衛宮切嗣
衛宮切嗣
- 読み:えみや きりつぐ
- 誕生日:11月11日/血液型:AB型
- 身長:175cm/体重:67kg
- イメージカラー:灰色
- 特技:射撃、破壊工作
- 好きなもの:効率/苦手なもの:家族愛
- 天敵:セイバー
- CV:小山力也(幼少期:入野自由)
衛宮家五代目継承者。衛宮士郎の養父。第四次聖杯戦争におけるセイバーのマスター。
- 略歴
- かつては封印指定を受けた魔術師の父・衛宮矩賢と共に、魔術協会から潜伏しながらの生活をしていた。母親はその逃避行の最中に死亡し、生後間もなかった彼は彼女のことを覚えていない。
潜伏地・アリマゴ島において研究サンプルが漏れ出す事故が発生する。その際に羅患した幼馴染の少女・シャーレイが、苦しみから彼に自分を殺してくれと頼む。しかし彼は幼さ故の未熟さも手伝い、恐怖からそれを拒絶して、大人に助けを求めようとする。
その結果として島は地獄と化し、彼は「一人を殺せなかったために大勢を殺す」という、強烈なトラウマを刻み込まれる。原因となった父がまた同じ事を繰り返すであろうことを予見した彼は、今度こそ自らの手で父を殺害する。
その後、父を狙っていたナタリア・カミンスキーと共に島を脱し、そのままナタリアの元でハンターとして生きるため苛烈すぎる経験と鍛錬を積みながら過ごす。血と硝煙にまみれた生活を送り既に眼差しは10代のものではなくなっていた。仕事の途中、ナタリア一人と他の大勢の命を天秤にかけねばならない場面に直面した彼は、再び非情な決断を強いられる。
ナタリアの死後は独立し、フリーランスの魔術師として活動。魔術師関連の殺しと並行して戦況がもっとも激化し破滅的になった時期に傭兵として各地の戦地に赴いていた。
「魔術師殺し」の戦歴をアインツベルンに買われ、共同で第四次聖杯戦争に参加。開戦以前にアイリスフィールと夫婦になり、娘のイリヤスフィールを設けている。
発掘された聖剣の鞘を触媒にセイバーを召喚。触媒である「全て遠き理想郷」は代理マスターとして戦地に送り込んだアイリに預けていた。
戦争の終結後、現場で唯一生き残っていた少年を発見。瀕死だった彼を「全て遠き理想郷」を体に埋め込むことで救い、脱出する。士郎を養子に迎えた後も、「世界旅行」と称して屋敷を離れて、我が子を迎えにアインツベルンを幾度も訪れたが、アハト翁の妨害に遭い、娘と再会することは叶わなかった。
聖杯戦争終結から五年後、士郎に看取られながら聖杯の呪いにより短い生涯を終える。享年三十四。
- 人物
- 悲劇から闘争から多くの人間を救うことを自身に課しているが、幼き日の出来事から私情を排し、救う優先順を命の数で判断することを信条とする。目標を達することでより多くの命が救えると判断したならば無関係の人間、さらには自分の近しい人や愛する人間すら利用し切り捨て巻き添えにすることも厭わない。自身を冷酷な戦闘機械として扱うが、「冷酷である」という人格を用意したわけではなく普通の人間と変わらない、むしろ普通より繊細な感情を持ち続けており、あくまで自分の意志で非情な思考と行動を貫こうとしていた。
幼き日は「正義の味方」に憧れていたが、アリマゴ島の惨劇の後からの過酷な日々で早々に憧れを消失しており、遂には正義を憎むまでになっていたが、それまでに犠牲や代償に失ってきた人々を無価値にしたくないという一心から止まることが出来ず深みに嵌っていった。
「戦場こそ地獄」「流血は悪」という考えからやり場のない怒りと嘆きを「英雄」という構造そのものに抱いているが、これは自身がかつて「正義の味方」に憧れ、絶望したが故の反動とも言えるもので、自身のやり方でも闘争が終わらないことは理解しており、それ故に人類という種全体が抱える「闘争」全てを終わらせるための奇跡を求め、アインツベルンの誘いに乗り聖杯戦争に参加することとなる。
魔術師としての彼を言葉で表すならば異端であり外道。戦闘に赴く場合は幾重にも張り巡らせた策・謀略と罠で「絶対に勝てる状況」を作ってから。戦いにおいても確実に相手を葬ることを第一とし、そのためなら狙撃、毒殺、公衆の面前での爆殺、人質作戦、だまし討ちなど徹底して手段を問わない。
魔術師としてだけでなくガンマンとしても異端であり、第四次聖杯戦争で使った銃を見ても「コストが高すぎる」「重すぎる」「スコープが銃本体より大きい」「照準が付けにくい」「連射ができない」など、「一般人」の戦場での実用性には致命的な欠陥を抱えたゲテモノ揃いである。
しかしこれらは全て、尋常な戦場にあらず条理の外にある魔術師を殺すための「魔術師殺し」衛宮切嗣としての装備であり、同時に彼の魔術礼装たる「起源弾」を最大に引き出すための「魔術師」衛宮切嗣の装備でもある。相手がどのような魔術を使うかも解らない状況での遭遇戦が多いであろう聖杯戦争で、「機動力」を損なわず「狙撃」「制圧射撃」「大口径弾使用による標的の沈黙」を行う事を想定すれば彼の銃のチョイスは非常に理に敵うものである。
その外道戦術で戦いを生き抜き、まだその腕前を買われてアインツベルンに招かれたが、愛する妻子を得て過ごした9年間の平和な生活で危うく脆弱に変化しており、聖杯戦争に勝ち残るために、かつての非情な思考と行動だけの自分に戻ろうとするだけでも相当な無理を強いられていた。これまで犠牲にしてきた人々を無駄にしたくないという想い、自分が負ければ聖杯戦争の過程で死ぬ妻の命が無駄になってしまうこと、勝たなければ娘が次の聖杯戦争で聖杯にされてしまうこと、そういった情のために勝とうと非情で在ろうとする矛盾、その他諸々から精神は軋みを上げており、自分を保つだけでも精一杯であった。セイバーへの拒絶もその弱さ故である。
第四次聖杯戦争を経てからは冷酷な戦闘機械としての顔は影を潜め、病院で初めて切嗣と会話した士郎から見た切嗣の第一印象は「とにかくうだつのあがらない、頼りなさそうなヤツ」であった。晩年は背広姿ではなく着物姿でいることも多く、穏やかな若隠居のような存在であった。
- 能力
- 起源は「切断」と「結合」。魔術属性はそれぞれの起源に関連した「火」と「土」の二重属性。マスターとしての適性はノーマルだが、魔術師の常道を裏をかき、魔術師が忌避する戦術と手段を多く持ちいる。「魔術師殺し」の異名はそれ故。
魔術を「研究する目的」ではなく「手段であり道具」と見ている異端の魔術師であり、礼装に銃火器を用いる希有な存在。
通常火器としてワルサーWA2000(AN/PVS04暗視スコープとスペクターIR熱感知スコープを装着)及びキャリコM950、魔術礼装としてトンプソン・コンテンダーと魔弾「起源弾」を用いる。なお、魔術刻印継承前に父を殺した彼だが、衛宮家が伝えた刻印をちゃんと持っている。ただし、協会が貴重な要所を回収した後の二割にも満たないものでしかない。
これはナタリアによる交渉のおかげで、刻印は彼の背中に刻まれている。
- 固有時制御
衛宮の家伝である「時間操作」の魔術を戦闘用に応用したもの。
本来儀式が煩雑で大掛かりである魔術であるのだが、「固有結界の体内展開を時間操作に応用し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する」ことで、たった二小節の詠唱で発動を可能とし、戦闘時に用いている。
問言は「time alter 〇〇 accel(加速)またはstagnate(停滞)」。〇〇には倍率を示す単語が入る。
なお、固有時制御を解除した後に世界からの「修正力」が働くため、反動によって身体に相当の負担がかかる。この弱点のせいで、通常は2倍速(ダブルアクセル)か3倍速(トリプルアクセル)程度の使用にとどめている。「全て遠き理想郷」を体に埋め込んだ時には4倍速(スクエアアクセル)※まで使用したが、それ以上の加速が可能かどうかは不明。
※4倍加速時のルビを「square accel」と表記しているが、これは誤りであると思われる。スクエア(square)は「四角、平方(=2乗)」などの意味があるが、「4倍」という意味は(少なくとも我々の世界では)含まれていない。正しくは「クアドラプル(quadruple)」であろう。
書籍版の重刷及び星海社文庫版で訂正されているかどうかは不明。『Fate/Zero』アニメ版では「スクエア」のままであった。
- 起源弾
自らの第十二肋骨で作られた礼装魔弾。
自らの起源「切断」と「結合」の複合属性(「切って」「嗣ぐ」=切嗣。修復ではなく、紐を切って結び直すようなモノ。そこには結び目が生まれるように、不可逆の変化を意味する)を、相手に発現させる。
この弾丸で穿たれた傷は即座に「結合」され、血が出ることもなくまるで古傷のように変化する。ただ、「結合」であって「修復」ではないため、「結合」されたところの元の機能は失われてしまう。
この銃弾は相手が魔術で干渉したときに真価を発揮する。弾丸の効果は魔術回路にまで及び、魔術回路は「切断」「結合」される。結果、魔術回路に走っていた魔力は暴走し、術者自身を傷つける。
その仕様上相手が強力な魔術を使っていればいるほど殺傷力が上がる(奈須氏の説明によると、RPG的に喩えれば、相手の保有するMP数値がそのまま肉体へのダメージ数値になるようなもの、とのこと)。
彼は前もって挑発や陽動を行うことで、相手に最大限の魔力で起源弾を防御させ、その効果を最大に引き出す戦術を用いてきた。
魔術的な防御を誘うため、口径には.30-06スプリングフィールド(大口径のライフル弾。個人装備で防ぐには、グレードⅣクラスの防弾装備が必須)を用いて物理手段による防御を封じている。
逃げ道を一本残しておきながら、そこに予測不能かつ致命的な罠をおくこのやり口は作中でも「悪辣」と評され、対魔術師兵装としては最高の性能を誇る。
材料が材料なだけに、弾数は66発しか作られていない。この内、切嗣は第四次聖杯戦争までに37発を消費。1発の浪費もなく、起源弾によって37人の魔術師を完全破壊してきた。
- トンプソン・コンテンダー
起源弾を発射するための銃。非常にシンプルな構造で、バレルといくつかのパーツの交換だけで拳銃弾からライフル弾まで様々な弾種を使用できるのが特徴。
コンテンダー(競技者)の名の通り、本来は競技スポーツ用の拳銃。威力・命中精度ともに優れるライフル弾を使用できることで人気を博した。
装弾数は1発のみ、排莢機構も無し、と実戦には向かない銃だが、拳銃として携行できる最大火力を求めて切嗣はこの銃を採用した。
なお、実在のトンプソン・コンテンダーは.30-06スプリングフィールド弾には対応していない。銃器的な意味でも魔術的な意味でも改造を施した特別製なのだろう。
(本編の一部描写には「コンテンダー・カスタム」と表記されている箇所もある)。ちなみに第四次聖杯戦争の後に発売されたコンテンダーの強化モデルである「アンコール」は.30-06弾を装填できる。
登場作品と役柄
- Fate/stay night
- 士郎の養父。かつて前回の聖杯戦争に参加した魔術師で、士郎にとっては憧れであり、生き方を決定づけた人。
- Fate/Zero
- 第四次聖杯戦争の参加者。
- フェイト/タイガーころしあむ アッパー
- 虎聖杯の中で目覚めた切嗣。目の前には死んだはずのアイリスフィールが。
どうもこのアイリ、切嗣の知るアイリとはどこかが違うようだが……?
- Fateゼロカフェ~Fate/Zero Cafeに集う英霊達~
- 妻アイリと娘イリヤを溺愛し、舞弥とは普通に師弟関係で、セイバーのことはやっぱり無視し続ける。
聖杯戦争らしい聖杯戦争が行われていない平和な世界であるにもかかわらず、銃器や爆発物を持ち歩く物騒な客。
- Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
- Fate本編とは異なる並行世界の存在。ちゃんとイリヤの父親をしているが、出番はとても少ない。
そして登場するたびに顔の大部分がフキダシやコマの端、ライティングやアングルの都合などで隠れている。
- とびたて! 超時空トラぶる花札大作戦
- 聖杯温泉を巡る戦いに乗っかった振りをして背後からマスターを狙う、「湯煙スナイパー大作戦」というアレな作戦を展開。
人間関係
冬木
- 衛宮矩賢
- 母親を憶えていない彼には唯一の家族。厳格だが優しい父親で敬愛していた。
- シャーレイ
- 潜伏先の島で出会った少女。衛宮家に仕えた家政婦で初恋の相手。
初めの頃は父親を取られたように感じて、屋敷に来る彼女を本気で疎ましく思った時もあったが
彼女の明るい気性と優しさに絆されるのに時間はかからなかった。知的好奇心が悲劇を起こしてしまい事故で死亡する。
- ナタリア・カミンスキー
- 賞金稼ぎもしくは情報屋で生計を立てるフリーの魔術師。切嗣が母親のように想った女性。
切嗣に賞金稼ぎのノウハウを教えたり魔術道具を与え、起源弾を製作したのも彼女。
- アイリスフィール・フォン・アインツベルン
- 最愛の妻。初めて出会ったのは培養槽越しでその時目を開けた彼女の瞳の緋色の奥底に魅入られた。
馴れ初めはアイリスフィールが培養槽から出た後から。彼女を犠牲にすることは子が生まれる前から何度も二人の間で話され、そのたび泣き、呪う切嗣を彼女は赦し励ましてきた。 - イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
- 最愛の娘。生まれた時に誰より愛おしい、世界を滅ぼしても守りたいと思った我が子。無茶な調整を受けた身の上を不遇と思わないぐらい幸多き人生であってほしいと願っている。
だがもし、自身が懐く理想が愛娘の犠牲を求めるならどうするか――最初から解っていた。 - 久宇舞弥
- 戦場で拾った少女。おそらく彼の生涯で父親に次いで付き合いが長い。自分と居れば遠からず死ぬと最初から確信を持ち「道具」として使い切ろうと戦いの技術や知識を教え込んだ助手であり相棒。
実際に総身を血に染め最期を迎えようとしてる状態を目にするまでその姿はいつか見るだろう「当然の末路」と達観していた。 - セイバー
- 第四次聖杯戦争で契約していたサーヴァント。
目指した場所は同じながらも行動指針は真逆であり、結局相容れることはなかった。
- 言峰綺礼
- 最大の強敵。
- 衛宮士郎
- 聖杯戦争終結時に助けた少年。身寄りがなくなった彼を自らの養子とした。
- 藤村大河
- 近所に住んでいる少女。切嗣を慕ってしばしば家を訪れていた。
- ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン
- アイリの創造者で、一応「舅」と呼べる存在。だがお互いに相手を利用する腹積もりで、聖杯戦争後完全に絶縁する。
とびたて! 超時空トラぶる花札大作戦
- イリヤ、美遊、クロ
- 平行世界から迷い込んできた娘達とその友人。だが「湯煙スナイパー大作戦」で人類の救済を目指す切嗣は彼女達を敵と判断し、銃口を向ける。そして彼が放った、ある心無い言葉は彼女達の心を深く傷つけてしまい、セイバー諸共ボコボコにされることとなる。
- 沙条綾香
- 出会ったのが、独り言言いながら(しかも途中から泣いてる)アイリ特製のケミカルな変化を遂げたおにぎりを食べている時だったので「キモい」言われてしまった。
名台詞
Fate/stay night
- 「―――うん。初めに言っておくとね、僕は魔法使いなんだ。」
- 病院で幼少期の士郎が切嗣に引き取られることを選んだ時に切嗣が「うちに来る前に一つ教えなくちゃいけない」と言った後に発した言葉。
「魔法使い」という表現は少々盛っているが「魔術師」ではあるのであながち間違いでもないのだが…この時はコミュニケーションの為のジョークと取るべきか。士郎はあまり覚えていなかったが、切嗣にとって士郎を引き取ると決まったこの日の事は思い出深い出来事だったようで、よく士郎に語って聞かせていたという。
- 「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」
- 晩年、士郎に語った言葉。
かつて「正義の味方」「英雄」に誰よりもあこがれていた切嗣だったが――。
そして、切嗣の憧れは、士郎の胸に根付くことになる。それは父にとっての救いであり、子にとっては呪いに近しいものとなってしまった。
- 「誰かを助けるという事は、誰かを助けないという事。
正義の味方っていうのは、とんでもないエゴイストなんだ」 - 晩年に正義の味方への強い憧れを見せる士郎に切嗣はこう言い聞かせる。「親しい少数より多くの他人」を秤にかけて常に多数を取るという信念を貫いてきた切嗣であったが、その度に深い絶望と無力感を味わってきた彼は士郎に同じ道を歩ませたくはなかった。
- 「そうか。ああ――安心した」
- ある月の綺麗な夜。引き取った士郎の持つ異常性、自分に過剰な憧れを抱く彼が自分と同じように後悔しか残らない正義の味方への道を歩むのでないか不安を持っていた切嗣だったが、彼との語らいの中で、彼が自分と違って初心を見失わない正義の味方になる希望を見出し、この言葉とともに息を引き取った。
この夜の出来事は切嗣にとって最後の救いであり呪いでもあり、そして士郎にとっても呪いであり救いでもある。
Fate/Zero
- 「当然だろう。およそ僕ぐらい騎士道なんてものと程遠いところにいる男はいないぜ」
- 騎士王と暗殺者が足並み揃えて戦う事は出来ないだろうと相性の悪さは目に見えていたが、最強を誇るサーヴァントを有効に使おうと召喚する事を決めた。
- 「誰よりも激しい生き方ばかりを選んできたくせに、この男の人生には、ただの一度も“情熱”がない。こいつは――きっと、危険なヤツだ」
- 言峰綺礼の経歴を見て評した言葉。この評価は正しく、最終決戦で激戦を繰り広げた。
- 「いやいやイリヤ、あの枝はサワグルミといってだな、クルミの仲間なんだよ。だからあれも、クルミの冬芽だ」
- 「するする。もうサワグルミはなし」
- もう遊んであげないと言われたので謝りつつも今度はノグルミがあるなと胸の中では考えており全然反省していない。大人げない父親だった。
だがノグルミの樹は見当たらなかったためか今回の勝負はイリヤが勝った。
- 「……あんな馬鹿に、世界は一度征服されかかったのか?」
- いきなり真名を名乗ったライダー (第四次)の第一印象。
征服王の豪快かつ奔放すぎる性格には、さすがに呆れていた。
- 「もし僕が今ここで、何もかも抛り投げて逃げ出すと決めたら――アイリ、君は一緒に来てくれるか?」
- 考え得る限りにおいて、衛宮切嗣が絶対に口にするはずがない言葉だった。そのためアイリは驚きのあまり言葉を失った。そしてこの男がどれほどの瀬戸際に追い詰められているかをこのとき理解したのだ。
- 「いいや。そこのサーヴァントには話すことなど何もない。栄光だの名誉だの、そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者には、何を語り聞かせても無駄だ」
- アイリはなんとか切嗣とセイバーの仲を取り持とうとするが、にべもなく切嗣は無視を続ける。
- 「なのに人類はどれだけ死体の山を積み上げようと、その真実に気付かない。いつの時代も、勇猛果敢な英雄サマが、華やかな武勇譚で人々の目を眩ませてきたからだ。血を流すことの邪悪さを認めようともしない馬鹿どもが余計な意地を張るせいで、人間の本質は、石器時代から一歩も前に進んじゃいない!」
- 切嗣が英霊そのものを軽蔑していることの独白。セイバーは戦場にも誇りが、決して侵してはならない法と理念があると信じるが、戦争そのものが地獄と、巻き込まれ、蹂躙される民からすれば騎士道など一切関係の無いと見ている切嗣からすれば、セイバーの信条は到底許容しがたいものであった。それが、かつて自分が憧れた姿であればあるほど。
- 「今の世界、今の人間の在りようでは、どう巡ったところで戦いは避けられない。最後には必要悪としての殺し合いが要求される。だったら最大の効率と最小の浪費で、最短のうちに処理をつけるのが最善の方法だ。それを卑劣と蔑むなら、悪辣と詰るなら、ああ大いに結構だとも。正義で世界は救えない。そんなものに僕はまったく興味ない」
- 彼の本質を端的に表す台詞。誰も取りこぼすことなくすべてを救う「正義の味方」「英雄」に誰よりもあこがれた切嗣。しかし、その理想を追えば追うほど、それは不可能であるという現実を思い知らされてきた。その結果が、今の切嗣の在り方だった。
- 「終わらぬ連鎖を、終わらせる。それを果たし得るのが聖杯だ」
- 「世界の改変、ヒトの魂の変革を、奇跡を以って成し遂げる。僕がこの冬木で流す血を、人類最後の流血にしてみせる。
- そのために、たとえこの世全ての悪を担うことになろうとも――構わないさ。それで世界が救えるなら、僕は喜んで引き受ける」
- セイバーの体現する正義や騎士道を否定しつつも、今の自分のやり方でも悪や憎しみの連鎖による戦いの連鎖もまた延々と続く。それをわかってなお止められない切嗣が切望する聖杯の奇跡。――しかしただの喩えとして口にしたその言葉が、真に何を意味するのか、この時の切嗣には知るよしもなかった。
- 「あんたは――僕の、本当の家族だ」
- ナタリアとの最後の通信で。その思い、その言葉は強く、そして儚く。少年は「愛しい家族」より「顔も見知らぬ大勢の人」を選ぶ。
- 「ふざけるな……ふざけるなッ! 馬鹿野郎ッ!!」
- ナタリアを手にかけ、吼える切嗣。正義の代償。理想の代価。この呪いと怒りを、切嗣は受け入れる。これが、少年の日の終わり――
- 「それでいい。言ったはずだ。――僕は、オマエを担うと」
- それは数日前に喩えとして口にした決意の言葉。
- 頬を伝う涙の意味さえ忘れ、黒いドレスの女を絞殺しながらそれを受け入れた。
フェイト/タイガーころしあむ アッパー
- 「アイリー!くそっ……何がどうなっているんだ!」
- 切嗣シナリオにて。攫った方も攫われた方もシリアスさが皆無のなか、切嗣だけが真面目なリアクションをしていた。
- 「わっ、大河ちゃん?!
やぁ、すっかり女っぽくなったなぁ。相変わらず剣道やってるのかい?」 - 大河と再会した時のセリフ。何やらほっこりした顔グラと合わせて完全に親戚のおじさん状態である。
甘やかしていたというのは本当だったようだ。
- 「ああ、セイバーにも協力してもらいたかったが、あの様子では助力を請うのは無理だな……」
- アイリを士郎と共に探しながら。心底不思議な様子だが直前のシーンで共演しているにも関わらず、一言も話しかけていない。ちなみにセイバーは切嗣の態度が
相変らずだから聞く耳持たなかったのではなく、士郎いわくアイリと聞いて飛び出していったらしい。
- 「言え、化け猫。アイリをどこへやった。言わなければ体に聞くまでだ」
- アイリを連れ去った連中の一味であると思い捕まえた猫アルクに対して。薄い本を想像したくなる台詞だが、実際はキャットニップで餌付けという穏当な方法だった。
……似たような状況で間桐鶴野が右手を拳銃で吹っ飛ばされたのとはえらい違いである。
- 「ああ、ついに娘に反抗期が来ちまった!
殺すとかきっついなぁもう!」 - 平行世界の娘に「キリツグ殺す」と言われてショックを受ける。
- 「イリヤ、女の子がシメるとか言っちゃいけません!
言うこと聞かないとお尻ぺんぺんだぞー」 - 上記の続きの会話。反抗期扱いされた事に一回シメると発言したイリヤにこの対応。もはやただのお父さん。
まあ当然というか、この発言で更に娘の怒りを買った。イリヤシナリオで再会した時はジャーマンスープレックス等の攻撃をイリヤから受けた。
- 「いやー、娑婆の空気はうまいなー」
- 事件も一段落し衛宮邸で家族仲良く食事をしていた。お前は刑務所にでも入っていたのかと言いたくなるような台詞である。
- 「すまない、せっかくの貴重な時間なんだ。コントなら向こうでやって貰えないだろうか」
- アイリルート。突然現れ突っかかってきたキャスターに淡々と対応した。キャスターと一緒にいた葛木先生が隠し芸の練習をしているからコント言うのも仕方ないのかもしれない。
- 「お蔭様でね、いつも迷いっぱなしさ。
僕はこの手で、大切な者をたくさん亡くしてきた。だが、お前のような神父に懺悔は望まないさ」 - 同上。言峰と対峙しての台詞。突然のシリアス。
- 「これ、フォークです。さあどうぞ。自慢の妻の手料理を」
- 『ファンタズムーン』シナリオにて。フォーク は某うたわれでの切嗣とファンタズムーンの中の人ネタ。切嗣シナリオやネコアルクシナリオでもこの二人の声優ネタがある。
ちなみに切嗣はアレな物を進めているのではない。この時の料理はセラ付き添い、アイリは調味料一切触ってなく、切嗣も味は確認済みである。
- 「新しいデジカメも買ったし。驚いたよ、電子機器の性能がここまであがってるなんて。凄いだろうこのデジカメ。なんと1200万画素もあるんだぜ?」
- 「覚悟しろ、ただ倒すだけじゃない!何がどうあっても弁償、ないし修理させるまで僕は倒れない……!」
- カレンシナリオにて。ビル爆破し放置した男が大事なコレクション(デジカメ)を壊され怒っていた。
とびたて! 超時空トラぶる花札大作戦
- 「セイバーのヤツ、やればできるじゃないか……
容赦なく弱点をつくあの冷酷さ……いい……」
「ちょっと見直しちゃうな……
普段もあれぐらいド外道なら、楽しい戦場ジョークを言い合ったり、二人でランサーをいたぶったりできるんだけどな……」 - バーサーカー陣営シナリオにて、怯えるランスロットを問い詰めるセイバーを確認してのコメント。楽しい戦場ジョークの内容が気になるところ。
- 「……アイリ、油断するな」
「このライダーのマスター。見た目とは裏腹に、慎重かつ大胆に事を運ぶ――
男、でいいのか……?」 - 「僕としては、彼の髪形を変えて欲しい」
「……うっかり、助手の舞弥と間違いそうだからだ」 - ライダー陣営シナリオに中ボスとして現れた際の、各方面に対してひどい台詞。うっかり髪型がカブってるとか言ってはいけないことを平然と言う、まさに外道。
なお、重い展開しかない本編の切嗣の数少ない笑いどころ、ウェイバーに対する妙な買い被りはギャグ時空でも勿論健在である。
- 「……舞弥、悪いが旧ソ連の軍人と話をつけてくれ。
原潜のSLBMで、冬木市諸共キャスターを吹き飛ばす!」 - キャスター陣営シナリオ。イリヤの存在に食いつき、アイリに「紹介して!」とねだった龍之介と彼女の娘なら芸術品として称賛されるだろうと発言したキャスターに対して。
父親として当然の感情であるが、犠牲者の人数だけを考えたら切嗣の方が冬木市民には脅威である。
- 「アイリの作ってくれた手料理だ。食べるさ。食べるとも。
たとえそれが、劣化ウランじみた変化を遂げたおにぎりでも」
「もっきゅもっきゅ。ああ……僕は幸せだな……くそ……幸せすぎて涙が出てきたぞ……」 - Fate/Prototype陣営シナリオにて。衛宮邸で綾香達が切嗣を見つけた時、彼は妻の手料理を食べ続けていた。
何だか泥を浴びなくても、十年経たずに逝ってしまいそうだ。
それにしても彼が「もっきゅ、もっきゅ」という擬音を出しながら食事をしている場面は酷くシュール。
- 「惑わされるなアイリ。これは敵の撹乱だ。あれは……イリヤではない」
「ああ、似ても似つかない。ましてやウチの娘があんなふざけた恥ずかしい格好をするはずがない」 - Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ陣営シナリオ。平行世界から訪れたイリヤ達に出会って。
必死に自分を切嗣とアイリの娘だと主張し、説得しようとし続けているイリヤを偽物と全否定して言い放ったのがコレ。
ただでさえ、両親に「自分たちの子供じゃない」と否定されるのは辛いのに、イリヤ達に言ってはいけないことを遂に言ってしまった。
彼女たちが来たのは、切嗣とアイリが最も幸せになれる世界なのだが、彼はそれを知らない……。
Fate/Zero一期BD-BOX特典CD
- 「そうだ、ただの器だ。役目はどうあれ、在りようとしてはビールのジョッキと大差ないものなんだ。
なんでそいつが手足を生やし、いっぱしの口を利き、使い手に説法するようなことになる。意味が分からん。」 - 人の姿をしていることにやりずらさを感じて悪態をつき、文句しか言わない。
- 「正気の沙汰じゃない。いくらホムンクルスとはいえ、あんたが手ずから作った娘だろうが!」
- 身を守る事も満足に出来ない欠陥品なら叩き壊して違う器を用意して貰った方がいいとアイリに言っておきながら、このあと狼や怨霊もいる吹雪の中迎えに行った。
優しさは性分であり長所であるが、その場の感情で動き過ぎではないだろうか。
- 「君は、自分の価値、存在意義についてはあくまで理屈の上では認識しているようだが
この世に生まれ落ちた事、自分に課された使命について、喜びや誇りを感じるか?
今回蔑ろにされたのは、君のそういう部分なんだよ」 - 使命を果たすことも出来ず死にかけた原因である切嗣とアハト翁に怒りを懐かないその在り方を否定し、闘争には怒りの感情が必要だと説明する。
- 「それならまず、君は自分自身に関心を持て。君の人生とその舞台となる世界に喜びを探せ。
そしてそれらを損なう出来事を決して許してはならない。そうすれば、君は怒りという感情を手に入れられるはずだ。」 - 「まったく!こんなところから面倒を見なきゃならないなんて…分かった!僕が教えてやる。
そうだな、まずは君の、あぁ…一々こんな呼び方ってのがまず無い。
君には、名前は無いのか?器とかホムンクルスとかじゃなく、君固有の呼び名は?」 - 切嗣は後に思い知る。死に追いやる相手に感情を与えようとした自分の愚かさと残酷さを。
- 「……君が望むなら、運命に背を向けることだって出来るんだ」
- 「君が心底から人間に憧れるなら、残りの寿命を、ただ平穏な日々だけで過ごしたいと望むなら、逃げ出せばいい。」
- 意思を備えたものは道具じゃ無い、道具でなくなったものは自分の意思で戦うか決めるべき。
アイリに逃げ出すか使命を取るかを自身で選ぶべきだと述べた。
- 「そうだ。今あるすべてを捨て去ることで、君は一からやり直す事だって出来る。君がそれを、望むなら…」
- すべてを失えと言うのかと問い返したアイリへの返答。
- 「…いや、その…僕の方にだって都合というものが」
- 「男女の愛情というのは、そんな生易しい話じゃないんだ! ああ、まったく!
こんなところから説明しなきゃならないなんて…分かった。とりあえずは教えてやる。
自分がどれだけ見当違いな事を言っていたのか、君はすぐにも、思い知ることになるだろう」 - 自分の心の持ちようの話だから貴方に迷惑はかけない、と言うアイリに対して。
アイリはこの返答に興味深い、とても期待してると実に楽しげ。無邪気って強い。
- 「君を救う手立てがあるなら、このまま君を愛し続けることもできるだろう。
だが、それをすれば今日まで僕が犠牲にしてきたものすべてが嘘になる。この手で生贄としてきた命が、なにもかも無意味になる。
僕は君を死なせることでしか、ここまで積み上げてきた負債を清算できない。そんな僕に、君を愛する資格などあるものか!」 - 自身が積み上げてきた屍の山を無意味にしないために聖杯を手に入れ願望を叶える。それは彼女を殺すということ。
そんな相手を愛せないし、愛しては駄目だと愛されることすら拒んだ。だがこれすでに愛していると告白しているようなもんである。
- 「君を救えない僕も、希望を持たない君も、愛し合うことなど不可能な生き物なんだ。
現に、君は僕を愛すると言いながら、結局未だに、君自身を愛することが出来ていない。
滅びることに悲しみの感情を懐かないのが、その証拠だ。」 - 愛情とは相手に救済と希望を願い祈りを託すこと。救いも希望も無い、互いに未来が無い自分たちはそれが出来ないと心境を吐露した。
- 「ああ、そうか…どうやら僕は、君には敵わないようだ。」
- 完敗であった。
- 「どうか、強い子どもを産んでくれ。僕たちの戦いの果てに、新しい希望を受け継いでくれる子を」
- 切嗣とアイリにとって、イリヤは自分たちに無かった聖杯戦争後の未来。
その他の作品
- 「ずいぶん、かわいらしい格好だな」
- 『アーネンエルベ狂想曲』にて。セイバーに令呪の行使以外で話しかけたのは、これがシリーズ初。直後に話しかけた事を後悔している。
なお、アーネンエルベから立ち去る時にアーチャーとすれ違うが、切嗣を見たアーチャーはぎょっとした表情を見せていた。
- 「あとはまかせたぞ士郎!!」
「とにかくまかせたぞ士郎!!」 - 『コハエース』にて、主にイリヤのヒロインとしての将来性など、自分の死後に山積する諸問題を苦渋の思いで士郎に丸投げする。
- 「――アイリ…君は、僕といて……幸せだったかい?」
- 「でもね、僕は…誰も泣かない世界を作る事は……出来なかったんだよ?」
- 「ああ。僕は正義の味方に、なる事は出来なかったけれど――きっと士郎が、想いを明日に、繋いでくれる」
- 『TYPE-MOON Fes』でFate/Zeroの楽曲前にあった切嗣とアイリの会話。そばにいられて幸せだったと、切嗣が信じ貫いた理想はとても尊いものだったとアイリは告げる。
そして切嗣も、届かぬ祈りだったが士郎という新しい希望を見つけることはできたと話した。一日目と二日目で台詞や声の演技が少し違う。
メモ
- 一人称は「僕」。こんな恐ろしいオッサンがボクって……
- 一方士郎の方からは「爺さん」と呼ばれていた。
- 直接の死因は「この世全ての悪」の呪い。聖杯に選ばれながらも拒絶したために、第四次聖杯戦争終結後も呪われ続けた。切嗣を選んだのは「この世すべての悪を担っても構わない」と聞き呼ばれてるから応えようとした。また”在り方”が限りなく聖杯に近いから願いを叶えるのに相応しい人間と認識したため。
- 「魔術師殺し」として活動した期間は意外に短い。享年から逆算するとアインツベルンに迎えられたのが20歳ごろ、ナタリアと一緒に仕事をするようになったのが10代前半、死別して独り立ちしたのが10代後半と思われるため、その期間は数年程度であり、以後は第四次聖杯戦争まで活動を控えていた。
つまりその数年間に「起源弾」で葬った魔術師だけで37人、もちろんその他にも魔術師たちを魔術師らしからぬ手段で殺害してきたことになる。さらにその合間に世界各地の紛争に武力介入している。 - その信念もあって、呼び出すサーヴァントは自分に扱いやすい「魔術師」か「暗殺者」クラスを所望していた。それが真逆のセイバーだったのは皮肉としか言い様がない。
さらにいえば、彼の望んだ「騎士道にこだわらず、情も捨てて戦えるサーヴァント」に信念の継承を試みた彼が該当するのもまた皮肉と言える。 - あの鞘を使う以上召喚される人物は決まっており相性の悪さは承知の上であったが、ケイネス戦の時にランサーをこちらに来させた事に「扱いに困る駒」「自身のサーヴァントは慎重に選ぶべきだった」とあり方の違いを痛感していた。
- そもそも、そのあり方の違いに対してすり合わせを全く行っていない切嗣の方に大分非があるのだが、その辺りは後述するように、精神的に追い詰められていたため冷静な判断が取れなかったと言うのが大きい。
- セイバーと性格的に相容れなかった一方で、彼女にかけられた呪いを解くためにランサー陣営を最優先に襲撃したり、「約束された勝利の剣」の被害が周辺に及ばないよう配慮したり、カスタムV-MAXを手配したりとその能力を活かすことには余念が無かった。マスターとしての手腕は確かであり、セイバーもその点は認めていた。
- 彼と契約していた時のセイバーは幸運がDランクと、理不尽なほど低下している。反面、騎乗スキルはAランクに向上してマシンも扱えるようになっており、彼のマスター適正の傾向が窺える。
- セイバーを無視する態度はシリーズを通して徹底しており、『タイころアッパー』でセイバーと再会した時も彼女の存在を無視した。
- セイバーを無視していたのは、栄誉を重んじる騎士道など、戦いに関する価値観が違い過ぎるから。アイリの考察によると「アーサー王が実は女性だった」という事実に対して憤ったのもある模様。
男性であると期待していたのに伝説との食い違いに失望した、ということではなく、王の重荷を一人の少女に背負わせた周囲の人間たちとそれを受け入れたセイバーの生き方を許容できなかったため。後に士郎も同じ様に怒り、セイバーと衝突したが、彼は言うだけ無駄と諦めて口にしなかった。 - また士郎と違い切嗣はセイバーの境遇の件があるにしろ初戦のランサー戦時に「己の手駒」の力量を見極めておくのもいいかと思っており道具として使おうとしていた。
- それに加えて、第四次当時の切嗣に精神的余裕が少なかったこともある。「守るものがない」ことがかつての彼の強みの一つでもあったのに、アインツベルンで『家族』を得てしまったことで精神的に弱くなっていた。そのうえ、「危険な敵」言峰綺礼に狙われることで、セイバーとの妥協や説得すら受け入れられないほど追い詰められていた。
- セイバーから「若き日の本当の貴方は、『正義の味方』になりたかったはずだ」と指摘される以前に切嗣がセイバーに示してきた態度は黙殺か冷ややかな蔑視だけだった。
だがこの時初めてその二つ以外の感情を向けた。それは怒りの情念だった。 - アインツベルン城でのセイバー同席の上での作戦会議の後は聖杯戦争からアイリを連れて逃げ出すことを提案するほどの弱さを見せ、ランサー消滅後のセイバーの糾弾にも英雄や正義への憎しみの感情を発露するなど、無視してなおセイバーと関わると激しい感情の揺さぶりを起こしている。
- セイバーを無視していたのは、栄誉を重んじる騎士道など、戦いに関する価値観が違い過ぎるから。アイリの考察によると「アーサー王が実は女性だった」という事実に対して憤ったのもある模様。
- アインツベルン城で弱気になり嗚咽を漏らしたのは、当初から危険視していた相手に行動を読まれ負ける可能性が浮かんでしまったからで自分の命惜しさからではない。暗殺者にとって狩られる側に立たされることは最大の悪夢だが、かつては己の窮地でも冷淡に最善の打開策を見出すことに専念できる強さを持っていた。それは「愛する者を喪う」恐怖とは無縁でいた故の強さだった。
- 最終決戦前に言峰の目的が分かってからは言峰に懐いていた畏怖や危機感は微塵もない。恨みを買った原因も興味ない。どんな強敵でも「殺人機械」にとってただの障害物で「排除すべき敵」でしかなくなった。
- 魔術回路を励起させると術者の体温に独特の変化パターンが表れることを発見しており、体温の探知に魔術を用いないことで、魔術師相手に完全な不意討ちや策敵を可能にする応用戦術を編み出した。ワルサー狙撃銃に、携行性を損なうのを承知で熱感知スコープを取り付けているのはこのためである。
- 「人生のあらゆる局面で女性を惹きつけ、なおかつその悉くを不幸な末路に追いやってしまう」というジンクスを有している。その魔手から逃れられたのは藤村大河ただ一人。
- 大河を可愛がっていたのは初恋の女性に似た雰囲気があったためらしい。
- 『Fate/Zero』著者・虚淵氏によれば、「正義の味方」としての格は同姓の英霊より大いに劣るとのこと。
- 切嗣は多数を守るという理想を追求していった結果正義の味方を諦め、士郎(アーチャー)は正義の味方になるために多数を守る理想を追求していった。ただし、どちらも自分の情を入れない点で共通している。また切嗣は初期に憧れを喪失し、正義を呪うまでになりながら「今までの犠牲を無駄にしたくない」という一心から深みに嵌っていった。
- 第四次聖杯戦争終了後から死亡するまでの間に大聖杯の位置を探り当てており、次の聖杯戦争が行われるだろう約六十年後までに大聖杯を破壊しようと仕掛けを施していた。目算では、三十~四十年もあれば破壊できるだけの魔力の「瘤」ができる筈だった。
ただし、第五次は第四次の十年後という、切嗣の予想外に短い期間の後に起こってしまったため、この仕掛けが効果を発揮することはなかった。
さらに、桜ルートでは凛と桜の死闘によって洞窟が破壊されたため、仕掛けじたいが完全に無用のものと化した。 - 士郎に「魔術回路を逐一作り直す」「強化魔術」という非効率な魔術を教えたのはワザと。本心では魔術を教えたくなかったが、強さを求める士郎を納得させるために、成果の出ない方法を教えた。
しかし士郎はこの使い物にならない魔術の訓練を5年以上も続け、ある未来においては自分だけの境地に辿り着いてしまうこととなる。 - 愛銃がトンプソン・コンテンダーになったのは、虚淵氏の強い要望によるもの。『stay night』発売当時、彼の礼装が銃だったことを知った氏が、「魔術師の銃」に相応しい変り種かつ破格の大火力、そして映画『ハード・ターゲット』での活躍が印象的だったこの銃を推したのが事の発端。
『Zero』を書くきっかけになった銃という氏の言の通り、劇中でこの銃の設定と威力はくどいほど力を入れて描写されている。 - 「切嗣」という名前をつけたのは原作者奈須氏だが、この名から「起源弾」の効果を考えたのは『Zero』作者の虚淵氏。
- 切嗣の死後、コンテンダーと「起源弾」がどうなったかは不明。Fateルートにおいて、士郎とセイバーが家中を探し尽くしたが武器らしいものが見つかる事はなかった。
- 手先が器用で銃の整備などは手早くこなせるのだが、精密機器の修理が実は苦手である。これは「起源弾」の説明にある通り、切嗣の起源が「切断」と「結合」=「不可逆の変質」であるため。
僅かな構造の変質さえ致命的となる精密機器は、彼が手を加えれば加える程、直るどころか逆に壊れていってしまうのである。また、彼の起源とはまるで無関係だがとは荷物の整理なども苦手なようで、士郎曰く「さんざん散らかしながら」無理やり詰め込むといった有様だったという。 - ナタリアの影響で煙草を愛飲していたが、アインツベルンに入ってからは吸いなれた銘柄が手に入らなくなったという理由もあるが、それ以上にアイリとイリヤへの心遣いで禁煙していた。
だが聖杯戦争のため冬木に入った際に戦争の本番ということで昔の習慣のままなんとなく買い吸い出した。10年近く吸ってなかったというのに、その味わいは切嗣にとってコンテンダーの感触と同様に慣れ親しんだものだった。 - 舞弥とは愛人関係、かどうかは言葉の定義次第。切嗣にとってアイリを聖杯完成の犠牲にするのは誰が何と言おうと「妻の愛情に対する裏切り」以外の何者でもなかったので、その裏切りにおいて躊躇しない自分を求めていた。彼にとって舞弥との肉体関係は裏切りの予行練習であり、自分を強く保つための一種の自虐行為。浮気の理由としては下の下だが、当の舞弥がそれを良しとしてるので、限りなくネガティブスパイラルだった。
- イリヤには裏切ったと誤解されたまま亡くなったが、切嗣本人はイリヤの事を溺愛している。もしイリヤに恋人が出来たら、容赦なく排除するらしい。それは例え士郎でも例外では無いとか。
ちなみにこれはカーニバルファンタズムでの発言である。 - 見た目と性格に反して味覚はかなりのジャンクフード舌で、blu-rayBOXⅡの特典ドラマCDの中で食事を作ってくれる士郎に「和食ばかりでなくたまにはハンバーグとかも…」などと発言しておりそれを士郎に叱咤されるなどなかなか意外な一面を見せている。アインツベルンの宮廷料理に慣れきった彼には、むしろジャンクフードの殺伐とした味が心地よいのかもしれない。
- 第四時聖杯戦争中に某ハンバーガーチェーンの食事を摂った際の感想は「なにより作業の手を止めず、機械的に口に運ぶだけで栄養補給が出来るのが素晴らしい」(要約)。
どこぞのダメ執行者を彷彿とさせる独白である。
- 第四時聖杯戦争中に某ハンバーガーチェーンの食事を摂った際の感想は「なにより作業の手を止めず、機械的に口に運ぶだけで栄養補給が出来るのが素晴らしい」(要約)。
- 彼に付き従った2人の女性が、2人とも「元々人間性がなく(失って)、切嗣に出会って感情が芽生えて(殻を得て)」おり、かつ「切嗣を全肯定してくれる」女性である事については興味深い。
それは元々彼女達が持っていた性質なのか、それとも切嗣が求めた性質なのだろうか。 - 傭兵のようなことをしていた時のことは記録上は戦場が最も激化し破滅的になった時期に赴いてることになっているが、つまりこれは切嗣が赴く前をピークに切嗣の活動開始後は戦場が収束に向かっていたということになる。幸か不幸か、聖杯戦争以前は天秤の測り手としての行為は上手くやれていたと思われる。