概要
大本の「ユグドミレニア」という一族は北欧からルーマニアに渡ってきた魔術師で、決して歴史が浅いという訳でもなかった。事実、ダーニックは貴族の縁談を持ちかけられるほどの能力と周囲からの評価があったが、80年前、ある魔術師が流した彼らの魔術回路の質に対する悪評が広まり、門閥社会から弾かれるようになってしまった。それにより「魔術師として血を濃くし、初代が選んだ魔術系統を極め、根源に至る」という通常の方法を彼らは諦めねばならず、手段を変えねばならなかった。
そこで彼らは単純に歴史が浅く魔術回路が貧弱な一族、「衰退が始まり魔術回路が枯渇しかけている」一族、魔術刻印を事故で失った一族、権力闘争に敗北し没落した一族、協会からペナルティを受け賞金を懸けられた魔術師など、魔術師社会の中心から弾きだされてもまだ根源への到達を諦め切れないでいる魔術師達の一族を掻き集め、こう持ち掛けた。「血を遺したくはないか? 研究成果を己のものだと謳い上げたくないか? 一族の名を歴史に刻み付けたくはないか?」と[注 1]。
現在では「ユグドミレニア」というファミリーネームはそうして吸収された家門の末裔たちを示す名として用いられている。彼らは魔術刻印すら統一しておらず、かつての家系の刻印をそのまま継承し使い続けている。そのため扱う魔術系統が幅広く、西洋型錬金術・黒魔術・占星術・カバラ・ルーン・陰陽道など多種多彩なものとなっている。だが所詮は衰退した一族や歴史の浅い一族の連合であり、平均として二流、稀に一流が出るが多くはそこ止まりで、ダーニックの工作もあり、貴族たちからは数が多いだけの一族であり脅威にはならないと軽視されていた。
「千界樹」の名の通り、長い年月をかけて薄く根を伸ばしていくように、刻印そのものの機能を大部分喪失させ、「ユグドミレニア」という名ばかりの血族が増えるほうを選んだ[出 1]。重要な点は、この刻印には赤の他人であろうが他の刻印を移植していようが、まるで腕に貼り付けたシールのように容易に移植が可能[出 1]。この刻印の機能はほんの僅かな同調観念と「ユグドミレニア」に連なる者であるかどうかの判断が可能のみ[出 1]。あらゆる特殊性を喪失して最後に残った普遍性こそが、このユグドミレニア一族の異常な増殖に繋がった[出 1]。尤も、それで魔法に到達しようが、根源に至ろうが、決してユグドミレニアへの賞賛になるわけがないのだが、ただ「名を残す」という我欲を突き詰めたのが、ユグドミレニアという薄い血族の証の証と考えられる[出 1]。
「魔術協会からの独立」を掲げているが、元時計塔所属の人物が多い事もあってか、正しくは「時計塔の貴族体制からの独立」が主目的と言える。協会の方も彼らの独立を危険視しているものの、積極的に対策を講じたりしているのは現在の所、時計塔の人間のみである。
協会や聖堂教会にも一族のエージェントは潜伏しており、聖杯大戦においても諜報活動を行っている。当然のことながら、そういった諜報分野に属する者は「ユグドミレニア」の名を使っていない。
ミレニア城塞
ユグドミレニアの本拠地。ルーマニア・トランシルヴァニア地方に位置する都市・トゥリファス最古の建築物であり、ダーニックが第三次聖杯戦争で御三家から奪った大聖杯が隠匿されていた。
トゥリファスという街の半分を占めていることもあってか[出 2]、人口2万人の小さな街としては明らかに不釣合いな威容を誇る。実用性一点張りの造りで、夜にぼんやりと浮かび上がるシルエットは亡者が蠢く地獄の釜を連想させる。そのため街の住民は不吉な印象を抱いており決して近寄ろうとはしない。私有地に立つ個人の物件というのもあるが、呪われた城として恐れられているため観光名所にもなっていない。
ヨーロッパ諸国の名城以上の大きさと複雑さ、さらにはユグドミレニアが60年備蓄していたありとあらゆる魔術礼装と防衛魔術の組み合わせで信じがたいほど強固な代物となった[出 2]。城内はハルバードを手にした戦闘用ホムンクルスが昼夜問わず警備し[出 2]、監視用のゴーレムが放たれている。城門や城壁にも種別の異なる強烈な妨害と探知の魔術が無数に敷き詰められており、サーヴァントでも攻め落とすには相当の破壊力が必要とされる。裏門の側にも、渡るものを阻む濁流の川や方向感覚を狂わせる幻術が仕込まれている。
一番の高地に存在するため都市の全域を見渡すことが可能で、トゥリファスは実質、一族の支配下に置かれており、街の住民や各施設には一族が潜んでおり侵入者への警戒を行っている。また城塞の監視がしやすい場所や戦闘に適した土地は探知や目眩ましの結界が仕込まれており、聖杯大戦中はキャスターの造りだしたゴーレムが要所にトラップとして潜んでおり、一部の柱、床、天井には胴体を感知次第迎撃行動に出る[出 2]。
城塞の壁がぐるりと市の一部を取り囲んでおり、市内は16世紀に建設された民家が軒を合わせているため、対軍宝具、もしくはそれ以上の宝具の使用が難しくなっている。位置的には都市の北側、最東端に位置し、更に東側には三ヘクタールもの広大なイデアル森林と草原が広がっている。森の側から城塞を見ると高く切り立った崖となっており、侵入は難しい。後に“黒”と“赤”の総力戦の舞台となる。
人物
- ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のランサーのマスター。『Fate/Apocrypha』時点でののリーダー。
- フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のアーチャーのマスター。
- カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のバーサーカーのマスター。『Fate/Apocrypha』終了後時点でのリーダー。
- ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のセイバーのマスター。ムジーク家の当主。
- セレニケ・アイスコル・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のライダーのマスター。
- ロシェ・フレイン・ユグドミレニア
- 聖杯大戦における黒のキャスターのマスター。
- 相良豹馬
- 聖杯大戦における黒のアサシンのマスターに本来なるはずだった人物。
- レミナ・エルトハイム・ユグドミレニア
- 聖杯大戦時はロシェよりも年少だったためマスターに選出されなかった。
- 10年後の『Fate:Lost Einherjar 極光のアスラウグ』ではユグドミレニアの再興を目指して亜種二連聖杯戦争にマスターとして参戦した。
関連組織
メモ
- 結局、「ユグドミレニアの血は長くはもたない」という悪評を流した魔術師の正体は不明である。実際のところユグドミレニアが順当に血統を強化していけばどうだったのかも不明。
- 前述通り魔術刻印は統一されていない、もっと下世話なことを言うと、政略結婚、そして子を成すことによる血族の統合はさほど起きていない様子。古今東西色々な魔術系統の者がいる為、血が上手く混ざらないのかもしれない。
- 『strange Fake』では『Apocrypha』と同様半世紀以上前にユグドミレニアの力が衰退し、そのまま門閥が解体された事が語られている。
- 直近の過去と思われる『氷室の天地』では第五次聖杯戦争前年末にルーマニアのトゥリファスで大規模な爆発があったことがラジオニュースで伝えられているが、それが時期的に門閥の解体に繋がったのであろうか?
- 『Fate/Grand Order』にて、ビリー・ザ・キッドの幕間の物語「荒野の七騎」に、「落ちぶれた一族」「黄金の復讐」等のどこかで聞いたフレーズを発言する魔術師が登場している。この世界のダーニック当人では?とも一部では言われているが、詳細は不明。
言及作品
脚注
注釈
- ↑ 『Fate/Apocrypha material』185ページ「ユグドミレニア」の項によると、なのかもしれない、と語られている。