ルーラー (Apocrypha)
- 真名:天草四郎時貞
- 誕生日:不明 / 血液型:不明
- 身長:169cm / 体重:59kg
- 出典:史実
- 地域:日本
- 属性:秩序・善 / 隠し属性:人
- 性別:男性
- イメージカラー:銀灰色
- 特技:洗礼詠唱
- 好きなもの:人類 / 苦手なもの:暴走する人間
- 天敵:ジャンヌ・ダルク、ジーク
- CV:内山昂輝
- 略歴
- 『Fate/Apocrypha』の過去において行われた第三次聖杯戦争にて、正史と異なりアインツベルンによって召喚されたサーヴァント。この世界ではアンリマユという神に近い存在を制御する自信の無かったアインツベルンは、本来ならば中立かつ裁定者として聖杯戦争に積極的に勝敗に関わらないルーラーを「参加者」として召喚した。
- イレギュラー召喚の影響もあり、本来召喚されないはずの東洋の英霊である彼が召喚された上に、その英霊としての能力も三流であったが、『神明裁決』による令呪執行機能と『真名看破』による弱点を突く作戦によって、聖杯獲得まで後一歩のところまで迫ったもののマスターが死亡したことで敗北を喫した。
- しかし、偶然の積み重ねにより大聖杯に触れたことで受肉し、監督役であった言峰璃正の助力を得て偽の身分「シロウ・コトミネ」と大聖杯の行方を探るために聖堂教会での役職を手に入れ、半世紀以上も行動を起こす機会を伺っていた。 その目的は「人類の救済」であり、冬木大聖杯に真の意味でそれを成し得る可能性を見出した彼は、奪われた大聖杯がいつか何処かで使われる機会を、あらゆる文献や調査で大聖杯や聖杯戦争、第三魔法の仕組みなどを探りながら待ち続けていた。
- 聖杯大戦勃発後は監督するという名目で聖遺物の管理・回収を生業とする第八秘蹟会から派遣され、自身も赤の陣営のマスターの一人として参加し、かねてより自分の目的のために必要な英霊として目星をつけていたアサシンを召喚。彼女の毒を使うことで獅子劫を除く「赤」の陣営のマスターを傀儡にし、ルーラーを襲撃させるなど暗躍する。後に令呪とマスター権を譲渡させて赤陣営のランサー、アーチャー、ライダー、キャスターのマスターとなる。大聖杯の奪取後、自らの目的を果たすため空中庭園で漂いながら赤の陣営のサーヴァントたちに目的を話して説得することに成功し、第三魔法の全人類への発動のために大聖杯炉心へと突入、自身の宝具を用いてその改造と掌握に成功する。しかし完全起動を待たずしてルーラーとジークとの死闘の末に致命傷を負い、アサシンに看取られながら死亡した。
- 『Fate/Grand Order』終局特異点『冠位時間神殿 ソロモン』では冠位時間神殿に召喚されており、二人のアヴェンジャーに続いてⅩの座を統括する廃棄孔アンドロマリウスとの戦いに参戦する。
- 人物
- 修道服と赤い外套を身に纏う褐色の青年。一人称は「私」「俺」。
- 一見するとまだあどけなさの残る面貌と人当たりの良い穏やかな好青年だが、その笑みからは年齢に見合わない超然的で達観した雰囲気を醸し出しており、その振る舞いが妙に計算的に見えることがある。また彼の佇まいには戦場に似つかわしくない謀略の臭いが染み付いており、程度の差はあれども表面上は同じ陣営の仲間である獅子劫や赤の陣営のサーヴァント達からさえも不信感や警戒心を抱かれている。
- 人間は嫌いだが、人類を深く愛している。これは生前、人間がどこまで下衆に、下劣に、そして残酷に強くなれるかを見てしまったことに加え、自身が体験した第三次聖杯戦争とその直後に起きた第二次世界大戦の出来事でその想いをより強固にした。結果として、人類を救済するには大聖杯の奇跡、即ち第三魔法「魂の物質化」しかないと結論付ける。
- 「万人が善性であり、万人が幸福である世界。あらゆる悪が駆逐された『この世全ての善』を手に入れる」人類の救済という夢のために、人間を信じる心を捨てて「人間を信じない」という道を選んだ彼は60年を掛けて目的達成のために考え続け、悩み続けながら自分の精神を自己改造し、目的達成の為ならば自分の人間への愛も憎しみも置き去りにし、封印し、目を背け、多くの無辜の命を踏みにじっても、あらゆる必要な要素を躊躇なく奪い、敵対する者は駆逐する鋼鉄の意思とするべく進み続けた。
- 『Apocrypha』では黒幕であるが、その存在自体は善良なものである。彼の思想は人類がいつか辿り着くであろう場所、そこにほんの僅か近道への案内をするものであると言える。一方で、彼が見据えた物はあくまでも「人類」という種の救済であり、「人間」個人の我欲や喜怒哀楽、生の苦悶といったものを救おうとしなかった。そのため、紛れもなく悪でもある。
- このように、他者から非難されるような手法や策略を用いてでも自分の理想を叶えようと、その真意や本性を滅多に明かす事無く暗躍する彼であるが、人間関係に置いては他人と強固に壁を作るというよりかは、常に他者との距離をギリギリ敵対関係にも親しい関係にもならないようにするタイプであり、マスターとの関係も極めて穏当なものに留まる。
- しかし、それでも彼の中での最優先事項は聖杯の願望を叶えることに変わりはなく、どれほど親しくなろうとも、マスターが自分の理想や考え方を受け入れてくれない限りは常に粛清の対象とみなす。しかし、逆に彼の意見や思想に賛同してその力を振るう者、そして夢を託すに相応しい人間だと認めた者に対しては、喜んで自分の命さえも差し出す。
- 基本的には誰にでも柔和で礼儀正しい態度を崩さないため、律儀で堅苦しく真面目な所が非常に目立つが、『Fate/Grand Order』では仮面を被ってノリノリで遊んでいたり、自分が胡散臭く見えることを自覚した上で手作りクッキーをくれたりと、外見年齢相応にはっちゃけることも多い。
- 能力
- 生前は特異な魔術回路を生まれつき持っただけの魔術使いに過ぎず、生前の「奇跡」も全て魔術によるもの。そのためサーヴァントとしての能力はさして使い道のない宝具と平凡な能力を駆使する必要がある。
- アサシンへの魔力供給は問題なく行える事から、魔術師としてのポテンシャルは低くないことが伺える。本人の自己申告によればアインツベルンによるイレギュラー召喚でルーラーとして召喚された結果ルーラーとしての彼が人理に記録されただけで本来、サーヴァントとして召喚されるとしたらキャスターとして召喚されるとのこと。
- 一方で謀略家・戦術家としての手腕や実力は高い。表では大戦の監督官として赤のバーサーカーの通過する進路上で起こりうる問題の対処に奔走し、その裏ではアサシンが使役する鳩を通じてルーマニア全域の動向を把握しつつ、戦況に応じて的確にサーヴァントを使いこなし、さらに次の段階へ進むための準備も怠らない。
- 戦闘において、黒鍵と日本刀を武器とする。黒鍵は一度標的に弾かれても、再度標的に襲い掛かるよう術式が組み込まれており、刀身を伸ばして即席の壁を作り出すことも出来る。日本刀「三池典太」はかつてとある剣豪が愛用していた品で、赤のキャスターの「エンチャント」によってCランク相当の宝具と化しており、これによって剣の技量がそこまで高くない彼でも他のサーヴァントと互角に撃ち合うことが可能になっている。
ステータス
クラス | マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 | クラス別能力 | 保有スキル | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ルーラー | なし | C | C | B | A | B | D | 対魔力:A 真名看破:B 神明裁決:- |
啓示:A カリスマ:C- 洗礼詠唱:B+ |
|
主人公 (Grand Order) | C | C | B | A | B | D | 対魔力:A | 啓示:A 真名看破:B 神明裁決:C カリスマ:C- 洗礼詠唱:B+ |
宝具
- いずれも彼が生前に起こした「奇跡」が信仰によって宝具と化したもの。
- 「奇跡」の正体は単なる魔術であり、この宝具の効果も「あらゆる魔術基盤に接続し、どんな魔術でも使えるようになる」という程度である。汎用性こそ高いものの、聖杯戦争という場においては戦闘補助程度にしかならず、これらだけでは決め手に欠ける二流サーヴァントに過ぎない。例えキャスターとして召喚されてもメディアのような一級魔術師には絶対に叶わない程度の代物でしかない。
- ただし「大聖杯」という物自体が一種の魔術であるため、この宝具を用いれば大聖杯に接続し、乗っ取り、その機能を書き換えてしまうことも可能である。これにより、大聖杯を第三魔法を行使しつづける物に改造して、全人類に第三魔法を適用するのがシロウの目指す「人類の救済」の正体である。
- 左腕・天恵基盤(レフトハンド・キサナドゥマトリクス)
- ランク:D
種別:対人宝具
レンジ:1
最大捕捉:1 - 天草四郎が起こした数多の奇跡を再現する左手。
- 本来、シロウが持っていなかった力だが、宝具が持つ「奇跡の再現」という形で彼の肉体に顕れている。
- 右腕同様、自身を対象とした対人宝具で、シロウの肉体に対する補強・強化を行う。
- 「あらゆる魔術基盤に接続する」能力の他、スキル『心眼(偽)』に類似した効果を与え、右腕と合わせて洗礼詠唱を強化する。
- また、この宝具には対象者を「不老」にする効果があり、この効果によって彼は受肉しながらでも半世紀以上の時を耐えることが出来た。
- 大聖杯掌握時には「左腕・縮退駆動(レフトハンド・フォールトトレラント)」として右腕の機能を転写しスペックを縮小させつつ左腕一本で賄えるようにする力を使った。
- 右腕・悪逆捕食(ライトハンド・イヴィルイーター)
- ランク:D
種別:対人宝具
レンジ:1
最大捕捉:1 - 天草四郎が起こした数多の奇跡を再現する右手。
- 本来、シロウが持っていなかった力だが、宝具が持つ「奇跡の再現」という形で彼の肉体に顕れている。
- 戦闘において自身の補助を行う対人宝具であり、シロウが保有する「未来視」などの特殊能力を強化・支援する。
- 「あらゆる魔術基盤に接続する」能力の他、スキル『心眼(真)』に類似した効果を与え、洗礼詠唱を強化する。
- 大聖杯掌握時には「右腕・空間遮断(ライトハンド・セーフティシャトダウン)」として「右腕・零次集束」の発動準備を行った。
- 双腕・零次集束(ツインアーム・ビッグクランチ)
- ランク:A+
種別:対軍宝具
レンジ:1~200
最大捕捉:500 - 両腕を霊脈へと接続し、両腕の魔術回路へ過剰な魔力を加えて暴走。擬似的な暗黒物質を精製し、周囲のあらゆる存在を取り込む破滅型宝具。あまりに膨大な魔力を必要とするため、本来は宝具として使用することは不可能。
- 宝具として完全に駆動するためには、マスターとは別に何らかの形で魔力供給路が確立されていなければならない。
- 『Apocrypha』本編では制御下においた
天の杯 に満ちた膨大な魔力を右腕に加えることで「右腕・零次集束(ライトハンド・ビッグクランチ)」として使用。発動と同時に右腕を切断している。
真名:天草四郎時貞
- あまくさしろうときさだ。江戸時代初期に起きた一揆、島原の乱で指導者を務めた少年。
- 半生のほとんどは謎に包まれているが、幼少期から学問に傾倒していた彼はある時期を境に様々な奇跡を起こし始める。
傷を癒し、水の上を歩いた彼はやがて神の子として禁教を信じる農民たちから熱心に崇められ始める。
- やがて、彼を指導者とした小西行長の旧家臣らによって江戸幕府への叛乱軍が成立し、当時苦境に喘いでいた島原の農民たちと共に大規模な叛乱、島原の乱を起こした。当初は一揆を甘く見ていた江戸幕府も、送り込んだ討伐軍が打ち負かされたために本腰を入れ、老中松平信綱を総大将として送り込んだ。
- 松平信綱は原城に立て籠もった一揆軍を兵糧攻めに持ち込み、食料弾薬が尽きた頃を見計らって総攻撃を始めた。
ただ一人の内通者を除いて三万七千人の一揆軍が幕府軍によって皆殺しにされ、天草四郎も斬首された。
関連
- 島原の乱
- 江戸時代初期最大の一揆。そして幕末を除けば最大の内乱とも言われる。
- 島原の農民は藩主松倉勝家による重税に喘ぎ、本来の石高の二倍以上という杜撰な検地が理由であった。
- 年貢のみならず、人頭税などあらゆる手段で税を絞る藩主に農民は業を煮やして決起した。
登場作品と役柄
Fate
- Fate/Apocrypha
- 「赤」陣営のマスター兼大戦の監督役として登場。
- Fate/Grand Order
- 〔ルーラー〕キャラクターデザイン:近衛乙嗣 / 設定作成:東出祐一郎 / レア度:☆5
- 『天草四郎体験クエスト』の開催に伴い期間限定でガチャに追加。イベントガチャ限定サーヴァントであり、恒常的な入手手段は現状ない。
- ストーリーにおいては第七特異点において名前のみ登場。ケツァル・コアトルの支配領域に踏み込んだ後そのまま倒されてしまった模様。
その他
- ちびちゅき!
- 生徒役。体育祭では熱中症でぶっ倒れたエドモンをナイチンゲールの所まで連れていった。
人間関係
Fate/Apocrypha
- 赤のアサシン
- サーヴァント。
- 赤のキャスター
- 彼からは「マスター」と呼ばれており、戦闘において常に行動を共にしている。
- 赤のアーチャー
- 彼らのマスターを傀儡にして、事実上の支配下に置いている。
- 赤のライダー
- 彼らのマスターを傀儡にして、事実上の支配下に置いている。
- 赤のランサー
- 彼らのマスターを傀儡にして、事実上の支配下に置いている。
- ルーラーへの刺客として、彼を差し向ける。
- ルーラー
- 計画の最大の障壁として、排除を目論む。
- ジーク
- 全く予想していなかったイレギュラー。彼が脅威とはならないと頭では理解しているのに、言いようのな苛立ちを感じ始めている。
- ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア
- かつての敵。最終的に引導を渡す。
- ロットウェル・ペルジンスキー、ジーン・ラム、ペンテル兄弟、フィーンド・ヴォル・センベルン
- 「赤」陣営のマスター達。何らかの手段により彼らの精神に干渉して無力化し、そのまま「彼らの代理人」を名乗って彼らのサーヴァント達を支配下に置く。
- 言峰璃正
- 第三次聖杯戦争で出会った神父。シロウが生前に辿った経緯から尊敬されている。受肉後、聖杯の追跡を(表向き)諦めたシロウが現世で第二の生を送るための身分と役職、それに私財を与えていた。シロウは彼の養子になるにあたり、「大聖杯の追跡を諦めていない」事のみを隠したまま璃正に接していた。
- 義弟
- この世界線における義理の兄弟にあたる人物。大して交流がなかったらしく、璃正の死後は何かを求めて何処かに去って行ったという。
Fate/Grand Order
- 子ギル
- 自身の体験クエストで共演。発見した亜種聖杯の処遇をめぐって対立する。
- 巌窟王 エドモン・ダンテス
- 巌窟王から彼の人生や考え方を一方的とはいえ気に入られており、ジャンヌの姿を見て激昂したのが彼の姿もあることを認めた途端に沈静化するほど。
自分が捨てた復讐の念を抱く彼に憧憬とも憐憫ともつかぬ感情を抱いている。
- 呂布奉先
- 彼も「ルビが横文字同盟」に誘おうとしたが、「残念ながら強い想いで付けられた芸術であるため変更は不許可」と拒否されてしまった。
- ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ
- 期間限定イベント『二代目はオルタちゃん』にて共演。
- 有用性や効率を過剰に重視する彼女にサンタの何たるかを諭すべく、「サンタアイランド仮面」を名乗り、導いてゆく。
名台詞
Fate/Apocrypha
- 「アッシリアの女帝よ。
一四騎のサーヴァントによって執り行われるこの聖杯大戦。
私は勝利や敗北とは違う場所を目指します。協力して頂けますか?」 - 召喚した際、アサシンへの返答。
従えるにはあまりに危険な毒婦に対し、彼はただその意思を告げる。
- 「行こう、アサシン。あの悲劇は繰り返さない。
大聖杯は―――俺たちのものだ」 - 虚栄の空中庭園が完成した時の台詞。
少年の頃に抱いた思いを胸に秘め、決意を籠めた眼差しで高く透明な天を見上げる。
- 「もしも、私の計画が神に背くモノであれば。私はこの戦場で必ずや討ち果たされるでしょう。
不幸にもサーヴァントと戦って死ぬか、あるいは油断してゴーレムやホムンクルスに殺される。
ひょっとすると、味方の宝具に巻き込まれるかもしれない。
もし、そうなら粛々と死を受け入れましょう。神は私を許さなかった。
それはそれで、致し方のないことです。ですが、もし――
もし、何もかも上手くいったのであれば。それは神が俺の行いを赦されるということだ。
全ての人間を慈しみ……そして、癒すために、あの大聖杯を欲するという俺の願いが正しいということ。
それさえ分かれば、もう迷うことは無い。決して裏切ってはならぬモノまで裏切った甲斐があったというものだ」 - アサシンに語った、「自ら死地に赴く」事の理由。
静かだが、他者のは理解できない尋常ならぬ強迫観念に囚われており、迷わぬという意思を固めるための儀式でもあった。
- 「この時を待っていたのさ、ダーニック!冬木の聖杯は、俺のものだ!
魔術師、あるいは吸血鬼。
どちらでもないにせよ―――世界を破滅に追いやるしか能の無い貴様に、この大聖杯は断じて渡すものか!」 - 念願の聖杯を前にして立ち塞がる、有り得ない敵に絶句する吸血鬼を他所に、少年はますます声高らかに叫ぶ。
- 「知れたこと。
全人類の救済だよ、ジャンヌ・ダルク」 - ルーラーと同じく「奇跡」と謳われた少年が告げた自身の願い。その願いは狂気に近い。
- 「―――かつて、憎んだことはある」
「神も、人も、全てを憎んだことはある。それは認めようライダー。
私はかつて、確かに人間が憎かった。自分を殺されたからでも、仲間を虐殺されたからでもない。
それを歴史の構造 として受け入れる人類そのものが憎かった。
強者と弱者があり、互いに喰らい合い、命を浪費することで成長し続けるという人類がただただ憎かった」
「だから、私は捨てたぞライダー。
彼らを憎悪するという心を、人類救済のために切り捨てた。
だから今は憎くなどない。この世界の誰であろうと、必ず救う。必ずだ」 - ライダーから自分と自分に付き従った連中を殺した人間が憎くないのかと問われた際の返答。返答次第では即座に槍を使うつもりだったライダーに対し、向かい合い、目線は逸らさない。そこに狂気の片鱗はなく、強者の驕りもない。「奇跡」と謳われ挫折した少年の瞳は、ぞっとするほど、透明だった。言葉の後には、ただ沈黙が広がる。
- 全てを憎むか。全てを悲しむか。
……私は選んだのだ。全てを悲しもう、全てを慈しもう。私は人間を信じている。いつか、当たり前のようにそこへ到達するのだと信じている。
だけど、辿り着くまでに失うものは沢山あって。
無念は雪のように降り積もっていく。
私にできることはないだろうか。私が人の哀しみを癒やす方法はあるのだろうか。
――あった。
確かにそれは人を正しく救済する。辿り着くべき場所に至る唯一の近道だった。 - いつか人間は悪性を乗り越えて平和へと至る。そう信じているからこそ、それまでに失うもの、無念、哀しみを癒やしたいと、減らしたいと願ったからこそ四郎は第三魔法を求める。
- 聖人では人は救えても、現実から救うことも未来を得ることもできなかった。
戦いは人類を成長させる。それは事実かもしれない。だけど、それでは――それでは、弱者が踏みにじられ続ける世界となってしまう。
だから救う。
全てを救うのだ―― - セミラミスを召喚するなり語った目的。当然戯言だと一笑に付されたが、その後契約を結び、彼の足掻きを理解した最古の暗殺者は彼への協力を誓う。
- 「――聖杯に問う。我が奇跡は誤りか、我が願いは異端か、我々が信じたものは切り捨てられるべきものなのか」
「ならば。我々は何故美しいと思うのか。何故平和を愛し、幸福を愛し――それが第三者のものでさえ、愛しく思えるのか」
「それは、いつかここに辿り着くべきだと。
そう考えていたからではないか。答えよ、万能の願望機、答えてみせろ!我が願望に邪悪はあるか!!我らの希望に汚点はあるかッ!?
「ならば、我が願いを聞き届けよ。我らの祈りを確かなものとしろ!
聖杯、己はその真の役割に殉じるがいい!人類は天の杯を掴み、無限の星々に至るのだから!」 - 人類史において数々の人が祈り、叶うことがなかった「人類が全て、等しく平和で幸福に満ちていますように――」という祈り。
それが傲慢であると、罪であると、そんなものは存在しないと、幻想だと、そう考えるほうが邪悪であると「正しい現実」の前に踏みにじられて来たモノ。
それでも。それでも平和を願った願いは遂に辿り着く。第三魔法、天の杯。人を次のステップへ押し上げ新たなステージへと導く奇跡である。
- 「では、何故――いえ、そうですね。貴方は個人を救い、私は全てを救うことを望んだ」
「貴女はご自分を聖人ではないと仰るでしょうが。私は誰より、貴女を聖女だと信じます。私も貴女のように考えようとした時期もあった。しかし、私には耐えられなかった」 - 自身の掲げる救済と、シェイクスピアの宝具に寄って心折れかけてなお立ち上がったジャンヌの救済との違いを知る。
Fate/Grand Order
- 「サーヴァント、ルーラー。天草四郎時貞。誰かに似ています? 他人の空似というやつですよ」
- 召喚時の台詞。いわゆる「ミスリード」を意識したとも取れる台詞である(後述)。
- 「サンタアイランド仮面です!
ちなみに赤いからといって、エミヤとかシロウとかとは特に縁のない男ですゆえ。」 - 期間限定イベント『二代目はオルタちゃん』にて、変装とも言えないような仮面を被ってきて、天草ではないかと追求されての一言。
- 後述する「ミスリード」を上記の言動よりもっと強烈にネタにしたメタ台詞である。
- 「少女の嘆き、少女の喜びを聞いたとき、駆けつけ三杯、寿司食いねぇ。
サンタアイランド仮面、参上……!」 - 同上イベントにて、ジャックとナーサリーが悲しむ姿に狼狽えるサンタリリィに対して、薔薇の黒鍵を投げつけて登場しながら。
- 少女漫画チックなBGM、意味不明な言動、怪しすぎる姿とどこからどう見てもネタにしか見えない。
- 元ネタはアニメ『美少女戦士セーラームーン』のタキシード仮面。恐ろしい事に、『Fate/Grand Order』の天草には『Fate/Apocrypha』の記憶があるようなので、放送当時リアルタイムで視聴していた可能性がある。
- 「いえいえ、残念ながらおかあさんではありませんよ。
ですが、クリスマスは貴女のおかあさんが沢山できる日です。よかったですね。」 - 同上イベントにて、ジャックちゃんに「おかあさん?」と聞かれての返答。
- 「クリスマスには恋人関係が進展して行為に走る事が多い」という、とても聖職者とは思えないようなブラックジョーク。それを主人公からは「ジャックに変なこと吹き込む奴は霊基変換の刑に処す」と不興を買った。
- 元ネタはタキシード仮面が美少女戦士に下ネタトリビアを披露する有名な怪文書コピペ「タキシードクイズ」。
メモ
- Apocryphaの小説化にあたり、ラスボスを「Fate」の源流である「魔界転生」から抜擢するというアイデアと、それなりの知名度を持った歴史上の人物で本家「Fate/stay night」の主人公衛宮士郎と下の名前や年齢が偶然一致していたという着想から発生したキャラクター。
- 日本人の彼が白髪となっているのは強引に受肉した際の代償、褐色の肌となっているのはセミラミスの触媒と「虚栄の空中庭園」の材料の収集に二十年近く中東に潜伏する必要があったため。しかしメタ的には間違いなくあっちのシロウへのミスリードを誘うためだろう。
- 『Grand Order』でも相変わらず褐色肌白髪。これは、前の召喚の名残であるため。彼女同様、変えられても困るというメタ的な事情こそあるのだが。
- 潜伏した地域の土地柄、褐色肌になった理由がファンの間で日焼けであるかのように断定的に語られやすいが、「Apocrypha material」では『利便性を考慮し肌の色を変えた』という、シロウ本人が必要にかられてそうしたかのような記述が為されている。
- 「年若い日本人少年の姿をしたシロウという名前のカトリック教徒」「挿絵によっては大きな飾り襟に見えるフードが付いた赤いマント」「殉教を意味する赤い典礼色のストラ」等、彼の正体を知るヒントは1巻の時点で散りばめられていたが、それ以上にフルネームと容姿のインパクトが強い。
- カトリックの司祭が肩に掛けるストラは色によって意味が違い、シロウが身に着けた赤い典礼色のストラは主が受難を受けた時に流した血の色、殉教者の血の色、炎の色を象徴している。
- 赤い陣羽織(赤いマント)と大ぶりの飾り襟は天草四郎の肖像画などのモチーフとして頻繁に採用されるもの。(エリマキトカゲのように首の周囲を囲む蛇腹状の襞襟もモチーフとしてよく使用されるが、81年の映画「魔界転生」や奈須きのこがFateの原点として挙げる石川賢版の「魔界転生」では大ぶりの飾り襟が採用されている)
- 外套や陣羽織の胸元に使用されている房の付いた飾り紐が読者の目を惹くが、これは「
総角 結び」と呼ばれる装飾結びの一つ。
ご存知アーチャーの外套にも使われている総角結びだが、房の付いた総角結びは調度品や武具、勿論陣羽織の装飾としてもポピュラーな物。シロウの生まれた時代や出自から考えても衣服の装飾に総角結びが使用されるのは妥当だろう。 - 今でこそ美少年として扱われる天草四郎だが、これは島原の乱から70年以上経過した享保年間に流通した近世軍記「田丸具房物」の影響が強く、実際のところ島原の乱の収束前後数年以内に成立した史料で四郎の容貌に言及されたものは少ない。
- 容姿どころか島原の乱に参加する前の経歴や出自についても謎が多く、様々な異説が存在する。特に極端なものは『大阪の陣で死なずに落ち延びた豊臣秀頼の息子』つまり豊臣秀吉の孫であるという説だろう。秀頼生存説自体が伝説の域を出ないため信憑性はお察しだが、後述の通り乱に豊臣家の残党が多数加わっていたのは事実であるため、このような説が生まれたものと思われる。
- Fate二次創作界隈では昔からあるIFネタで「もし衛宮士郎が冬木の大火災で衛宮切嗣ではなく言峰綺礼に拾われ養子になっていたら」という所謂「言峰士郎」ネタがそれなりの規模で存在した。並行世界という設定もありこの二次創作ネタの存在も読者から彼の正体を眩ます要因になったかもしれない。
- ルーラーとは同じ『キリスト教の信者』であり、『奇跡を起こしたと言われる神童』であり、『同志達のために戦った英雄』でもあった。
- しかし死後に名誉回復されて聖人となったジャンヌ・ダルクとは異なり、彼は殉教者としてすら扱われていない(島原の乱には豊臣家残党の反乱という面もあったため)。
- 傀儡とした赤のマスター達に対し、まるで下僕のように振舞っている。彼らの自由意志を完全に奪わずに、そのように振舞っているのは、赤のランサーの真偽感知を誤魔化すためであった。
- 冬木の聖杯は、その魔術基盤がアインツベルン由来のものであるため、基本的に「西洋圏由来の英霊」しか喚べないはずである。
日本由来の英霊である彼が喚ばれるのは本来あり得ないことだが、アインツべルン自らルール違反を行ったことでこの問題は解決した。
(召喚に際して何らかのルール違反が行われた場合、喚ばれる英霊の西洋縛りが解かれるという現象は『stay night』の佐々木小次郎で既に登場している)
だがアインツベルンとしては聖人モドキの東洋の英霊を使う事など本意ではなかったらしく、本来のルーラーを切望していたという。この「本来のルーラー」という表現から分かるように、この世全ての悪に汚染されていない冬木の聖杯では特殊クラスでも東洋の英霊は召喚されない事がはっきりした。
……それにしても、自分たちで呼びつけおいて酷い話である。- とはいえ、サーヴァントの選択を誤って三度に渡り失敗したアインツベルンとしては珍しく(と言うか、判明している限り初めての)成功した選択。残念ながらナチス軍の介入によって聖杯戦争が崩壊してしまったものの、シロウが受肉に成功するなど、本来の聖杯戦争自体には勝利している。また、この選択のためApocrypha世界の聖杯は汚染されていないなど、良い事づくめである。
- 当人も「ルーラーにすらなりえない三流サーヴァント」「頑張ってキャスターに引っかかるかどうか」とクラス適性が殆どないことを自嘲しており、前述の反則的な行為で召喚されたことでルーラーの資格を得たのはある意味皮肉であろう。そして人理焼却でもない限りは喚ばれる可能性は低く、『Grand Order』で登場した天草はApocrypha世界を経た後と明言されている。
- 小説版『Apocrypha』においてゲオルギウスがリストラされた原因の一つが彼の存在。ジャンヌ・ダルクと彼の思想対立が小説版の柱であり、それ以外に聖人のサーヴァントがいると話が煩雑になるためだとされている。
- 元々サーヴァントであるにも拘わらずにマスターとして参戦しただけでなく赤のアサシン本人を召喚しているが、おそらくこれは裏切りの魔女と異なり彼が生前魔術師であると共に聖杯の力で受肉した結果と思われる。
- 『Grand Order』にて、宝具の効果が「強化解除後」にダメージを与えるというものであるため、相手が回避・無敵・防御アップ等を使用していても、問答無用で攻撃が可能。…逆を返せば、敵として出てくると非常に恐ろしい存在となる。
- 宝具がルビが英語となっており、主人公 (Grand Order)からも「イモータル・カオス・ブリゲイド的な?」と指摘しており、「だいたいそんな感じですね!」と妙にノリのいい一面を見せた。
- 「二代目はオルタちゃん」で水子の集合体であるジャックに対してブラックショークを言ったことで「結果授かった者を持て余して堕胎する」ことを仄めかすさらにドス黒い内容なのでは?という解釈があるが、天草四郎が首魁をつとめた島原の乱は、年貢の未進を理由に拷問にかけられ死亡した臨月の妊婦と拷問中に流産した胎児の報復から始まったと記録されている(後述)。
- 更に天草地方自体が隠れキリシタンの教義に従い間引きや新生児殺しを良しとしない風土で、間引きと称して新生児を親が殺す悪習が公然たるものになっていた江戸時代でも特異なペースで人口を増やしたやたら子殺しに厳しい島だったりする。詳しい話は司馬遼太郎『「街道をゆく-島原・天草の諸道』や関西大学 『天草諸島の文化交渉研究』等を参照のこと。
- 「わたしたち」である胎児を母の子宮から追い出した医者を嫌っており、『Apocrypha』で自身が生まれたロンドンの地獄をジークに説く程度には無知でもないジャックが四郎の発言を受けて無邪気に喜んでいる会話の流れからも、天草諸島出身のキリシタンである四郎が堕胎の被害者である水子当人を相手に堕胎を茶化す発言をしたとは言い切れない。
ただ性なる夜を祝福する気満々なのだとしたら聖職者としてそれはそれでどうなのか。 - むしろ、神父にとって粛清対象の悪霊であるはずのジャックに四郎の対応が甘いのは先述の島原の乱の発端と関連して、「母親の中に居たかった胎児の霊」に思うところがあったからなのかもしれない。
話題まとめ
- 「ミスリード」の真偽
- あっちのシロウへのミスリードを誘う造形で登場したシロウだが、ソース不明の言説で『シロウ・コトミネ=平行世界の衛宮士郎という誤った推測にファンを誘導するため、奈須きのこや東出祐一郎が衛宮士郎・アーチャーファンの期待を煽る恣意的な発言を行った』と主張される事があり、2巻発売直後は炎上の様相を見せる程であった。
だが実際の所、Apocryphaの第一報が発表された2012年7月~シロウの正体が発覚する2巻が刊行された2013年8月までに発表された関係者の発言で、あっちのシロウとシロウ・コトミネの繋がりを直裁に示す物があったとは言い難く、多くの主張がデマや誤読によるものと判明している。- (例)『「正体はアイツだよね」と察してもらえるだろう』『いつもの赤マント(いつもの赤いの)が出張する』――これは2011年発行のFate/EXTRAビジュアルファンブックで無銘に寄せられた奈須きのこの発言『「真名はないけれど、アーチャーの正体はアイツだよね」と察してもらえるだろうと。』が取り違えられたもの。後者も竹箒日記2010/7/23でEXTRAの無銘に宛てられた『いつもの赤マント』発言が取り違えられている。
- 『星を追う少年』――2012年12月10日のひびちからじお第63回で公開された東出祐一郎書き下ろし音声広告の『少年は変わる。届かぬ星に手を伸ばすために。』が誤解釈されたもの。このフレーズはシロウではなく、Apocryphaの主人公ジークに宛てられている。
- 2012年7月に発表された「TYPE-MOON10周年記念オールキャラクター人気投票結果発表」で奈須きのこから衛宮士郎に寄せられたコメント『主人公の宿命か、凛やセイバーのように派生作品においそれとお邪魔できませんが、彼は今も星を追いかけているのです。』と混同されたと推測される。
- 正体発覚前のシロウに言及された公式関係者の発言の内、唯一ソースが確定しているものに、第一巻発売を控えた2012年末のTYPE-MOONエース8での対談があるが、
――個人的には聖堂教会の監督官の姿がどこかで見た感じの方で、非常に気になります。 東出「色黒の人ですね(笑) 。プレビュー版にも名前だけは出てきます。」
- という非常に簡素な物。取材者も東出氏も「対談相手はシロウの容姿を”どこで見た誰に似ている”と思ったのか」に言及していない事に注目されたい。…要するに「突っ込まれたら困るからはぐらかした」のだろうか。
- 無論、明言していないだけで、衛宮士郎へのミスリードを誘ったのは間違いないだろう(でなければ、日焼けさせる必要も、コトミネ姓を名乗る必要もない)。だがそれは、「士郎である事を誤認させ期待させる」事よりも「士郎を目眩ましにして天草四郎の正体を隠す」と言う方に重点が置かれていたと考えた方が自然である。
- 実際、第1巻発売の2週間前に刊行された「TYPE-MOONエースVol.8」でシロウの名前と聖堂教会の神父という前情報が公開された段階で『シロウはシロウでも漢字違いの別人ではないか』という予想から速攻で天草四郎の名前が導き出されてしまうほど(リンク先247-248)天草四郎の名は”シロウ”繋がりで連想しやすい人物名だった。
事前にアルトリアと別人だとアナウンスが為された赤セイバーのケースと異なり、もし事前情報で衛宮士郎と無関係だと明言されていたら、16騎目のサーヴァント=天草四郎の存在を伏せるギミックが成立し得なかっただろう。
- キリシタン弾圧
- いわゆるバテレン追放令などのキリシタン弾圧を初めて行ったのが豊臣秀吉なのだが、その政策は徳川家康に引き継がれた。彼らがキリシタン弾圧を推し進めたのは、織田信長の元で一向一揆の脅威に晒されていた経験が根底にある。
- 『宗教』のもと団結した民衆の恐ろしさに加え、西欧諸国による海外の植民地政策の手口(商人(交流)→宣教師(調査)→軍隊(侵略))や布教にかこつけてやって来た外国人が人攫いなどの犯罪行為を働いていた事などを知っていた2人は、政権を握ると信長が段階的に行ってきた政教分離政策を更に加速させていくが、イエズス会によって日本にもたらされたキリスト教はこの政教分離政策に中々従おうとせず(当時の欧州において、バチカンの法王の権威は各国の国王より上位だったので、日本でも将軍や大名の命令や取り決めを守らなかった)、しかもキリスト教に帰依した大名達も秀吉に反発する有様であった。
- このような状況に業を煮やした秀吉はついにバテレン追放令に代表されるキリシタン弾圧に踏み切る。その内容は過酷を極めたが、結果的には日本の植民地化を防いだ一因になったのは確かだろう。
- 日本にいた宣教師達はバックに西欧の軍事国家がついている自分達を弾圧し始めた日本政権の方針に驚愕し、当時の欧州最強国であったイスパニア(現スペイン)の国王フェリペ2世に無敵艦隊の出動を手紙で要請した程である。もっとも、その内容といえば「5万の兵力もあれば九州ぐらいは簡単に制圧できる」というあまりにも日本の国力をみくびり過ぎた杜撰な見積もり[1]であり、当時の宣教師達がいかに国王というものを軽視し、東洋諸国を舐めていたかが伺える。
- 近年の史料では、フェリペ2世は本気で無敵艦隊の派遣を検討していたらしい事が判明している。もっとも実現していた場合、5万人の輸送コストだけで国家財政が潰れていただろうが(5万人の人間を船舶のみで輸送するには、現在でも莫大な費用が掛かる。当時のイスパニアの破綻寸前レベルの財政難の事を考えてもかなり無謀な計画である)。
- 島原の乱
- 三代将軍・徳川家光の治世の時に発生した、大阪の陣以降では初の大規模騒乱。一般には天草・島原藩によるキリシタン弾圧に反発した人々の騒乱という認識が広まっているが、実際は過重な年貢の取りたてが根本原因であり、キリシタンの反攻は二の次に過ぎなかった。
- 当時は古参の大名であっても落ち度があれば容赦無く改易する3代将軍家光の厳しい国政の目や、大名の反乱を防ぐために設けられた強制的に藩の財政難を誘発させる諸政策に恐れて苦しむ藩が非常に多く、この時島原藩を治めていた松倉勝家はそれらへの対策として多くの農民に対して過剰すぎる年貢の取り立てと残虐極まりない罰則による暴政を敷いて無理矢理収入を増やそうとしていた。『黒田長興一世之記』という記録によれば、1637年10月(旧暦)、年貢が支払えない庄屋の身重の妻が役人に捕らわれ、裸で水牢に入れられた。庄屋では年貢の支払いに知恵を絞るも払えるものはもう何もなく、6日後、妻は出産した子供と共に命を落とした。
こういった暴虐に耐えかねた人々は同年10月25日に代官を殺害して蜂起、これが島原の乱の始まりである。 - 幕府の政策によって他藩が幕府の許可が下りない内は軍を出動させられなかった事などが追い風となり、当初は一揆軍側が優勢であったものの、九州諸藩の討伐軍が島原に進軍してくると次第に追い詰められていき、最終的に島原半島南部にあった原城に立て篭もる。その数は3万7千人にも及び、更に各地から奪った鉄砲などで武装するなど原城の防備を固めた。
幕府はまず九州諸藩の討伐軍のみで対処しようとするも、総大将に任じられた板倉重昌に討伐軍を統率するだけの力量が無く、攻撃は全て失敗。遂には重昌も戦死という最悪の結果を迎える(これは後述の援軍派遣決定を受けて責任を取らされる事を恐れた重昌が功を焦って自ら最前線に出て指揮を執りながら突撃したため)。 - このような予想外の結果に驚愕した幕府は「知恵伊豆」と呼ばれた老中・松平信綱を総大将として派遣。援軍を得た討伐軍は12万を数えたという。
信綱は無理な攻城は行わず、情報収集や矢文で投降を呼びかけるなどの心理戦を展開。更に一揆軍の食料が残り少ないと見て取ると、兵糧攻めにして一揆軍の弱体化を計った。篭城戦が始まった3ヵ月後の1638年2月27日(旧暦)、遂に総攻撃を開始、兵糧攻めで武器・食料を失っていた一揆軍は総崩れとなり、乱は鎮圧された。- なお、立て篭もった3万7千人全員が討ち取られたとされているが、最近の史料では1万人ほどが投降・脱出するなどして命を失わなかったと言われている。
- そして乱の鎮圧後、松倉勝家は暴政によって騒乱を招いた責任を問われて改易されたばかりか、江戸に罪人として送られ1638年8月(旧暦)斬首刑となった。大名が切腹ではなく斬首となったのは後にも先にもこの時だけであり、さすがの幕府も勝家の目に余る暴政は看過できなかった事が伺える。
- 魔界転生
- ご存知、山田風太郎の伝奇アクション小説であり、Fateシリーズの原点ともなった作品である。発表当初は「おぼろ忍法帖」というタイトルだったが、1981年の映画化の際に現在のタイトルに変更された。
- 「氷室の天地」で語られているように原作では森宗意軒が黒幕となっているが、81年の映画化以降に製作された作品群では、天草四郎が魔界衆の頭目となっている。
映画で天草四郎が頭目となった理由は単純で、原作のままでは2時間という尺に収まらないので森(と由比正雪)の役割を四郎に集約させたのである。
81年の映画では天草四郎を沢田研二、対する柳生十兵衛は千葉真一が演じ、観客動員数200万人を超える大ヒット作となった。
この映画での天草四郎の人物像は非常に強烈なもので、特にラストシーンで十兵衛に斬り飛ばされた生首を小脇に抱えて哄笑するシーンは、沢田研二のイケメン顔と相まって大変印象深いシーンとなっている。- ちなみに、奈須きのこがFateシリーズの原点として挙げたのは映画版ではなく石川賢版の「魔界転生」。
- また、同作には上述した柳生十兵衛、宮本武蔵のように、多くの剣豪が登場する。キャスターに強化された「とある剣豪が使っていた日本刀」は、この「魔界転生」に登場した剣豪の一人、柳生十兵衛の愛刀と同じ「三池典太」だった。
- 旗の宝具
- 十字軍の旗、ジャンヌ・ダルクの旗、天草四郎の陣中旗が俗に「世界三大聖旗」と呼ばれている。
- アイディアを考えていた東出氏はこれを知ってジャンヌの宝具と対になるものとして使えると喜んだが、探しても出典が分からない。そこで日本カトリック中央協議会にメールで問い合わせてみたところ、「そういうものを認定したことはない」と物凄く丁寧な返事をもらい、結局シロウが旗の宝具を使うネタは没になったという。
- なお、陣中旗は『Grand Order』にて、絆礼装「天草四郎陣中旗」のモチーフとして採用されている。
- 天草諸島
- 九州西部の熊本県と、一部は鹿児島県にまたがる諸島。本名益田四郎である天草四郎の「天草」の名はこの出身地の名から取られている。近年天草諸島の自治体は「サンタクロースの聖地・天草」を掲げた観光事業に力を入れており、国際サンタクロース協会の世界サンタクロース会議の誘致を行っていた。
- 「サンタアイランド仮面」に扮した四郎が「サンタアイランドに住むサンタアイランド仮面」と名乗るのは全くのデタラメではく、実はそれなりの由来があったりする。
- 天草ピックアップ
- 期間限定サーヴァントの中ではピックアップの回数が比較的多い天草だが、同時期かその後に爆弾を投下させるとユーザーから囁かれている。
- 一度目は『Grand Order』ではFGO初の「復讐者」のサーヴァントであり、プレイヤーからは主人公 (Grand Order)の裏の相棒と呼ばれている巌窟王 エドモン・ダンテス、
- 二度目はかのギルガメッシュと因縁のある女神であり、『stay night』のヒロインの一人遠坂凛を寄り代にして疑似サーヴァントとなったイシュタル、
- 三度目は『stay night』の原点である『Prototype』とそのスピンオフ作品『蒼銀のフラグメンツ』に登場した「剣士」のサーヴァント、アーサー・ペンドラゴン…
- と、登場した作品やシナリオ内で大きな存在感を放つキャラばかりがぶつけられて来ていたため、ユーザーからはある意味でこのピックアップに畏怖の目を向けられている。
脚注
- ↑ 秀吉がバテレン追放令を出した当時、肝心の無敵艦隊はフランシス・ドレイクに壊滅させられた直後だった上に、当時の九州には朝鮮出兵の為に30万を超える兵力が集結していた為、5万程度の兵力では瞬殺されるのがオチである。ついでに言うと、当時の日本は50万丁以上の鉄砲を有する世界最強の軍事大国でもあった。