差分

編集の要約なし
23行目: 23行目:     
=== 歴史 ===
 
=== 歴史 ===
汎人類史との分岐点は1万4千年前、[[セファール]]の襲来時。本来の歴史では6翅の亜鈴の妖精<ref group="注">ここにおける「亜鈴」とは『星の内海』から使命を受けて地表に降り立った妖精を表す異聞帯特有の呼び名で、同時に妖精國ブリテンにおける風・牙・土・翅・鏡・雨の6つの氏族の祖先となる「はじまりのろくにん」の事を指す。</ref>が切り札となる神造兵器・[[聖剣]]を鋳造し、これを持った人間が最終的にセファールを撃退したために多くの神々が死に絶え文明も破壊されたものの、本当に壊滅的な被害になる前に防ぐ事ができた。しかしこの異聞帯ではこの聖剣の鍛造を怠けてサボったため、地上では外敵を撃退する手段が無いまま蹂躙しつくされ、地球全土が『無の海』と化してしまう。
+
汎人類史との分岐点は1万4千年前、[[セファール]]の襲来時。本来の歴史では6翅の亜鈴の妖精<ref group="注">ここにおける「亜鈴」とは『星の内海』から使命を受けて地表に降り立った妖精を表す異聞帯特有の呼び名で、同時に妖精國ブリテンにおける風・牙・土・翅・鏡・雨の6つの氏族の祖先となる「はじまりのろくにん」の事を指す。</ref>が切り札となる神造兵器・[[聖剣]]を鋳造し、これを持った人間が最終的にセファールを撃退したために多くの神々が死に絶え文明も破壊されたものの、本当に壊滅的な被害になる前に防ぐ事ができた。しかしこの異聞帯では6翅の亜鈴がこの聖剣の鍛造を怠けてサボったため、地上では外敵を撃退する手段が無いまま蹂躙しつくされ、地球全土が『無の海』と化してしまう。
   −
そこへ唯一喪失を逃れていた獣神「[[ケルヌンノス]]」と、その巫女たる人間が残った妖精達を諌めるべく楽園からの使者としてやって来る。最初は上手く共存していたが、いつまでたっても現状は変わらず、さらにケルヌンノスと巫女の度重なる口出しに嫌気がさしていったのもあり、6翅は'''『こうなったのは全部あの神様が悪い』'''という考えの下結託、獣神の為の祭事と称した宴を開き毒酒を飲ませて殺害する。そしてその屍体を大地の代わりとして使用し、残された巫女は魔力で生きたまま解体して自分達の道具や嗜好品として使役する為のコピー人間を造り、これらを元手に端末であり子孫にあたる「森の仔」、「石の仔」を生み出しつつ発展をとげてきた。<br>それから100年間、謎の死を遂げゆく妖精たちの骸が積もることで大地は広がり、 “次代” が生まれるシステムにより住民も数を増やし、使役する人間によって文明も栄えるが、ここまで来てもなお妖精達の原因不明の死は止まらず、ようやくこれがケルヌンノスの怒りによる呪いだと6翅の亜鈴は気付くも、反省するどころかその罪を隠匿するかの如く死骸の山により形成されたブリテン島へ逃げると屍体が浮かぶ海を急速に埋め立て、干上がった海の残滓は『大穴』として残り続ける事になる。こうして6翅およびその仔達は『星の内海』から締め出されてしまい、その上屍体の陸地に降り積もった呪いは「生まれた目的」を失ったり魂そのものが傷付いたりして無意味化した妖精の個々の姿形を奪い、黒い霧の固まりに変えてしまう『モース』と呼ばれる猛毒と、1000年事に島そのものを滅ぼす毎回異なった『大厄災』<ref group="注">この他にも100年毎に小規模の『厄災』が発生しているが、此方はどちらかと云うと妖精の好奇心からくる不注意が引き起こした'''人災'''によるものが多い。</ref>となって定期的に陸上を襲う事になり、以後の妖精達はいつどんな形で起きるか分からない「呪い」を無意識に恐れ、不安と苦しみに苛まれながらブリテンで生きる事になる。そうして亜鈴は妖精暦7000年の時点で全員が消滅し、代わりに「氏族」と名乗るようになった亜鈴の仔と、最初の6翅と同等の力を持つ妖精『亜鈴返り』がブリテンに残される。翌年の6000年に大地が汎人類史におけるスコットランドまで到達すると、そこで暮らしていた北部の妖精が合流し、今度は氏族間に加えて北と南の妖精の間でも領地を巡る争いが勃発してしまう。<br>そんな中、妖精暦4000年にブリテンと妖精を正し、この世界に聖剣をもたらすべく、星の内海から最初の『<ruby><rb>楽園の妖精</rb><rt>アヴァロン・ル・フェ</rt></ruby>』ヴィヴィアンが派遣されてくる。しかし「(過ちを)叱られたくなかった<ref group ="出" name="『TYPE-MOONエースVOL.14』" />」理由から、鏡の氏族を除く他の妖精達によって罪と一緒に彼女を受け入れた雨の氏族共々皆殺しにされてしまい、その年の大厄災に為す術なく、ブリテン異聞帯と妖精は事実上完全消滅してしまったのである。
+
そこへ唯一星の内海で喪失を逃れていた獣神[[ケルヌンノス]]と、その巫女たる人間が残った妖精達を諌めるべく楽園からの使者としてやって来る。<br>
 +
当初両者は上手く共存していたが、いつまでたっても現状は変わらず、さらにケルヌンノスと巫女の度重なる口出しに嫌気がさしていったのもあり、6翅は'''『こうなったのは全部あの神様が悪い』'''という考えの下結託、獣神の為の祭事と称した宴を開き毒酒を飲ませて殺害する。<br>
 +
そしてその屍体を大地の代わりとして使用し、残された巫女は魔力で生きたまま解体して自分達の道具や嗜好品として使役する為のコピー人間を造り、これらを元手に端末であり子孫にあたる「森の仔」、「石の仔」を生み出しつつ発展を遂げてきた。<br>
 +
それから100年間、謎の死を遂げゆく妖精たちの骸が積もることで大地は広がり、 “次代” が生まれるシステムにより住民も数を増やし、使役する人間によって文明も栄えるが、ここまで来てもなお妖精達の原因不明の死は止まらず、ようやくこれがケルヌンノスの怒りによる呪いだと6翅の亜鈴は気付く。<br>
 +
しかし反省するどころか、その罪を隠匿するかの如く死骸の山により形成されたブリテン島へ逃げると屍体が浮かぶ海を急速に埋め立て、干上がった海の残滓は『大穴』として残り続ける事になる。こうして6翅およびその仔達は『星の内海』から締め出されてしまう。<br>
 +
その上屍体の陸地に降り積もった呪いは「生まれた目的」を失ったり魂そのものが傷付いたりして無意味化した妖精の個々の姿形を奪い、黒い霧の固まりに変えてしまう『モース』と呼ばれる猛毒と、1000年事に島そのものを滅ぼす毎回異なった『大厄災』<ref group="注">この他にも100年毎に小規模の『厄災』が発生しているが、此方はどちらかと云うと妖精の好奇心からくる不注意が引き起こした'''人災'''によるものが多い。</ref>となって定期的に陸上を襲う事になり、以後の妖精達はいつどんな形で起きるか分からない「呪い」を無意識に恐れ、不安と苦しみに苛まれながらブリテンで生きる事になる。<br>
 +
そうして亜鈴は妖精暦7000年の時点で全員が消滅し、代わりに「氏族」と名乗るようになった亜鈴の仔と、最初の6翅と同等の力を持つ妖精『亜鈴返り』がブリテンに残される。翌年の6000年に大地が汎人類史におけるスコットランドまで到達すると、そこで暮らしていた北部の妖精が合流し、今度は氏族間に加えて北と南の妖精の間でも領地を巡る争いが勃発してしまう。<br>
 +
そんな中、妖精暦4000年にブリテンと妖精を正し、この世界に聖剣をもたらすべく、星の内海から最初の『<ruby><rb>楽園の妖精</rb><rt>アヴァロン・ル・フェ</rt></ruby>』ヴィヴィアンが派遣されてくる。しかし「(過ちを)叱られたくなかった<ref group ="出" name="『TYPE-MOONエースVOL.14』" />」理由から、鏡の氏族を除く他の妖精達によって罪と一緒に彼女を受け入れた雨の氏族共々皆殺しにされてしまい、その年の大厄災に為す術なく、ブリテン異聞帯と妖精は事実上完全消滅してしまったのである。
   −
イギリス異聞帯のクリプターとなったベリルが訪れたのは、こうして知性体が絶滅した後の遙か未来の『無の大地』であるが、そこで彼が'''『[[モルガン|汎人類史のモルガン]]』をサーヴァントとして召喚した'''事により更に歪みが拡大する結果を招く。
+
ブリテン異聞帯のクリプターとなったベリルが訪れたのは、こうして知性体が絶滅した後の遙か未来の『無の大地』であるが、そこで彼が'''『[[モルガン|汎人類史のモルガン]]』をサーヴァントとして召喚した'''事により更に歪みが拡大する結果を招く。
   −
[[空想樹]]が遠くにあるだけの『無の大地』となったブリテンを目の当たりにし、ベリルから事の次第を聞かされた汎人類史のモルガンは、'''「此処の世界なら今度こそ自分だけの国が創れる」という己の願望を優先した考えの下'''、自身が召喚されたカルデアのレイシフト技術を解析・模倣して妖精暦4000年へとレイシフトし、自分が見た『未来のブリテンの有様』と『汎人類史における自身の立場と存在理由』、さらには『サーヴァント召喚を含めたカルデアの技術』といった情報までもを自分自身の霊基消滅と引き換えにしてヴィヴィアンに譲渡。この結果彼女は'''「ブリテンを救う楽園の妖精」から「ブリテンを求める魔女モルガン」に変貌'''し、4翅による雨の氏族虐殺から逃れ『大厄災』をも回避して生存すると『自分の国を創る』という新たな目的のため、表面上は「[[救世主トネリコ]]」と名乗って仮初の道を歩み始める。<br>しかし、何度も厄災を回避し、氏族および北と南の妖精、並びに妖精と人間の仲も調停し、平和の基盤を整え国の掌握に王手をかけても、その度に一部の妖精の気まぐれと思いつきによる「身勝手な言動」にひっくり返されて瓦解してしまうため次第に心身ともに疲れ果てていき、妖精暦400年<ref group="注">この時、女王暦からモルガンの『水鏡』に巻き込まれる形でマシュ・キリエライトが妖精暦にやって来る事態が発生しているが、トネリコが「妖精騎士ギャラハッド」の仮名を与え、多少の矛盾はあれど基本的な流れは変わらない様に配慮した事により、両者から互いに関する<ruby><rb>記憶</rb><rt>情報</rt></ruby>が消去される程度の影響に留められた。</ref>目に起きた裏切りの果てにとうとう精神が砕け散ると、'''「大事なのはブリテンだけで、そこに住む妖精はもうどうでもいい」'''という結論に行き着き、救世主の使命を放棄して雌伏した事からその年の大厄災によって再びブリテン異聞帯は妖精と共に全滅。
+
[[空想樹]]が遠くにあるだけの『無の大地』となったブリテンを目の当たりにし、ベリルから事の次第を聞かされた汎人類史のモルガンは、'''「此処の世界なら今度こそ自分だけの国が創れる」という己の願望を優先した考えの下'''、自身が召喚されたカルデアのレイシフト技術を解析・模倣して妖精暦4000年へとレイシフトし、自分が見た『未来のブリテンの有様』と『汎人類史における自身の立場と存在理由』、さらには『サーヴァント召喚を含めたカルデアの技術』といった情報までもを自分自身の霊基消滅と引き換えにしてヴィヴィアンに譲渡。<br>
 +
この結果ヴィヴィアンは'''「ブリテンを救う楽園の妖精」から「ブリテンを求める魔女モルガン」に変貌'''し、4翅による雨の氏族虐殺から逃れ『大厄災』をも回避して生存すると『自分の国を創る』という新たな目的のため、表面上は「[[救世主トネリコ]]」と名乗って仮初の道を歩み始める。<br>
 +
しかし、何度も厄災を回避し、氏族および北と南の妖精、並びに妖精と人間の仲も調停し、平和の基盤を整え国の掌握に王手をかけても、その度に一部の妖精の気まぐれと思いつきによる「身勝手な言動」にひっくり返されて瓦解してしまうため次第に心身ともに疲れ果てていき、妖精暦400年<ref group="注">この時、女王暦からモルガンの『水鏡』に巻き込まれる形でマシュ・キリエライトが妖精暦にやって来る事態が発生しているが、トネリコが「妖精騎士ギャラハッド」の仮名を与え、多少の矛盾はあれど基本的な流れは変わらない様に配慮した事により、両者から互いに関する<ruby><rb>記憶</rb><rt>情報</rt></ruby>が消去される程度の影響に留められた。</ref>目に起きた裏切りの果てにとうとう精神が砕け散ると、'''「大事なのはブリテンだけで、そこに住む妖精はもうどうでもいい」'''という結論に行き着き、救世主の使命を放棄して雌伏した事からその年の大厄災によって再びブリテン異聞帯は妖精と共に全滅。
   −
するとトネリコは空想樹を使って'''それら全てをカルデアのサーヴァント召喚式を応用することで蘇らせ、'''「妖精國ブリテン」という女王暦を年号に据えた新たな王国として成立させると、自身は「[[モルガン (Grand Order)|ブリテン異聞帯の女王モルガン]]」として即位する。<br/>
+
するとトネリコは空想樹の魔力を吸い取って'''死んだ妖精の全てをカルデアのサーヴァント召喚式を応用することで蘇らせ、'''「妖精國ブリテン」という女王暦を年号に据えた新たな王国として成立させると、自身は「[[モルガン (Grand Order)|ブリテン異聞帯の女王モルガン]]」として即位する。<br>
 
これにより、剪定事象だったブリテン異聞帯はそこからさらに『もしも(if)の世界』へと枝分かれした[[特異点]]、所謂'''「異聞世界」'''へと派生した。
 
これにより、剪定事象だったブリテン異聞帯はそこからさらに『もしも(if)の世界』へと枝分かれした[[特異点]]、所謂'''「異聞世界」'''へと派生した。
    
=== 地理 ===
 
=== 地理 ===
見た目と位置関係は汎人類史におけるイギリスの本土そのものだが、アイルランドやスコットランドにあたる大部分が存在しない。この領域もまた外からの観測が不可能となっているが、他の異聞帯と異なり、第六特異点と同じく「ロンゴミニアドの光の壁」と莫大な魔力に覆われている。<br>ブリテンの大半を構成する丘陵は見渡す限りの草原に僅かな岩山と木々や草が生え一見すると和やかな田園風景だが、大地を構成するこれらは全て妖精達の死骸が積もり固まって出来たものであるため、汎人類史において妖精の一番の象徴たる自然の花がひとつも咲いていない。昼間は常に夜明けを思わせる虹色の光と金色の雲が漂う黄昏色に染まり青空にはならず、夜間は満天の星が一面に輝く澄み渡った空になる<ref group="注">ただし時たまにだが雨が降る事はある模様。</ref>ため、より幻想的な妖精の世界を醸し出している。妖精以外では野生動物や幻想種も生息している他、妖精が呪いによって変貌した「モース」があちこちをさ迷っている。<br>一方で「厄災」による積年の呪いの残滓が煤となって常に降り注いでおり、特に中央でケルヌンノスの屍体が眠る『大穴』の片方半分はこの煤と妖精の死骸によって白い樹と大地に囲われている。妖精國ブリテンの妖精達は本能的にこの『大穴』を恐れて近付かないのだが、稀にここへ「いらないもの」を捨てに来る者達がいる。<br>ブリテンそのものは罪都キャメロットを挟んで南と北の上下に大別され、南部および中原は氏族長達がそれぞれ統治する都市によって繁栄しているが、北部に至るほど過去の戦争で朽ち荒れ果てたまま捨て置かれるようになっていく。
+
見た目と位置関係は汎人類史におけるイギリスの本土そのものだが、アイルランドやスコットランドにあたる大部分が存在しない。この領域もまた外からの観測が不可能となっているが、他の異聞帯と異なり、第六特異点と同じく「ロンゴミニアドの光の壁」と莫大な魔力に覆われている。<br>
 +
ブリテンの大半を構成する丘陵は見渡す限りの草原に僅かな岩山と木々や草が生え、一見すると和やかな田園風景だが、大地を構成するこれらは全て妖精達の死骸が積もり固まって出来たものであるため、汎人類史において妖精の一番の象徴たる自然の花がひとつも咲いていない。<br>
 +
昼間は常に夜明けを思わせる虹色の光と金色の雲が漂う黄昏色に染まり青空にはならず、夜間は満天の星が一面に輝く澄み渡った空になる<ref group="注">ただし時たまにだが雨が降る事はある模様。</ref>ため、より幻想的な妖精の世界を醸し出している。<br>
 +
妖精以外では野生動物や幻想種も生息している他、妖精が呪いによって変貌した「モース」があちこちをさ迷っている。<br>
 +
一方で「厄災」による積年の呪いの残滓が煤となって常に降り注いでおり、特に中央でケルヌンノスの屍体が眠る『大穴』の片方半分はこの煤と妖精の死骸によって白い樹と大地に囲われている。妖精國ブリテンの妖精達は本能的にこの『大穴』を恐れて近付かないのだが、稀にここへ「いらないもの」を捨てに来る者達がいる。<br>
 +
ブリテンそのものは罪都キャメロットを挟んで南と北の上下に大別され、南部および中原は氏族長達がそれぞれ統治する都市によって繁栄しているが、北部に至るほど過去の戦争で朽ち荒れ果てたまま捨て置かれた土地が広がっている。
    
===現状===
 
===現状===
モルガンは「ブリテンは救うが妖精は救わない」とあらかじめ宣言しており、その一つとして隷属と運営に必要な人間の数と提供を上級妖精に限定する形で徹底的に管理しており、下級の妖精に宛てがわれることは無い。また、女王暦の始めにモルガンによってブリテンとともに復活した以降の妖精達には『妖精紋様』と呼ばれる令呪が刻みつけられており、妖精領域の拡大という名目で年に一度膨大な魔力の半分を存在税として「献上」しなければならない。なので妖精達はこれを賄えるまでの魔力を1年以内に貯めておかなければならず、できないものはこの時点で即死してしまう。また、度重なる献上に耐えられず働けなくなって逃亡する者もおり、そういった妖精は見つかり次第連行・処刑されてしまう。<br>ブリテンを脅かす『厄災』についても「水鏡」を使って払うこそすれど、その影響で周囲の街や住んでいる妖精と人間達が吹き飛ぶ事になっても知ったことではなく、乞われれば復興に必要な支援金は出すが再建そのものは各領主たる氏族長に任せきりである。妖精達はそんなモルガンの政治体制を快く思っていないが、''厄災を何とかしてくれる存在が事実上彼女しか居ない''ため仕方なく頼っている…というのが目下の現状。
+
モルガンは「ブリテンは救うが妖精は救わない」とあらかじめ宣言しており、その一つとして隷属と運営に必要な人間の数と提供を上級妖精に限定する形で徹底的に管理しており、下級の妖精に宛てがわれることは無い。また、女王暦の始めにモルガンによってブリテンとともに復活した以降の妖精達には『妖精紋様』と呼ばれる令呪が刻みつけられており、妖精領域の拡大という名目で年に一度膨大な魔力の半分を存在税として「献上」しなければならない。なので妖精達はこれを賄えるまでの魔力を1年以内に貯めておかなければならず、できないものはこの時点で即死してしまう。また、度重なる献上に耐えられず働けなくなって逃亡する者もおり、そういった妖精は見つかり次第連行・処刑されてしまう。<br>
 +
ブリテンを脅かす『厄災』についてもモルガン自らが「水鏡」を使って払うこそすれど、その影響で周囲の街や住んでいる妖精と人間達が吹き飛ぶ事になっても知ったことではなく、乞われれば復興に必要な支援金は出すが再建そのものは各領主たる氏族長に任せきりである。妖精達はそんなモルガンの政治体制を快く思っていないが、''厄災を何とかしてくれる存在が事実上彼女しか居ない''ため仕方なく頼っている…というのが目下の現状。
    
=== 地域 ===
 
=== 地域 ===
44行目: 59行目:  
;エディンバラ
 
;エディンバラ
 
:[[ノクナレア]]率いる王の氏族が暮らす女王都市。廃墟となったオークニーを除けば一番真北にあり、気候そのものもあちらの影響を受けているのか気温は比較的低く、外は薄く雪らしきものが積もっている。
 
:[[ノクナレア]]率いる王の氏族が暮らす女王都市。廃墟となったオークニーを除けば一番真北にあり、気候そのものもあちらの影響を受けているのか気温は比較的低く、外は薄く雪らしきものが積もっている。
:妖精暦時代ブリテンに移住し始めた頃は各地を転々としながら暮らす遊牧民族に近い生活をしていたが、トネリコの仲裁により「王の氏族」と認められると、大きな岩山を拠点とし僅か一代で巨大な都市を築き、ノクナレアを頼って流れて来た南部の妖精も積極的に受け入れている。
+
:妖精暦時代、王の氏族はブリテンに移住し始めた頃には各地を転々としながら暮らす遊牧民族に近い生活をしていたが、トネリコの仲裁により「王の氏族」と認められると、大きな岩山を拠点とし僅か一代で巨大な都市を築き、ノクナレアを頼って流れて来た南部の妖精も積極的に受け入れている。
 
: 先代女王マヴの死後1500年間は南の妖精達と同じくモルガンに従っていたが、重度の人間嫌いである次代ノクナレアの誕生後は妖精だけによる妖精國ブリテンを創るべく『反女王派』を掲げ軍事力向上にも力を入れており、彼女によって臣下となった各氏族に加え100年かけて規律と教育を施した[[ピクト人]]と呼ばれる兵士と巨人兵による精鋭部隊が結成されている。
 
: 先代女王マヴの死後1500年間は南の妖精達と同じくモルガンに従っていたが、重度の人間嫌いである次代ノクナレアの誕生後は妖精だけによる妖精國ブリテンを創るべく『反女王派』を掲げ軍事力向上にも力を入れており、彼女によって臣下となった各氏族に加え100年かけて規律と教育を施した[[ピクト人]]と呼ばれる兵士と巨人兵による精鋭部隊が結成されている。
 
:これらの為政も全て'''妖精に限定したもの'''であり、人間に対し尊厳や権利などは一切認められておらず、国家資源として北部平原で栽培している板チョコが直接生えているチョコレート畑へ労働用の奴隷として送られてしまう。
 
:これらの為政も全て'''妖精に限定したもの'''であり、人間に対し尊厳や権利などは一切認められておらず、国家資源として北部平原で栽培している板チョコが直接生えているチョコレート畑へ労働用の奴隷として送られてしまう。
74行目: 89行目:  
:住民のほとんどが鍛治職を得意とする土の氏族と鉄の武器を作る人間で構成されており、現存する中で数少ない人間と妖精の対等と共存を掲げる領地で、掟も職人気質と堅気に準じた組合(ギルド)のそれに近い。
 
:住民のほとんどが鍛治職を得意とする土の氏族と鉄の武器を作る人間で構成されており、現存する中で数少ない人間と妖精の対等と共存を掲げる領地で、掟も職人気質と堅気に準じた組合(ギルド)のそれに近い。
 
: 武器や装飾における品質は妖精國随一であり、グロスターを筆頭に彼方此方から需要がくるが、一方で妖精を傷つける代物でもある為に一度はモルガンに製造禁止令を出されたが、直訴の末に認められた。
 
: 武器や装飾における品質は妖精國随一であり、グロスターを筆頭に彼方此方から需要がくるが、一方で妖精を傷つける代物でもある為に一度はモルガンに製造禁止令を出されたが、直訴の末に認められた。
:かつてはスプリガンとキャップレスが運営する総合デパートがあったが現在は閉店し、代わりに「伯爵」なる人物が運営する店が勢力を伸ばしている。
+
:かつてはスプリガンとキャップレスが運営する総合デパートがあったが現在は閉店し、代わりに「[[スカンジナビア・ペペロンチーノ|伯爵]]」なる人物が運営する店が勢力を伸ばしている。
 
;ロンディニウム
 
;ロンディニウム
 
:[[パーシヴァル]]率いる円卓軍が本拠地としている都市。ノリッジから南西に降りた所にある、汎人類史における首都ロンドンに該当する。
 
:[[パーシヴァル]]率いる円卓軍が本拠地としている都市。ノリッジから南西に降りた所にある、汎人類史における首都ロンドンに該当する。
93行目: 108行目:  
:大小2つの建物で構成されており、大きな方では人間を培養・育成し、小さな方では『外の世界』からやって来た人間達が収容されている。『牧場』と明記されているが、施設内は人間の創造性や独創性を育てるため一般住居の形が取られている。
 
:大小2つの建物で構成されており、大きな方では人間を培養・育成し、小さな方では『外の世界』からやって来た人間達が収容されている。『牧場』と明記されているが、施設内は人間の創造性や独創性を育てるため一般住居の形が取られている。
 
;ウェールズ
 
;ウェールズ
:[[オベロン]]が最初に目覚めて以来、拠点としている森。キャメロットからやや真東の突き当たりにある。
+
:[[オベロン]]が発生して以来、拠点としている森。キャメロットからやや真東の突き当たりにある。
 
:辺り一面赤や金色に紅葉した葉をつけた木々や草が生い茂っている事から「秋の森」とも呼ばれている。
 
:辺り一面赤や金色に紅葉した葉をつけた木々や草が生い茂っている事から「秋の森」とも呼ばれている。
 
:人間の文明が持ち込まれていないありのままの自然の姿を保っており、木に生っている果物1つに至るまで『神秘』が宿っている。
 
:人間の文明が持ち込まれていないありのままの自然の姿を保っており、木に生っている果物1つに至るまで『神秘』が宿っている。
 
:一方で住んでいる妖精達はみな力が弱く人語も話せないため、普通の人はなにを言っているか聞き取れず、彼らの言語を解せるのは森の主たるオベロンだけである。
 
:一方で住んでいる妖精達はみな力が弱く人語も話せないため、普通の人はなにを言っているか聞き取れず、彼らの言語を解せるのは森の主たるオベロンだけである。
 
;コーンウォール
 
;コーンウォール
:カルデア一行が最初に上陸すると同時に[[トリスタン]]と合流した地域。ブリテンの南西端にある。
+
:カルデア一行が最初に上陸すると同時に召喚されていた[[トリスタン]]と合流した地域。ブリテンの南西端にある。
 
:地域一帯が濃霧に覆われており、たとえ人間であっても少しの間滞在しただけで記憶喪失になってしまう危険地域。落ちぶれて都市を追われた妖精や目的を失った下級妖精達が暮らす「名無しの村」と呼ばれる集落があるが、その特性故にモースも多数蔓延っている。
 
:地域一帯が濃霧に覆われており、たとえ人間であっても少しの間滞在しただけで記憶喪失になってしまう危険地域。落ちぶれて都市を追われた妖精や目的を失った下級妖精達が暮らす「名無しの村」と呼ばれる集落があるが、その特性故にモースも多数蔓延っている。
 
:村から少し北の方にはアルトリア・キャスターが流れ着いた「潮騒のティンタジェル」という村があるが、ウッドワス率いる女王軍によって焼き討ちにされたという。
 
:村から少し北の方にはアルトリア・キャスターが流れ着いた「潮騒のティンタジェル」という村があるが、ウッドワス率いる女王軍によって焼き討ちにされたという。
 
;オークニー
 
;オークニー
:雨の氏族が統治していた最果ての都市。同時に最初の予言の子・・・『楽園の妖精』ヴィヴィアンが流れ着いた場所。最北端にある。
+
:雨の氏族が統治していた最果ての都市。同時に最初の『楽園の妖精』ヴィヴィアンが流れ着いた場所。最北端にある。
 
:妖精暦4000年に他の氏族達によって滅ぼされて以降廃墟となっており、空は常に曇り、雨の氏族の悲しみと謝罪の涙が雪となって降り続けているため、一帯が積雪の絶えない寒冷地となっている。
 
:妖精暦4000年に他の氏族達によって滅ぼされて以降廃墟となっており、空は常に曇り、雨の氏族の悲しみと謝罪の涙が雪となって降り続けているため、一帯が積雪の絶えない寒冷地となっている。
 
:現在はロンディニウムに安置された、ブリテン異聞帯には本来いない筈の「神」を現した宗教壁画が描き遺されている。
 
:現在はロンディニウムに安置された、ブリテン異聞帯には本来いない筈の「神」を現した宗教壁画が描き遺されている。
114行目: 129行目:  
:その名の通り水の聖杯とも称される妖精亡主ドラケイが棲んでおり、河を渡ろうとする者達がもっとも欲している宝物の幻像を見せ、川に飛び込んだ所を水中に引きずり込んで殺害してしまう。魅了魔力の強さから妖精でも抗う事は不可能とされる。
 
:その名の通り水の聖杯とも称される妖精亡主ドラケイが棲んでおり、河を渡ろうとする者達がもっとも欲している宝物の幻像を見せ、川に飛び込んだ所を水中に引きずり込んで殺害してしまう。魅了魔力の強さから妖精でも抗う事は不可能とされる。
   −
これらの都市のうち、ノリッジ、ソールズベリー、グロスター、オークニー、オックスフォードには予言にも記されている『巡礼の鐘』と呼ばれる「6翅の亜鈴」が遺した鐘が安置された鐘撞き堂があり、領主はこの鐘の番人も兼任している。そして各地にあるこの場合を訪れては鐘を鳴らす旅の事を『巡礼の旅』と呼び、予言の子はこれを成し遂げる事が役割だという。<br>この他にも持ち主や意図は不明だが、巨大な蜂の巣やサザエ、鳥の巣、じゃがいも状の岩などがあちこちにある。また、どの領主と領地にも属さない、或いは事情によって溢れた妖精達によって構成された小規模の<ruby><rb>森</rb><rt>むら</rt></ruby>が所々に散らばる形で存在している。
+
これらの都市のうち、ノリッジ、ソールズベリー、グロスター、オークニー、オックスフォードには予言にも記されている『巡礼の鐘』と呼ばれる「6翅の亜鈴」が遺した鐘が安置された鐘撞き堂があり、領主はこの鐘の番人も兼任している。そして各地にある鐘の元へ赴きそれを鳴らす旅の事を『巡礼の旅』と呼び、予言の子はこれを成し遂げる事が役割だという。<br>この他にも持ち主や意図は不明だが、巨大な蜂の巣やサザエ、鳥の巣、じゃがいも状の岩などがあちこちにある。また、どの領主と領地にも属さない、或いは事情によって溢れた妖精達によって構成された小規模の<ruby><rb>森</rb><rt>むら</rt></ruby>が所々に散らばる形で存在している。
    
一見すると各都市は発展しているように見えるが、実のところは妖精が本能的にもっている閉鎖的な娯楽価値観<ref group="注">端的に説明すると「今いる街の中でのんびり暮らしている方が楽しいから、外の事など気にしなくてもいい」、「他の街と同じものをわざわざ拵える必要はない」という感覚に近い。</ref>故に、都市の住民による交流はほぼ全くない。地域特色の偏りや物資格差が顕著なのはこれに起因しており、例外は商人や目新しいもの好き、或いは領主の掟に耐えられなかったり反発して逃亡した者、あるいは氏族長同士である。
 
一見すると各都市は発展しているように見えるが、実のところは妖精が本能的にもっている閉鎖的な娯楽価値観<ref group="注">端的に説明すると「今いる街の中でのんびり暮らしている方が楽しいから、外の事など気にしなくてもいい」、「他の街と同じものをわざわざ拵える必要はない」という感覚に近い。</ref>故に、都市の住民による交流はほぼ全くない。地域特色の偏りや物資格差が顕著なのはこれに起因しており、例外は商人や目新しいもの好き、或いは領主の掟に耐えられなかったり反発して逃亡した者、あるいは氏族長同士である。
129行目: 144行目:  
: 汎人類史では文字通り「ブラックドッグ」の部類に入る<ref group="注">実際同名の妖精を[[妖精騎士ガウェイン]]が連れているが、こちらの有り様はむしろ使い魔に近い。</ref>。
 
: 汎人類史では文字通り「ブラックドッグ」の部類に入る<ref group="注">実際同名の妖精を[[妖精騎士ガウェイン]]が連れているが、こちらの有り様はむしろ使い魔に近い。</ref>。
 
: 戦うことが主な目的なため戦闘能力に特化しており、モースに対してもある程度抵抗できる力を有している。
 
: 戦うことが主な目的なため戦闘能力に特化しており、モースに対してもある程度抵抗できる力を有している。
:女王暦の現在は氏族長の命令により全員が菜食主義を義務付けられている。
+
:女王暦の現在は氏族長ウッドワスの命令により全員が菜食主義を義務付けられている。
 
;土の氏族
 
;土の氏族
 
:恰幅のいい体型に、男女問わず髭を生やした妖精。
 
:恰幅のいい体型に、男女問わず髭を生やした妖精。
147行目: 162行目:  
;王の氏族
 
;王の氏族
 
:アルビオンの竜の亡骸を大地として生活していた北の妖精の総称。
 
:アルビオンの竜の亡骸を大地として生活していた北の妖精の総称。
:妖精暦6000年に氏族たち南の妖精と合流してからは「春の戦争」を起こすも、人間を擁していなかったために皆殺しにされる。しかし後にその遺骸から女王マヴが発生し、マヴはアイルランドを作り出して戦力を整え、領地を巡って「夏の戦争」を引き起こしたが、トネリコの仲裁によって仲間と認められ、『雨の氏族』の空席を埋める形で氏族入りを果たした。なので南の妖精とは'''根本から全く違う別の種族'''に値し、ケルヌンノスの呪いによる『罪状』や『罪悪感』も無いので「巡礼の鐘の音」の影響を受けず、従って「楽園の妖精」に対する無意識の嫌悪感や恐れを抱く事も無い。
+
:妖精暦6000年に氏族たち南の妖精と合流してからは「春の戦争」を起こすも、人間を擁していなかったために皆殺しにされる。
 +
:しかし後にその遺骸から女王マヴが発生し、彼女はアイルランドを作り出して戦力を整え、領地を巡って「夏の戦争」を引き起こした。だがトネリコの仲裁によって妖精の仲間と認められ、『雨の氏族』の空席を埋める形で氏族入りを果たした。
 +
:なので南の妖精とは'''根本から全く違う別の種族'''に値し、ケルヌンノスの呪いによる『罪状』や『罪悪感』も無いので「巡礼の鐘の音」を耳にしても何ともなく、「楽園の妖精」に対する無意識の嫌悪感や恐れを抱く事も無い。
 
:女王が『妖精領域』である自らの血液を与えれば南の妖精であろうと仲間になれるため、女王暦時点では色々な氏族が混合している状態だが、ノクナレアが兵士として引き連れていた者たちは汎人類史ではピクト人や巨人といった部類がオリジナルに該当すると思われる。
 
:女王が『妖精領域』である自らの血液を与えれば南の妖精であろうと仲間になれるため、女王暦時点では色々な氏族が混合している状態だが、ノクナレアが兵士として引き連れていた者たちは汎人類史ではピクト人や巨人といった部類がオリジナルに該当すると思われる。
 
:主な目的は不明だが、君主たる先代女王マヴと次代のノクナレアに仕え、その命令に服従し付き従う事こそがそれに当たると云える。
 
:主な目的は不明だが、君主たる先代女王マヴと次代のノクナレアに仕え、その命令に服従し付き従う事こそがそれに当たると云える。
   −
他にもウェールズの森に住む芋虫型や典型的な妖精像を反映した小人型など、6氏族の見た目に当てはまらない妖精や、ガレスやノクナレア、レッドラ・ビットや[[カレン・C・オルテンシア|チョコの妖精]]のように汎人類史のサーヴァントにそっくりな外見の妖精も数多く生活している。
+
他にもウェールズの森に住む芋虫型や典型的な妖精像を反映した小人型など、6氏族の見た目に当てはまらない妖精や、ガレスやノクナレア、レッドラ・ビットや[[カレン・C・オルテンシア|チョコの妖精]]のように汎人類史の[[サーヴァント]]にそっくりな外見の妖精も数多く生活している。<br>
 +
汎人類史からの<ruby><rb>取り替え</rb><rt>チェンジリング</rt></ruby>によって迷い込む妖精もいるらしく、事実ロブとワグは「漂流物」としてこの地にやってきた妖精である。
    
これらの妖精には共通して「生まれた目的」と「役割」が存在し、それぞれが『名前』と密接に繋がっている。この目的を失うと存在が維持できなくなりやがては消失≒死亡してしまうが、同時に妖精國ブリテンの何処かで新しい妖精が “次代” として発生する。<br>妖精は基本的に生殖の必要がなく単体で完結するが、極たまにこの目的から枝分かれした新しい「生まれた目的」をもって発生した次代、または生まれた目的が叶わないまま消失した場合、その目的を代わりに果たすために発生した次代も存在する。この場合元の目的の主たる妖精≒先代と次代は汎人類史でいう親子の関係にあたる。
 
これらの妖精には共通して「生まれた目的」と「役割」が存在し、それぞれが『名前』と密接に繋がっている。この目的を失うと存在が維持できなくなりやがては消失≒死亡してしまうが、同時に妖精國ブリテンの何処かで新しい妖精が “次代” として発生する。<br>妖精は基本的に生殖の必要がなく単体で完結するが、極たまにこの目的から枝分かれした新しい「生まれた目的」をもって発生した次代、または生まれた目的が叶わないまま消失した場合、その目的を代わりに果たすために発生した次代も存在する。この場合元の目的の主たる妖精≒先代と次代は汎人類史でいう親子の関係にあたる。
168行目: 186行目:  
主要都市にはレンガやコンクリート造りの建造物が立ち並び、宿屋や飲食店、床屋などの店も見られ、妖精の暮らしは一見すると汎人類史の人間とほぼ変わらない生活を送っているが、これらは全て妖精が'''『人間の技術を模倣して創り出したもの』'''。<br>これは人間と親密に接していくうちに『新しいものを自分で考えて発明する』能力や、それによって生み出された産物を「自分達にはない面白くて素敵なもの」と看做して真似するようになったためである。<br>とは言えど、「魔力」という神秘を持つ妖精達にとってこれらの技巧は指先一つで簡単にコピーと量産が可能な上に、高度な頭脳と長い寿命を持つがため自分達で工夫したり手を加えるといった成長も必要なく、目新しいものはひたすら模倣し飽きたら捨ててしまうを繰り返している。<br>その一方で、モルガンの進言から妖精の生態系を剪定しかねない技術の模倣は禁止されており、大きな罰則こそ無いものの動物を労働手段として使う事も禁じられている。特に乗り物等の系統については馬車や荷車といった最低限の部類しか無く、主な移動手段はレッドラ・ビットやクントリーのような妖精馬が担っている。
 
主要都市にはレンガやコンクリート造りの建造物が立ち並び、宿屋や飲食店、床屋などの店も見られ、妖精の暮らしは一見すると汎人類史の人間とほぼ変わらない生活を送っているが、これらは全て妖精が'''『人間の技術を模倣して創り出したもの』'''。<br>これは人間と親密に接していくうちに『新しいものを自分で考えて発明する』能力や、それによって生み出された産物を「自分達にはない面白くて素敵なもの」と看做して真似するようになったためである。<br>とは言えど、「魔力」という神秘を持つ妖精達にとってこれらの技巧は指先一つで簡単にコピーと量産が可能な上に、高度な頭脳と長い寿命を持つがため自分達で工夫したり手を加えるといった成長も必要なく、目新しいものはひたすら模倣し飽きたら捨ててしまうを繰り返している。<br>その一方で、モルガンの進言から妖精の生態系を剪定しかねない技術の模倣は禁止されており、大きな罰則こそ無いものの動物を労働手段として使う事も禁じられている。特に乗り物等の系統については馬車や荷車といった最低限の部類しか無く、主な移動手段はレッドラ・ビットやクントリーのような妖精馬が担っている。
   −
また、スプリガンが「土の氏族」に鉄製品の製造技術を伝えて以降は、その鉄が妖精にとって猛毒になると分かると同じく鉄を無理なく扱える人間達を中心に、鎧や兜といった武具や槍に剣といった武器が造られ広まっていく。
+
また、スプリガンが「土の氏族」に鉄製品の製造技術を伝えて以降は、その鉄で出来た武器が妖精にとって猛毒になると分かると同じく鉄を無理なく扱える人間達を中心に、鎧や兜といった武具や槍に剣といった武器が造られ広まっていく。
    
=== 文化 ===
 
=== 文化 ===
174行目: 192行目:     
そもそも妖精は飲食や睡眠といった基本的な生活機能が元から必要なく<ref group="注">その為同じく飲食や睡眠を必要としないサーヴァントは『妖精』と見なされるため、ある程度誤魔化しが可能。</ref>、これらは全て人間の特性が楽しくて面白いから真似しているだけの所謂「ごっこ遊びの延長線」、並びにモルガンによる「魔力の献上」に備え必要な分の魔力を補うための供給補助の一端にあたる。<br>
 
そもそも妖精は飲食や睡眠といった基本的な生活機能が元から必要なく<ref group="注">その為同じく飲食や睡眠を必要としないサーヴァントは『妖精』と見なされるため、ある程度誤魔化しが可能。</ref>、これらは全て人間の特性が楽しくて面白いから真似しているだけの所謂「ごっこ遊びの延長線」、並びにモルガンによる「魔力の献上」に備え必要な分の魔力を補うための供給補助の一端にあたる。<br>
また、いくらでも魔力で模倣すれば同じものを生み出せるという特性故に、中身や価値観を全く重要視しておらず、食物のパン1個にしても、それを作り出す為に必要な『調理』という工程を積極的に学ぼうと考える「物好きな妖精」を除けば、所詮は見た目がそっくりなだけで中身はスカスカな代物でしかない。
+
また、いくらでも魔力で模倣すれば同じものを生み出せるという特性故に、中身や価値観を全く重要視しておらず、食物のパン1個にしても、それを作り出す為に必要な『調理』という工程を積極的に学ぼうと考える「物好きな妖精」を除けば、所詮は見た目がそっくりなだけで中身はスカスカなガワだけの代物でしかない。
    
カルデアが到着した時点では女王暦2001年に鏡の氏族が遺した18の節から成る予言<ref group="注">ただし一般に伝わっているのは不吉な用語が多い4節を'''意図的に省いた'''14節のみ。</ref>に記された'''「妖精國ブリテンを救う真の王たる『予言の子』」'''の存在が目下の注目の的となっているが、大半は「巷で流行っているから信じている」のであって、本当に信じているのは女王モルガンを脅かす者として敵視する、或いは妖精國ブリテンを変えてくれる者として期待している氏族長と、呪いから救われたいと願っているごく少数派の下級妖精のみである。妖精暦にブリテンを救った「救世主トネリコ」の物語も同列で語り継がれてはいるが、もう覚えている妖精は少ないという。
 
カルデアが到着した時点では女王暦2001年に鏡の氏族が遺した18の節から成る予言<ref group="注">ただし一般に伝わっているのは不吉な用語が多い4節を'''意図的に省いた'''14節のみ。</ref>に記された'''「妖精國ブリテンを救う真の王たる『予言の子』」'''の存在が目下の注目の的となっているが、大半は「巷で流行っているから信じている」のであって、本当に信じているのは女王モルガンを脅かす者として敵視する、或いは妖精國ブリテンを変えてくれる者として期待している氏族長と、呪いから救われたいと願っているごく少数派の下級妖精のみである。妖精暦にブリテンを救った「救世主トネリコ」の物語も同列で語り継がれてはいるが、もう覚えている妖精は少ないという。
184行目: 202行目:  
:この異聞帯を担当する[[クリプター]]。
 
:この異聞帯を担当する[[クリプター]]。
 
;[[モルガン (Grand Order)|モルガン]]
 
;[[モルガン (Grand Order)|モルガン]]
:[[異聞帯の王]]。本来はブリテンを救う『楽園の妖精』だったが、汎人類史側のモルガンによる記録上書きと、度重なる妖精の反乱と裏切りによる挫折で心が砕かれた結果、妖精國ブリテンを圧倒的な力で支配する冷酷非情な女王に「変質」してしまった。
+
:[[異聞帯の王]]。本来はブリテンを救う『楽園の妖精』でありかつては[[救世主トネリコ]]を名乗っていたが、汎人類史側のモルガンによる情報の譲渡と、度重なる妖精の反乱と裏切りによる挫折で心が砕かれた結果、妖精國ブリテンを圧倒的な力で支配する冷酷非情な女王に「変質」してしまった。
 
;[[妖精騎士ガウェイン]]、[[妖精騎士トリスタン]]、[[妖精騎士ランスロット]]
 
;[[妖精騎士ガウェイン]]、[[妖精騎士トリスタン]]、[[妖精騎士ランスロット]]
 
:モルガンの配下。異聞帯に住む妖精に汎人類史の[[円卓の騎士]]の名前を<ruby><rb>着名</rb><rt>ギフト</rt></ruby>する事で誕生した。
 
:モルガンの配下。異聞帯に住む妖精に汎人類史の[[円卓の騎士]]の名前を<ruby><rb>着名</rb><rt>ギフト</rt></ruby>する事で誕生した。
190行目: 208行目:  
;[[アルトリア・キャスター]]
 
;[[アルトリア・キャスター]]
 
:妖精國ブリテンを救う「予言の子」にして次代の『楽園の妖精』。
 
:妖精國ブリテンを救う「予言の子」にして次代の『楽園の妖精』。
;[[ガレス]]
+
;[[ガレス #ガレス〔ブリテン異聞帯〕|ガレス]]
 
:カルデア一行が道中で出会った妖精。
 
:カルデア一行が道中で出会った妖精。
;[[パーシヴァル]]
+
;[[パーシヴァル #パーシヴァル〔ブリテン異聞帯〕|パーシヴァル]]
 
:ロンディニウムで円卓軍を統括する人間の騎士。
 
:ロンディニウムで円卓軍を統括する人間の騎士。
 
;[[ウッドワス]]
 
;[[ウッドワス]]
227行目: 245行目:  
:名無しの村に住む妖精。
 
:名無しの村に住む妖精。
 
;[[エクター]]
 
;[[エクター]]
:ティンタジェルで鍛冶屋を営む土の氏族。
+
:ティンタジェルで鍛冶屋を営んでいた土の氏族。
 
;[[アドニス]]
 
;[[アドニス]]
 
:妖精騎士ガウェインの元で暮らす人間の少年。
 
:妖精騎士ガウェインの元で暮らす人間の少年。
233行目: 251行目:  
==メモ==
 
==メモ==
 
*「第三者の介入により大きく歪められた国が舞台」であり、尚且つその国を創ったのが「1人の『切実な願望』により変質してしまった統治者」によるものであるといった根幹は、第六特異点『[[神聖円卓領域 キャメロット]]』とほぼ似た道を辿っているといえる。
 
*「第三者の介入により大きく歪められた国が舞台」であり、尚且つその国を創ったのが「1人の『切実な願望』により変質してしまった統治者」によるものであるといった根幹は、第六特異点『[[神聖円卓領域 キャメロット]]』とほぼ似た道を辿っているといえる。
*本シナリオは序盤こそ御伽噺や童話を思わせる物語のような雰囲気のまま進められていくが<ref group="注">一方で宴の場でも武器を手放そうとしなかった[[トリスタン]]の姿、[[ヴォーティガーン|元凶の正体]]が暗示されるなどの不穏な描写も少なくなかった。</ref>、後編に行くにつれて妖精國ブリテンの過去と女王モルガンの正体、ブリテンに蔓延する呪いと『厄災』の原因、そして何よりこの世界における妖精の本当の姿といった'''裏側の全貌'''が次々と明かされる。だが、これら全体像の描写はプレイヤーしか知る術はなく、主人公とカルデア一行に対しては終盤、マーリンより予言の詩についての真相=ブリテンに蔓延する呪いと『厄災』の原因が伝えられること以外はその大半が伏せられたまま、双方の認識に乖離が生じた状態で収拾を迎える事になる<ref group="注">プレイヤー側からすればシナリオとシステムの進行上どうしても必須だったからというメタ視点ならではの理由であると思われるが、それに対しカルデア一行側は、人理定理のためとはいえ『異聞帯をなんの罪も無い住民ごと消滅させる』という残酷な苦渋の選択を続けている以上'''「その決断が今回は一番正しかった」'''と思わせたくなかったという不文律と、「その在り方がたとえ歪んでいても『美しいままの妖精國ブリテン』という世界だけを目に焼き付けて終わらせて欲しかった」という[[オベロン|真の黒幕]]による裏からの配慮があり、アルトリア・キャスターもそれを承知してあえて黙っていた可能性が考案されている。<br>もっともシナリオ分岐で登場する選択用の台詞によっては、[[主人公 (Grand Order)|主人公]]のみ異聞帯における妖精の実態に薄々勘づいているという可能性が示唆されている。</ref>。
+
*本シナリオは序盤こそ御伽噺や童話を思わせる物語のような雰囲気のまま進められていくが<ref group="注">一方で宴の場でも武器を手放そうとしなかった[[トリスタン]]の姿、[[ヴォーティガーン|元凶の正体]]が暗示されるなどの不穏な描写も少なくなかった。</ref>、後編に行くにつれて妖精國ブリテンの過去と女王モルガンの正体、ブリテンに蔓延する呪いと『厄災』の原因、そして何よりこの世界における妖精の本当の姿といった'''裏側の全貌'''が次々と明かされる。<br>だがこれら全体像の描写はプレイヤーしか知る術はなく、主人公とカルデア一行に対しては終盤、[[マーリン (Grand Order)|マーリン]]より予言の詩についての真相=ブリテンに蔓延する呪いと『厄災』の原因が伝えられること以外はその大半が伏せられたまま、双方の認識に乖離が生じた状態で収拾を迎える事になる<ref group="注">プレイヤー側からすればシナリオとシステムの進行上どうしても必須だったからというメタ視点ならではの理由であると思われるが、それに対しカルデア一行側は、人理定理のためとはいえ『異聞帯をなんの罪も無い住民ごと消滅させる』という残酷な苦渋の選択を続けている以上'''「その決断が今回は一番正しかった」'''と思わせたくなかったという不文律と、「その在り方がたとえ歪んでいても『美しいままの妖精國ブリテン』という世界だけを目に焼き付けて終わらせて欲しかった」という[[オベロン|真の黒幕]]による裏からの配慮があり、アルトリア・キャスターもそれを承知してあえて黙っていた可能性が考案されている。<br>もっともシナリオ分岐で登場する選択用の台詞によっては、[[主人公 (Grand Order)|主人公]]のみ異聞帯における妖精の実態に薄々勘づいているという可能性が示唆されている。</ref>。
*地球崩落阻止と並んで神造兵装の獲得がカルデアの目的であったが、神造兵装は使い手とセットのもので、当初の目的通りモルガンのロンゴミニアドを鹵獲もしくは参考に神造兵装を作ったとしても資格が無い限り使用することができない。カルデアが神造兵装を得るには白紙化した汎人類史に欠けた事実を取り戻す必要があり、その事実こそが『白紙にされていた聖剣の概念』であることが、終盤マーリンから明かされる。
+
*地球崩落阻止と並んで神造兵装の獲得がカルデアの目的であったが、神造兵装は使い手とセットのもので、当初の目的通りモルガンのロンゴミニアドを鹵獲もしくは参考に神造兵装を作ったとしても資格が無い限り使用することができない。<br>カルデアが神造兵装を得るには白紙化した汎人類史に欠けた事実を取り戻す必要があり、その事実こそが『白紙にされていた聖剣の概念』であることが、終盤マーリンから明かされている。
    
==脚注==
 
==脚注==
248行目: 266行目:  
*[[妖精]]
 
*[[妖精]]
   −
{{DEFAULTSORT:ようせいえんたくりょういき あうぁろん・る・ふぇ}}
+
{{DEFAULTSORT:ようせいえんたくりよういき あうあろん る ふえ}}
    
[[Category:小辞典]]
 
[[Category:小辞典]]
6,188

回編集