聖杯の泥
概要編集
聖杯をその力ごと汚染し、70年経過しようとも新たな聖杯を汚染する力を保ち続ける『人の悪性』[出 1]。
泥の形をもった純粋かつ圧倒的な呪いであり、泥に触れれば皆狂気に囚われ、時には肉体ごと呑み込まれて消滅してしまう[出 2]。また、魂をも汚染してしまう性質を持つため、サーヴァントを触れただけで“黒化”という悪しき状態に反転させる[出 3]。真っ当な英霊では呪いに耐性がないため、激痛と共に霊基が蝕まれてしまい、反英雄は「根が近い」ため強い痛みはないものの、最終的に呑まれてしまう。ギルガメッシュでも手こずると認めていたことから、その危険性が伺い知れる。
“黒化”したサーヴァントは聖杯の力で受肉するため、より現世との結び付きが強い存在へと変化し、物理的な干渉力は増大するが、霊体化ができなくなる。魔力消費についての自制心がなくなるため、戦闘能力は飛躍的に増大し、さながら暴走機関車とも言うべき勢いを持つ。当然ながら暴走状態にあるため細かい制御は不可能だが、破壊力は増している[出 3]。
それに耐えられたのは、圧倒的なまでの魂の輝きとこの世全てを背負った器の大きさを有しているギルガメッシュと、泥を浴びたギルガメッシュを通じて失われた心臓の代用とした言峰綺礼、己の精神に支配魔術をかけたことに加えて元から壊れていたバズディロット・コーデリオンである。
汚染された聖杯の影響編集
第三次聖杯戦争でアインツベルンに召喚されたアンリマユが原因で大聖杯自体が汚染し、本質が決定的に歪んでしまった。具体的に述べれば、万能の願望器の機能はそのままであるものの、叶え方に果てしない“悪意”が加わり、“願いを恣意的に捻じ曲げて解釈する”というフィクションにおける悪魔の手段と化してしまったが、この聖杯をそうさせてしまったのは、汚染源であるアンリマユを生み出した人類の悪意に他ならない[出 4]。
聖杯が歪み果てた結果、願望は常に悪い方向へと解釈され、常に破壊と災厄をもたらす形でのみ実現され、解放されると汚染された大聖杯は聖杯の泥を垂れ流し、呪うべき人類すべてが滅びるまで悪意を振りまき続ける。一方で無色である聖杯の中身が黒に染まったことで、“世間から悪と定義されながら英雄として認められる者”、反英雄の存在が認められ、彼らも英霊として召喚されることができた[出 4]。
第四次聖杯戦争において、破壊された聖杯の欠片が間桐桜の体内に移植されたが、その聖杯はすでに汚染されていたために欠片を宿した彼女もまた影響を受けてしまい、HFルートにおいて“黒化”してしまった[出 4]。
ケイオスタイド編集
『Fate/Grand Order』で登場するティアマトが持つ真なる権能。生命の海。原初の生命。混沌の海。侵食海洋。
魔術世界においては聖杯の泥とよばれるものだが、ケイオスタイドという名称は魔術王が名付けており[出 5]、後にカルデアもこれに倣っている[出 6]。
生命を生み出す海そのものであるティアマトは地球創世記の真エーテルを循環させている為、この海の中では魔力は無限に供給される。ティアマトはこの黒い生命の海を用いて自分の霊基を作り替え、頭脳体に当たる通常の霊基状態(ファム・ファタール)から、全長60メートルを超す竜体に成長した。黒く染まった海はティアマトの権能そのものであり、黒泥に囚われ海中に沈んだ者は侵食され、ティアマトが持つ権能を細胞に複写されて眷属と化してしまう。たとえ脱出したとしても、一度泥に取り込まれた時点で強制的にティアマトと塩基レベルで細胞強制(アミノギアス)され、自動的に人類の敵になってしまう。これはサーヴァントでも同様であり、霊基汚染によって黒化してしまう。泥に呑まれたものは権能である自己改造、生態変化、生態融合、個体増殖といったスキルがランダムに付加され、牛若丸の場合は「個体増殖」が付加された[出 7]。
ケイオスタイドによる大地の侵食は海上でしか歩けないティアマトの通路を拓く役割も兼ねている。その速度も非常に速く、海辺の崖の上に築かれた建造物が、平常な状態から僅か三時間で完全に水没するほど。この黒い海を完全に焼き消せる宝具があるとしたら、この時代の魔力すべてを集めた宝具『誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの』しかない[出 7]。対処法としては泥の接触を避けるしかない。が、ティアマトへ戦いを挑む場合は必然的に黒い海水の上で戦闘することになるため、触れる面積を最小限にして足に魔力障壁を展開するといった対処法をとることになるが、それでもダメージを負うのは避けられない。
災厄の泥(仮)編集
『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』で登場する「ピトス」から漏れだしてくる黒色の泥。
決して無限ではないが、地球全てを覆い尽くすほどの量があり、泥からは黒化した英霊が無数に湧き出してくる。
サーヴァントカードが実体化した存在が全てオルタ化していたのもこれが理由と思われる。ギルガメッシュのカードが実体化する際にもこの泥と同じと思しき物が湧いてきており、子ギル曰く「触れると多分死ぬ」とのこと。
その正体は、ピトスが本来持つ機能「世界の可能性の具現」があまりにも長期間使用されなかったため腐れ落ちた「世界の可能性」の成れの果て。
六千年間解放されずに溜まりに溜まった可能性は既に「この世界そのもの」よりも重くなってしまっており、上記のように地球全てを塗りつぶして余りあるほど。
人物編集
人間編集
- 衛宮切嗣
- 第四次聖杯戦争で聖杯の泥に触れたが、狂気に囚われる事はなかった。ただし肉体は呪いに蝕まれており、五年後に息を引き取った。
- 言峰綺礼
- 第四次聖杯戦争でギルガメッシュを通して聖杯の泥を浴びたことにより、泥が切嗣に破壊された心臓の代わりとなって蘇生した。
- 衛宮士郎
- 第五次聖杯戦争で聖杯の泥に接触したが、『全て遠き理想郷』を投影したことで耐えきった。
- 間桐桜
- 第五次聖杯戦争に参加したマスター。HFルートで自分がバケモノであると受け入れて適合して黒化した。
- バズディロット・コーデリオン
- 偽りの聖杯戦争で参加したマスター。己の精神に支配魔術をかけたことと、その精神は元から壊れていたために聖杯の泥に耐えきった。
- 同時にそれはこの男があまりにも危険な存在である事の証明でもある。
- 偽総統
- 「人造の神(ネオ・フューラー)」を召喚するための生贄として、聖杯の泥に飲まれて消滅。
- リヨぐだ子
- うどん粉の生地と聖杯の泥を練り合わせてサーヴァントを産み出す。
- なお本人は腰あたりまで泥に漬かっていたが平然としており特に変質は見られない。
サーヴァント編集
- アンリマユ
- 冬木の聖杯が汚染され、内包するモノが変わり果てた原因。
- ギルガメッシュ
- 第四次聖杯戦争で聖杯の泥を浴びたが、自身の器と魂だけで汚染されることなく耐えきり、その際に受肉した。
- これにより以降のギルガメッシュは、魔力を消費することなく現界を維持している。
- 『絶対魔獣戦線 バビロニア』では生前のギルガメッシュは「黒化の泥」という言葉から「見た覚えはないが、不愉快極まる単語」と述べている[出 7]。
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕
- 第五次聖杯戦争でセイバーとして召喚されたアルトリア・ペンドラゴンが、HFルートで聖杯の泥に触れて汚染された姿。
- アルトリア・ペンドラゴン〔サンタオルタ〕
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕がサンタクロースを演じている姿。
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕 (ライダー)
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕が水着を着たメイドになった姿。
- アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕 (ランサー)
- 肉体と精神が完全な聖槍の女神へと転じる直前に、何処かで縁を得たと思わしき聖杯の呪いを利用して『嵐の王』として黒き暴虐であることを強く定義したもの[出 8]。
- アルケイデス
- 偽りの聖杯戦争でアーチャーとして召喚されたヘラクレスが三画の令呪に加え、聖杯の泥、魔力結晶による尋常ではない魔力、東方の呪術によって変質した姿。
- ヘラクレスは第五次聖杯戦争でバーサーカーとして召喚された上にHFルートで聖杯の泥に触れても高潔な精神は失われなかったが、このアルケイデスは打って変わって外道と成り果ててしまった。
- 黒聖杯
- 『この世全ての悪』によって汚染された黒い聖杯。
- 正史における第四次聖杯戦争とは異なる物語を描いた『Fate/Accel Zero Order』にて登場。
- 牛若丸 (ケイオスタイド)
- 『Fate/Grand Order』第七特異点『絶対魔獣戦線 バビロニア』でケイオスタイドに沈められ、ティアマトの眷属に変生させられてしまった。
- その際にスキル「個体増殖」が付加されており、劇中ではこれによるおぞましい効果を目の当たりにする事になる。
- 人間性も人間を斬り殺す残虐な性格へと変化しており、同時に内にあった全ての人間への怒りが表面化している[出 6]。
- 武蔵坊弁慶 (ケイオスタイド)
- 『Fate/Grand Order』期間限定イベント『レディ・ライネスの事件簿』で再現された第七特異点で登場した弁慶。
- 上記の牛若丸のポジションが武蔵坊弁慶になったもので、こちらもスキル「個体増殖」が付加されている。
- 牛若丸ほどには人間性は歪んではおらず、ラフムを「美しい」と称して他の全員をケイオスタイドに引き込もうとする以外は人当たりもそこそこ良い。
- マンガで分かるライダー、マンガで分かるアサシン、ポール・バニヤン
- 主人公 (マンガで分かる!FGO)が聖杯の泥とうどん粉を練り合わせて作ったサーヴァントの素から誕生した謎のサーヴァントたち。
- 明智光秀
- 『Fate/Grand Order』イベント『ぐだぐだ帝都聖杯奇譚』にて、溜め込んだ霊基と聖杯の泥を浴びる事で「第六天魔王・明智光秀」となり神霊クラスの存在として受肉しかけた。
- テュフォン・エフェメロス
- 『Fate/Grand Order』のイベント『聖杯戦線 ~白天の城、黒夜の城~』における黒幕。
- ケルベロスやヒュドラといった、ギリシャ神話における怪物たちの祖である太祖竜・テュフォンの霊基を被っていたためか、ケイオスタイドと似た動的生命の原始スープを行使していた。
その他編集
- ラフム
- 『絶対魔獣戦線 バビロニア』でケイオスタイドから生まれた「新しい人類」。
言及作品編集
メモ編集
- 『マンガで分かる!Fate/Grand Order』ではリヨぐだ子がうどん生地を触媒にして聖杯の泥からうどんサーヴァントの幼生を生み出している。この時、うどん生地に聖杯の泥を練り込むために全裸で泥に浸かっていたがまるで平然としていた。……ギャグ作品なので深く考えてはいけない。
- 『Fate/strange Fake』でのエルキドゥの見立てでは、この「泥」と、Fakeで召喚されている「病」がまかり間違って融合しようものなら、地球規模での危機になるとのこと[出 9]。汚染度は高いが広がりにくい「泥」と、爆発的感染力を持つが指向性を持たない「病」との組み合わせではむべなるかな。
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ↑ 『Fate/strange Fake』第3巻 p.222。
- ↑ 『Fate/strange Fake』第3巻 p.223。
- ↑ 3.0 3.1 「サーヴァントの黒化」『Fate/complete material Ⅲ world material.』p.38。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 「“この世全ての悪”による聖杯の歪み」『Fate/complete material Ⅲ world material.』p.10。
- ↑ 『絶対魔獣戦線 バビロニア』第9節「魔獣母神」。
- ↑ 6.0 6.1 『絶対魔獣戦線 バビロニア』第19節「絶対魔獣戦線メソポタミア(Ⅰ)」。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 『絶対魔獣戦線 バビロニア』第18節「目覚め」。
- ↑ 「アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕」『Fate/Grand Order materialⅢ』p.45。
- ↑ 『Fate/strange Fake』第3巻 p.218。