概要
「魔術」とは異なる神秘。魔術師達が目指す最終到達地点である「根源の渦」から引き出された力の発現。
魔術師たちの最終目的であり、実現し修得したものを羨望と畏怖を込めて「魔法使い」と呼称する。
魔術では到達できない神秘、現在の時代の文明の力では、いかに資金や時間を注ぎ込もうとも絶対に実現不可能な「結果」をもたらすものを指して魔法と呼ぶ。
対して魔術は一見有り得ない奇跡でも、結果だけなら他の方法でも実現できる。例えば魔術を用いて何もない虚空に火炎を出現させ、敵を攻撃して燃やすことは有り得ない奇跡に見えるが、敵が燃えるという結果のみを問うなら、火打ち石でもマッチでもライターでも火炎放射器でも代用が効く。
魔術では再現できない直死の魔眼も、結果だけでいえばいずれ来る「死」をその場で発現させているだけである。
人類が未熟な時代には数多くの魔法があったが、それらは文明の発達にともなって、殆どが魔術へと格下げされた。
現代においてなお魔術協会が魔法と認定している大儀礼は5つで、使い手は4人とも5人ともいわれている。その内容はたとえ協会の魔術師であろうと末端の人物や、そもそも協会に属してさえいない部外者には知らされていない。中でも第三魔法は協会でも秘密にされていた禁忌中の禁忌。
魔法は根源の渦に直接つながるものである。故に、根源の渦に到達すれば魔法を得られるし、逆に魔法を開発できれば根源の渦に到達することができる。そのため、「根源の渦への到達」と「魔法」はしばしば混同・同一視されている。とはいえ、魔術師たちの本来の目的は「根源の渦への到達」であり、厳密には魔法はそのための手段として得たもの(第二、第三、第四魔法)と、到達を達成したことで結果的に得たもの(第一、第五魔法)とに二分できる。
また、魔法を得られるのは根源に最初に到達した者に限られ、同じ理論・方法で根源に到達しても2番手以降の者は魔法を得ることはできない。結果的に、研究が進めば進むほど、魔法を得られる手段は減っていってしまう。というか5番目の魔法で打ち止めと看做されており、以降の魔術師たちは魔法抜きで根源にいたる方法を研究しているそうである。
魔法は人類と世界にとって異物であり、魔法と魔法使いは2つの抑止力によって排斥される。このことも魔術師が根源に到達するための難易度を引き上げている。
魔法の種類と魔法使い
第一魔法『無の否定』
- 使い手
- 不明。AD(西暦)前夜に誕生。既に世界から消滅。ただしその痕跡はまだ生きているため存命中とカウントされることもある。
- 時計塔のロードの一角、最強の「貴い魔術回路(ブルーブラッド)」を擁するバルトメロイが、他のロードすら見下す中、唯一敬意を払う対象。
- 内容
- 何もないところから何かを生み出すとされている。等価交換を無視できる
- 人工エーテルを作り出したと言われる。すべての魔術の祖。神代の終わりで消えりはずの神秘を現代でも使えるようにした
- 関連
- 久遠寺有珠の用いるプロイの魔術は「第一」に関連するとされる。
- エーテル塊はある意味で無そのものであり、「そも第一魔法の――」と関連を匂わされている[出 1]。
- 死徒二十七祖第十一位スタンローブ・カルハインの異名の一つが「第一の亡霊(スタンティア)」。
- 『魔法使いの夜』では「はじめの一つは全てを変えた。」と称される。
第二魔法『並行世界の運営』
- 使い手
- キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ
- 内容
- 多世界解釈――ある時の選択でAではなくBを選んでいたら、世界は別の道筋を歩む。そういった、数限りなく存在する平行世界(パラレルワールド)を行き来するというもの。
- ただし、並行世界の「移動」ではなく「運営」であるため、応用も含めて並行世界に関係するあらゆる事象を引き起こせると思われる。
- 現在のところ、最も触れられる機会の多い魔法であり、第二魔法そのものではないものの、その応用や一部再現とされるものも多く登場している。
- 時間旅行、記録の改竄、事象の改変などもこの魔法に含まれる可能性が高い。詳しくは下記「話題まとめ」参照。
- 関連
- 第二魔法に関する物は多く、これまでに宝石剣ゼルレッチ、ゼルレッチの宝箱、カレイドステッキが登場している。ゼルレッチの門下生の家系である遠坂家には宝石剣の設計図と他2つの実物が伝わっている。詳細は「魔術礼装」も参照のこと。
- 佐々木小次郎は純粋な剣技として「全く同時に太刀を振るう」ことを目指した結果、多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)と呼ばれる「現象を複数の平行世界からひとつの世界に取り出す」第二魔法の領域に届いた。
- 『魔法使いの夜』では第一に対して「つぎのニつは多くを認めた。」と称されている。
第三魔法『天の杯(ヘヴンズ・フィール)』
- 使い手
- 不明(アインツベルンの工房を作った魔術師たちの師)、ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン
- 内容
- 現存する5つの魔法のうち、3番目に位置する黄金の杯。魂の物質化。
- 魂は物質界より上にある星幽界に属し、物質界へは肉体を介して干渉している。魂だけならいつまでも滅びないが、肉体を得るとやがて死ぬ事が定められる。
- そこで第三魔法は魂だけで物質界に干渉できるようにし、不老不死を実現する。また魂を永久機関にし、魔力切れを起こさせない。
- 精神体のまま魂単体で自然界に干渉できるという、高次元の存在を作る業。魂そのものを生き物にして、次の段階に向かう生命体として確立する。
- 『Fate/Grand Order』でアイテムとしての聖杯の説明に「形而上の存在を汲み上げ、物質に転換する第三魔法」とあり、魂以外にも応用が利く可能性が示されている。
- 第三魔法を再現する試みの中、偶然生まれたホムンクルス、ユスティーツァは1人当たり数年を要するが、第三魔法を行使できた[出 2]。彼女が大聖杯の礎となった事で、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは第三魔法を指して「アインツベルンから失われた」と語っている。
- 関連
- 魂を数秒だけ物質化させるという第三魔法に近い魔術を帯びた限定礼装「天のドレス」がアインツベルンに伝わっている[出 3]。
- アインツベルンは第三魔法へのサンプルとして、魂の出力装置であるホムンクルスを鋳造し、データを取り続けている[出 4]。
- 大聖杯には第三魔法の一部を使っているとされるが詳細不明。サーヴァントは今生きている訳ではなく、依り代無しには現界できないので、物質化した魂ではない。逆にいえば英霊は魔法が無くとも依り代さえあれば形になる。
- ムーンセルの聖杯戦争でのサーヴァントは「第三法と呼ばれる魔術によって実体化した霊子生命である」と説明されている[出 5]。
- 魂の物質化は人間でなければ今でも実現できることのようである。アンリマユは元々自力で魂の物質化ができる存在であり、大聖杯の第三魔法とは関係が無い。また千年クラスの歴史を持つ幻想種――例えば人狼であるルゥ=ベオウルフは通常の物質的肉体を有してはおらず、存在自体が「魂の物質化をしているようなもの」と表現されている。
- ウィザード達が行う霊子ダイブは「電脳世界における魂の物質化」と称される[出 6]。
- 『Fate/Apocrypha』ではシロウ・コトミネが自身の願いである「人類の救済」を叶えるために、大聖杯を第三魔法を行使し続ける物に改造し、全人類に第三魔法を適用させようとした。
- 『Fate/strange Fake』における聖杯戦争は第三魔法を魔法ではなくし、魔術の段階にまで引きずり下ろすことを最終目的として開催されている。
- 『Fate/Grand Order』で閲覧できる殺生院キアラの説明において、ヘブンズホールは第三魔法の亜種とされている。人間が善き行いをする時、持っていては都合の悪いもの(この世全ての欲)を吸収してくれる、社会においてなくてはならない機構。
- 『魔法使いの夜』ではそれまでの魔法の流れから「受けて三つは未来を示した。」と称されている。
- 『MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア』においてはズェピア・エルトナム・オべローンが人類滅亡を阻止するために挑み、敗れたモノとされる。
- 『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』では現代でもアトラス院院長として存在し続けているズェピアが希求する魔法としてこれを挙げている。
- ミハイル・ロア・バルダムヨォンやズェピアが行っているのは魂の「情報化」であってコピーの類であり、不老不死を目指す手法ではあっても第三魔法とは関係が無い。
- 『Fate/Grand Order』のイベント「SABER WARS II」にて、並行世界サーヴァントユニヴァースは元々サーヴァントしかいない世界という訳ではなく、過去に何らかの転機があり「人類はサーヴァント化(≒霊体化)し不滅の存在となった」と言及されており、第三魔法又はそれに類する現象が起こったことが示唆されている。
第四魔法
- 使い手
- 不明
- 内容
- 不明
- 関連
- 内容も使い手も伝わっていない魔法であるが、他の魔法使いたちは異口同音に「確かにそれはある」と語っている。
- 『魔法使いの夜』では「繋ぐ四つは姿を隠した。」と称されている。
第五魔法『魔法・青』
- 使い手
- 蒼崎青子
- 内容
- 蒼崎家の3代前の頭首が道を開いたとされるもの。
- 『魔法使いの夜』での描写によれば、時間旅行を可能とする魔法のようである。しかし全貌は未だ明らかにされておらず、時間旅行はこの魔法の本質ではなく、あくまで副産物に過ぎないようでもある。
- この魔法で時間旅行を行う場合、あくまで「何かを過去や未来に飛ばす」だけで、あるものをなかったことにすることはできない。たとえば「ある生物が死んだ時間」を過去・未来に飛ばすことでその生物を生き返らせる(正確に言えば、死を回避する)ことも可能だが、それは問題を解決しているとは言えず、あくまで負債をどこかに押し付けているに過ぎない。むしろ時間旅行そのものにかかるコストを考えれば、トータルでは人類・世界の負債を増やしているとさえ言える。
- 関連
- オシリスの砂は第五魔法を「星の命に何の利益も齎さない力」と評している。
- 第五魔法には橙子の業界屈指の魔術回路より青子の単純な魔術回路が適していた。これが蒼崎家の後継争いにも影響している[出 7]。
- 第五魔法の正体は「進む文明」という『魔法使いの夜』におけるテーマにも関わってくる。またこの魔法の中に消費文明の代表である青子が何故 「最新の」魔法使いなのかの答えがあるとか[出 7]。
- 『Fate/Grand Order』にてゲーティアが行おうとした「ゼロに戻ってから良い前提を作り直す」という行為は「逆行運河/創世光年」と呼ばれている。これは『MELTY BLOOD』にて青子が使用するラストアークと同名であり、青子の痕跡や第五魔法の一端が知れる、ある意味で魔法に近しいものであるらしい[出 8]。
- 『魔法使いの夜』では「そして終わりの五つ目は、とっくに意義(せき)を失っていた。」と書かれる。
第六魔法
- 使い手
- 存在していない。
- 内容
- 不明。Program No.6、第六法などとも呼ばれる。
- かつてアトラスの錬金術師、ズェピア・エルトナム・オべローンが人類滅亡を阻止するために挑み、敗れたモノ。
- これの使い手が現れるとき、世界に根本的な改変がもたらされるとか。
- 関連
- 『MELTY BLOOD』シリーズにおいてはズェピアが挑んで敗れたモノとされるが、『Fate/Grand Order』とクロスオーバーしている漫画『MELTY BLOOD 路地裏ナイトメア』においてはズェピアは第三魔法に挑んで敗れたと自称している。
- 「まだ実現できていない魔法を黒桐幹也はさらっと言い当てていたりする」という話が出ている[出 9]。このことで注目されている台詞が「ふぅん。そうなると最後の魔法っていうのは、みんなを幸せにする事ぐらいになっちゃうな」である。
魔法級
勘違いされやすいが、「その時代の文明の力では、いかに資金や時間を注ぎ込もうとも絶対に実現不可能なもの」が魔法であるわけだが、「実現不可能なもの」が現代では5つ(もしくは第六法も含めて6つ)しかない、わけではない。
「現代の文明の力では実現不可能なもの」は5つと言わず、それこそ幾つもある。
だが、その無数の「実現不可能なもの」中にあって、さらにそれを「可能にした奇跡」が魔法であり、今現在5つしかない、のである。
5つの魔法には該当しないが、その奇跡を指して「魔法の域」と言わしめる現象は他にも存在する。
『Fate/complete material Ⅲ』に記されている「魔法級の効果」は以下。
以上はあくまで『Fate/complete material Ⅲ』で記されたものというだけで、この他にも「魔法の域」や「魔法一歩手前」などの表現で言い表されるものは存在する。
例えば、第二魔法の一部再現である「燕返し」と「ゼルレッチの宝箱」が該当するのであれば、同じく第二魔法を限定的に行使する魔術礼装「カレイドステッキ」と「宝石剣」、そして第三魔法を一時的に再現する「天のドレス」をここに挙げてもよいだろう。
また『Fate/complete material Ⅲ』の出版より後に登場した、『魔法使いの夜』の人狼ルゥ=ベオウルフもまた、千年クラスの幻獣である。
対象を限定した上での時間操作も魔法の領域。
メモ
- 公式で青子先生が第五魔法の使い手との情報が出たが、過去に「第四の魔法使い」と表現された件は、第一魔法の使い手が既に世界から消滅しているため「現存する魔法使いの四番目」という意味で使われたと推定。
- メタな話になるが、奈須氏と交友のある作家の中には第四魔法の正体を教えてもらっているらしいことを発言している者が数名おり、設定自体はしっかりとされているらしい。
- 『TYPE-MOONエース』Vol.9収録の座談会にて、『Fate/strange Fake』を手がけている成田良悟氏が「(奈須氏が)第一魔法と第四魔法も、空白になっているけどももう全部考えてあるって言っていましたね。」と述べている。
- 鋼の大地時代には六人姉妹と呼ばれる亜麗百種が魔法使いだとされている。それぞれが童話に登場する黒い帽子と箒に乗った魔女のような姿をしていた。
- 聖杯戦争におけるサーヴァントは実体化する術を持つ霊体ではあるが、第三魔法である「魂の物質化」とは別の現象である。サーヴァントはあくまで「降霊」によって呼び出されるものであり、寄り代がなければ現世には留まれない。魂単体で存在できるようになる「魂の物質化」と比べれば不完全なものである(ただし、サーヴァント降霊のためのシステムの基盤には、第三魔法の一部を用いているとされる)。
- 『Fate/EXTRA』のサーヴァントに関して「第三法と呼ばれる魔術によって実体化した霊子生命体である」と公式サイトで説明されている。ゲーム内のNPCは「ムーンセルがやっているのは、本来の手法の完全コピー」と語っており、冬木のもの同様、第三魔法の一部を利用している可能性はある。
- 魔法使いである青子を指して、暴走アルクいわく「忌まわしい秩序の飼い犬」。ワラキアいわく「君たちのように秩序と対峙する域」。
- 暴走アルクは魔法使いについて「第六法を待つまでもないわ、おまえたちは私の手で一人残らず消し去ってやる……!」と続けている。
- また、ネロいわく「この世の果て」=「秩序が第六に敗れるその日」。
- バゼット・フラガ・マクレミッツによれば死者の蘇生には時間旅行、平行世界の運営、無の否定、いずれかの魔法が絡むという。
- また古来完全な死者の蘇生は魔法ですら叶えていないという。『Fate/Grand Order』の終章でゲーティアの宝具を受け一度は消滅したマシュ・キリエライトをフォウが蘇生させているが、これは数百年間に渡り溜め込んだ膨大な魔力の他、「通常の時間軸に存在しない時間神殿での死は世界によってカウントされない」という事情があってこその特例である。
話題まとめ
- 残りの魔法
- 『Fate/hollow ataraxia』において、魔術師バゼットの口より、「死者の蘇生には時間旅行、平行世界の運営、無の否定、いずれかの魔法が絡む」という言葉が述べられた。
『hollow』発売当時、ここにあげられたうちの『平行世界の運営』は、第二魔法であると既に公開されており、第三魔法が『魂の物質化』であることも明らかになっていた。『時間旅行』と『無の否定』が、まだ明らかではなかった残る第一、第四、第五のいずれに該当するのかが話題となる。
- 確定ではないが、第一魔法は、用語辞典で見られる「エーテル塊」の項目で記述されている「無を生み出す」という一文と、バゼットの言から『無の否定』だという説が有力視されている。使い手は死去したが、魔法の痕跡は未だ世界に留まっている。
- 『時間旅行』に関しては、『MELTY BLOOD』、『Fate/EXTRA』等に青子が時間に関するいくつかの台詞を残しているところから、第五魔法に該当することが有力視されていた。
その後、『魔法使いの夜』にて、青子が魔法を使うシーンが公開される。しかし、この作品で『魔法・青』の全貌は明らかにはならず、いくつかの疑問が残ったままの結果となっている。
『魔法・青』が「時間」に関わる魔法であることは確かだが、特に蒼崎橙子からは「『時間旅行』は『平行世界の運営』に含まれる」との言葉がある。バゼットの台詞では『時間旅行』と『平行世界の運営』は別物と受け取れた為、この事実はファンの意表を突いた形となった。
脚注
注釈
出典
- ↑ 「空の境界用語集-エーテル塊」限定愛蔵版『空の境界』付属冊子
- ↑ 「#15 神話の対決」『Fate/stay night[UBW] Animation Elements』p.19
- ↑ 「Fate用語辞典-天のドレス」『Fate/side material』p.67
- ↑ 「リーゼリット-TYPE-MOONコメント」『Fate/complete material Ⅴ Hollow material.』p.99
- ↑ 「フェイト/エクストラ 公式サイト:キーワード/サーヴァント」
- ↑ 「Fate/EXTRA用語辞典-魔術師」『Fate/EXTRA material』p.169
- ↑ 7.0 7.1 「4Gamer.net-TYPE-MOONの原点を辿る「魔法使いの夜」インタビュー。奈須きのこ&こやまひろかず&つくりものじ氏の3名に聞く,ノベルゲームの未来と可能性-「魔法使いの夜」,そしてこれから」
- ↑ 「4Gamer.net-「Fate/Grand Order」がもたらす新しいスマホゲームの形――奈須きのこ×塩川洋介が語るFGOの軌跡と未来とは-人類史の記録を辿る旅――Grand Orderの意義」
- ↑ 「空の境界用語集-魔法」限定愛蔵版『空の境界』付属冊子