;「諦める? 何を言うんだ。人間は始めから諦めている。<br />全能ではないのだから。<br />我々は諦めながらでしか生きられない生物だ。<br />そんな事を、まさか、今さら君が?」<br />「それは諦めではない。結論だ」<br />「ここに一枚の絵があるとする。私は欠片だ」<br />「パズルの欠片。絵に開いた穴。いまだ埋められない空白」<br />「<ruby><rb>余白</rb><rt>わたし</rt></ruby>があるうちは、絵は完成しない。<br />だから私は欠片であり続けた。<br />完成してしまった絵は、それで終わりだからね」<br />「無論、人生は完成する事が目的だ。<br />どのような生命も、どのような文明も、いつかは終わる。<br />我々はその終わりを目指している。今も、昔も」<br />「だが、いま君が描くその絵は―――」<br />「<ruby><rb>完成</rb><rt>おわり</rt></ruby>に足る、<ruby><rb>美しい紋様</rb><rt>アートグラフ</rt></ruby>と言えるのかね?」 | ;「諦める? 何を言うんだ。人間は始めから諦めている。<br />全能ではないのだから。<br />我々は諦めながらでしか生きられない生物だ。<br />そんな事を、まさか、今さら君が?」<br />「それは諦めではない。結論だ」<br />「ここに一枚の絵があるとする。私は欠片だ」<br />「パズルの欠片。絵に開いた穴。いまだ埋められない空白」<br />「<ruby><rb>余白</rb><rt>わたし</rt></ruby>があるうちは、絵は完成しない。<br />だから私は欠片であり続けた。<br />完成してしまった絵は、それで終わりだからね」<br />「無論、人生は完成する事が目的だ。<br />どのような生命も、どのような文明も、いつかは終わる。<br />我々はその終わりを目指している。今も、昔も」<br />「だが、いま君が描くその絵は―――」<br />「<ruby><rb>完成</rb><rt>おわり</rt></ruby>に足る、<ruby><rb>美しい紋様</rb><rt>アートグラフ</rt></ruby>と言えるのかね?」 |