
呪いが土地そのものに染み付いており、人間の住める場所ではなくなっている。炎は十年や二十年では消えないと推測される[注 1]。大気中の
カルデアの資料では冬木市は平均的な地方都市で、2004年にこの様な災害が起きた記録は存在しない。ラプラスの観測では2004年にこの冬木市で特殊な聖杯戦争が行われている。冬木の街の魔術師が聖杯を完成させ、起動のために七人のマスターがそれぞれ七騎のサーヴァントを召喚し、サーヴァント同士を戦わせて競い合っていた。記録ではセイバーが勝利し、本来の歴史では街は破壊されずに聖杯戦争は終結した。
本来の聖杯戦争は冬木に召喚されたサーヴァント七騎による殺し合いだが、この聖杯戦争は何時の間にか別のものにすり替わっており、この特異点は“何かが狂った”状況で、マスターのいないサーヴァントが徘徊している。
データが入り交じった結果、データのコリジョンが発生し、クー・フーリンがキャスターになったり、エミヤが気持ち悪くなったり、アルトリアがオルタナティブになったりしている[出 1]。
経緯は不明だが一夜で街は炎に覆われ、人間がいなくなり、サーヴァントだけが残された。そんな中でセイバーが真っ先に聖杯戦争を再開し、アーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカー、アサシンがセイバーによって倒された。倒されたサーヴァントは真っ黒い泥に汚染されシャドウ化した。汚染されたサーヴァントはボウフラの様に湧いてきた怪物達と何かを探していた。
シャドウ化したサーヴァントは敗退した扱いで、唯一残ったサーヴァントであるセイバーとキャスターのどちらかが倒されれば、この街の聖杯戦争は終了する。聖杯戦争が終わるとサーヴァントも含めて全ての街の異常が消える。
水晶体の聖杯を与えられたセイバーがこの時代を維持しようとしており、主人公たちにセイバーが倒された事で特異点の空間が不安定になって崩壊し、主人公達は時空の歪みに巻き込まれた。
ゲーティアからの言及や、終局特異点『冠位時間神殿 ソロモン』へのサーヴァントの召喚が行われなかった唯一の例外。
この特異点は第1部はおろか1.5部、そして第2部に至っても未だ修正されてはいない特異点として残り続けているとされる。
なお、第六特異点にてマシュ・キリエライトが、幕間の物語「アンリミテッド・レイズ/デッド」にてロマニ・アーキマンがこの特異点を指して『特異点X』と呼んだが、現時点で詳細は不明。
戦場となる市内各所は、大橋、教会、港など、以前からのFateユーザーには見慣れた場所が揃う。が、遠坂邸や間桐邸のあったエリアが巨大なクレーターと化して跡形もなく吹き飛んでいたり[注 2]、マップに明らかに「とある宝具」をぶっ放した跡が一直線に延びていたり[出 2]と、かなりボロボロ。
レイシフト地点の未確認座標X-Aから2キロほど移動した未確認座標X-Bに霊脈のターミナルと呼べる強い霊脈地のポイントがある。魔力の収束する場所であるため、ここでマシュの宝具である盾を触媒に召喚サークルを設置し、ベースキャンプを作成した。これによりカルデアは空間固定に成功し、カルデアから短時間の通信や補給物資の転送が可能になった。
大聖杯のある洞窟は半分天然、半分人工で、魔術師が長い年月をかけね拡げた魔術工房。内部は少し入り組んでいる。洞窟内にはエミヤが陣取っている。
大空洞に残る大聖杯内部は空間が安定しておらず、それ一つで一種の特異点の様な状態であり、カルデアとの繋がりも安定しない。
アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕の幕間の物語「オルタの系譜」ではこの大聖杯内部の空間にレイシフトし、大聖杯内部でありながら何処でもない断片、一時とはいえ特異点と化したモノを再現する場として主人公たちが通り過ぎた一つの結末を一時的に再現した。再現とはいえ戦う分には幻ではないため、オルタによって主人公の修練に利用されることとなる。この時はフランス特異点が再現されたが、冬木とフランスの人理定礎の値が一瞬だけマイナスに戻っていた。
続くアルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕の幕間の物語「似て非なるもの」では、大聖杯内部の空間にレイシフトしてアルテラの夢に入り込んだ。この夢には地平線を埋め尽くす数の巨大なゴーレムの集団が溢れていたが主人公たちを敵視してはおらず、ただ土地を破壊する為だけに前進していた。個々の意思を持たないが、一つの意思で統率されており、マシュの所感だと「この星の文明を停止させろ」と命じられている様だったとされる。この空間はアルテラの夢であったため、夢の世界のアルテラ本人が消滅に伴い夢が覚め、世界が崩壊すると共に主人公たちは元の意識に帰った。この際主人公たちはワールドエンドの疑似体験をすることとなった。
大聖杯のあった大空洞は強力な霊脈となっている。そのためネロ・クラウディウス〔ブライド〕の幕間の物語「決意の花束」では大空洞の中心の霊脈を鍛冶場に「遥かな過去に地上に落ちた霊石」を火にくべ、生気を宿すことで「燃え盛る聖なる泉フェーヴェンス・アーデオ」という剣を作成した。
エミヤの幕間の物語「無限の剣製」では大空洞の奥に黒化したバーサーカーがいた。その実力は本物に迫るほど。エミヤは以前にこの特異点に来た時に気配を感じとっており、主人公のマスターとしての力量を試す為の試練として倒された。
登場人物
- オルガマリー・アニムスフィア
- カルデアの所長。未確認座標X-Bの爆心地で主人公達と合流した。
- 魔術回路の質も量も一流だが、マスター適性、レイシフト適性が無い。サーヴァントと契約ができない。作戦に備えて特注で作っておいた礼装があるが、作戦前の主人公との問答に時間を取られ、着替える時間が無かった。まだ一度も袖を通していない。ドライフルーツを所持している。
- 基本的に敵性生物との戦いには参加せずに隠れている。実は管制室での爆発では足元に爆弾を設置されており、既に肉体は死亡している。本来はレイシフト適性は無いが、肉体を失い残留思念となった事でレイシフトが可能になり、トリスメギストスが特異点に転移させた。カルデアに帰った時点でその意識は消滅してしまうため、カルデアに戻ることは出来ない。
- 合流時はスケルトンに襲われており、マシュに助けられた。キャスターの荒療治で疑似展開したマシュの宝具に真名なしで使うのは不便という事で「ロード・カルデアス」という
呪文 を名付けた。セイバーを倒した後に現れたレフ・ライノールによって自身の死んでいる事を教えられ、聖杯を使って時空を繋げて赤く染まったカルデアスを見せられ、「高密度霊子の集合体」「次元が異なる領域」であり物理的には太陽やブラックホールに等しいカルデアスに直接接触させられ、生きたまま無限の死を味わい、分子レベルにまで分解されて消滅した。 - 彼女が最期に残した本心の叫びは主人公とマシュに深く刻まれており、第二部序章で似た様な本音を叫んだゴルドルフ・ムジークを見捨てられず救いに行くきっかけになっている。
- クー・フーリン〔キャスター〕
- 聖杯戦争に参加していたキャスターのサーヴァント。唯一泥に汚染されていない。序章では真名は明かされない。マシュは
妖精情報誌 にも載っていそうなトップサーヴァントの一人と推測している。 - セイバーを倒し聖杯戦争の幕引きを狙い、他六騎のサーヴァントと敵対している。「影のサーヴァント達よりマシ」「見所のあるガキは嫌いじゃない」「ひとりで健気に戦ったお嬢ちゃんに免じて」という名目で主人公と仮契約して協力する。本当のところはセイバーを倒そうとしているが、一人では勝ち目がない為に主人公達と協力した。
- 「永遠に終わらないゲームは退屈。良きにつけ悪しきにつけ、駒を先に進める」と発言しており、エミヤ曰く事のあらましを理解し大局を知っている。
- 未確認座標X-Cで呪腕のハサンと武蔵坊弁慶に追い詰められていた主人公達の前に現れ、主人公と仮契約をして倒すのを手伝った。道中、マシュの特訓の為にオルガマリーのコートに厄寄せのルーンを刻むことで怪物を集めて戦わせ、マシュが疲れ果てた状態で自身と戦闘を行い、仕上げに宝具『灼き尽くす炎の檻』を放ち、それを防がせる形で宝具『仮想宝具 疑似展開/人理の礎』を展開させる荒療治を行なった。セイバーを倒した事で聖杯戦争が終わり、それにより強制帰還により消滅した。
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕
- 聖杯戦争に参加していたセイバーのサーヴァント。データのコリジョンにより、オルタ化した[出 1]。
- 水晶体の聖杯を与えられながら、この時代を維持しようとしていた。何を語っても見られているため、案山子に徹し一言も喋らなかった。だがマシュの宝具に反応して語り掛けた。
- 「狂った聖杯戦争」の中で真っ先に行動を再開し、キャスター以外の5騎を撃破、泥に汚染されたシャドウサーヴァントとして使役していた。大聖杯で主人公らに『約束された勝利の剣』を放つがマシュの『仮想宝具 疑似展開/人理の礎』で防がれ、クー・フーリンとマシュと戦った。聖杯を守り倒す気だったが、己が執着に傾いた結果、知らず力が抜けていたらしく、最後の最後で手を止め、敗北した。「どう運命が変わろう私ひとりではおなじ末路を迎える」と語り、聖杯を巡る戦い「グランドオーダー」に言及し、特異点化の原因である聖杯の水晶体を残して消滅した。
- メドゥーサ
- 聖杯戦争に参加していたライダーのサーヴァント。セイバーに倒され泥に汚染された。
- 教会跡で主人公たちと遭遇し、マシュ・キリエライトに倒された。
- ハサン・サッバーハ〔呪腕のハサン〕
- 聖杯戦争に参加していたアサシンのサーヴァント。セイバーに倒され泥に汚染された。
- メドゥーサを倒した主人公たちを追跡し、未確認座標X-Cの大橋周辺で追い付かれ戦闘になった。戦闘中に武蔵坊弁慶と合流し主人公達を追い詰めるが、主人公にクー・フーリンが助力した事で敗北した。
- 武蔵坊弁慶
- 聖杯戦争に参加していたランサーのサーヴァント。セイバーに倒され泥に汚染された。
- 未確認座標X-Cの大橋周辺で主人公達に追い付き武蔵坊弁慶と合流し追い詰めるが、主人公達にクー・フーリンが助力した事で敗北した。
- エミヤ
- 聖杯戦争に参加していたアーチャーのサーヴァント。セイバーに倒され泥に汚染された。
- データのコリジョンにより、きのこ曰く気持ち悪くなった。彼が積極的にセイバーを守り、カルデアからの調査員を殺そうとするなどセイバーに手を貸したのは、シャドウ化や情が理由ではなく、セイバーの目的を知っていたから[出 1]。
- 大聖杯へ繋がる洞窟でクー・フーリンとマシュと戦って敗北し、消滅した。
- ヘラクレス
- 聖杯戦争に参加していたバーサーカーのサーヴァント。セイバーに倒され泥に汚染された。
- セイバーでも手を焼く怪物だが、近寄らなければ襲ってこない。
- エミヤの幕間の物語「無限の剣製」では大空洞の奥に黒化したバーサーカーがいた。その実力は本物に迫るほど。エミヤは以前にこの特異点に来た時に気配を感じとっており、主人公のマスターとしての力量を試す為の試練として倒された。
- レフ・ライノール
- 人理継続保障機関フィニス・カルデアの顧問を務める魔術師。人類を処理するために遣わされた2015年担当者。正式な名前はレフ・ライノール・フラウロス。近未来観測レンズ「シバ」の開発者。オルガマリーとの共同開発でシバを作った。
- ロマニ・アーキマンはは共に魔道を研究した学友。オルガマリー・アニムスフィアからは深く信頼されていたが、当人は頼られる事を煩わしく感じていた。
- 管制室のオルガマリーの足元に爆弾を設置し、管制室を爆破しオルガマリーを殺し、47人のマスター候補は瀕死の重傷を負わせた。ロマニを管制室に通信で呼び出し、移動時間を逆算して爆破に巻き込まれるタイミングを見計らったが、ロマニが医療室ではなく主人公の自室になる予定の部屋にいたため到着が遅れ、結果的にロマニはレフの破壊工作に巻き込まれなかった。また48人目のマスター適性者である主人公を全く見込みがない子供として善意で見逃したが、それが仇となり特異点を修復された。
- セイバーを倒し水晶体を回収しようとする主人公たちの前に現れ、オルガマリーに真実を教え聖杯を使って時空を繋げ、赤く染まったカルデアスにオルガマリーを浮かび上がらせカルデアスに触れさせて消滅させた。その後、崩壊する特異点から離脱した。
用語
- 冬木市
- 日本の地方都市。
- カルデアの資料では冬木市は平均的な地方都市で、2004年に街が炎に覆われる災害が起きた記録は存在しない。ラプラスの観測では2004年にこの冬木市で特殊な聖杯戦争が行われている。
- 聖杯戦争
- 冬木の街の魔術師が聖杯を完成させ、起動のために七人のマスターがそれぞれ七騎のサーヴァントを召喚し、サーヴァント同士を戦わせて競い合っていた。記録ではセイバーが勝利し、本来の歴史では街は破壊されずに聖杯戦争は終結した。
- 大聖杯
- この冬木の土地の本当の“心臓”。超抜級の魔術炉心。製作はアインツベルンという錬金術の大家。
- クー・フーリン〔キャスター〕が特異点があるとしたらここだけ、という場所。アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕か大聖杯に居座っている。
- アインツベルン
- 大聖杯を製作した錬金術の大家。魔術協会に属さない、
人造人間 だけで構成された一族。
メモ
- 最初の特異点を『stay night』の舞台となった冬木市に設定したうえで完全に廃墟になっているのは、『stay night』からのユーザーに対する「貴方たちが愛してくれたFateであるが、今までのFateではない」という決意表明も兼ねているため。
- この時点ですでに第1部の結末はあらかじめ決まっており、この特異点はそこから逆算で少しずつ真相の痕跡を散りばめた形となっている。
- 第1部に含まれながらも、終了後も多くの謎を残している特異点。最も大きなものとしては以下の三点が挙げられる。
- 過去と未来を見通す千里眼を持つ人理焼却の黒幕は聖杯を渡して人理を歪ませたサーヴァント達の名を挙げる中、なぜかアルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕の存在はなかった。このことから、ゲーティアはこの特異点に全く関わりのない存在だったと推測される。
- この特異点の成立に大きく関わっていると目される大聖杯の汚染源曰く、この特異点は未だに修正が完了していないとされる。
- 時折『特異点X』と呼称される場合がある。初出は第1部第6章だが、第2部公開後もテキストが修正されていないことを考えると「あの場面においてはそれが正しい」と判断することができる。
- 『特異点F』のアイコンが熊本県近辺に相当する位置に設定されていること、『Fate/Grand Order -turas realta-』にて『特異点F』の位置が大分県にあるような描写をされていることなどから、冬木市の場所は九州北部(特に大分県周辺)ではないかとする説が出されている。
- この特異点のステージBGMは『stay night』の初期タイトル及び劇中曲「Into The Night」のアレンジとなっている。