;「あたしにはもう綴りたい話なんてなかったし、新しく何かを綴ろうって気持ちもなかった。」<br>「あの人の魂が安らかであれ、と願ってたけど、あたしに出来る事は、もう何もなくて。」<br>「だったら『枕草子』も、『清少納言』の名前も、」<br>「あたしの全部を捧げてしまえば、少しは足しになるのかなって思ったから――」<br>「そこに全部、置いてきちゃったのさ。」<br>「それで、全部おしまい。」<br>「今ここにいるあたしは、ただの出涸らしで。」<br>「悲しいとか、誰かを恨んでるとかもなくなって。」<br>「今でも定子様が大好きなだけの―――」<br>「えせもののなぎこなのさ」 | ;「あたしにはもう綴りたい話なんてなかったし、新しく何かを綴ろうって気持ちもなかった。」<br>「あの人の魂が安らかであれ、と願ってたけど、あたしに出来る事は、もう何もなくて。」<br>「だったら『枕草子』も、『清少納言』の名前も、」<br>「あたしの全部を捧げてしまえば、少しは足しになるのかなって思ったから――」<br>「そこに全部、置いてきちゃったのさ。」<br>「それで、全部おしまい。」<br>「今ここにいるあたしは、ただの出涸らしで。」<br>「悲しいとか、誰かを恨んでるとかもなくなって。」<br>「今でも定子様が大好きなだけの―――」<br>「えせもののなぎこなのさ」 |