ケイローン

2023年6月16日 (金) 00:21時点におけるAdgmptetuna (トーク | 投稿記録)による版 (→‎メモ)
黒のアーチャー
真名 ケイローン
外国語表記 Chiron
性別 男性
身長 179cm
体重 81kg
特技 分かりやすくてたちまち力がつく授業
好きな物 人に教えること
苦手な物 酔った者同士の争い、蛇と毒[注 1]
天敵 ヒュドラ
出典 ギリシャ神話
地域 ギリシャ
属性 秩序・善
一人称
二人称 貴方/貴女
三人称 彼 など
声優 武内駿輔
デザイン 近衛乙嗣
設定作成 東出祐一郎
イメージカラー 草色
レア度 ☆4
初登場作品 Fate/Apocrypha
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概要

弓兵」のサーヴァント

略歴
Fate/Apocrypha』では聖杯大戦において、フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアによって召喚された。触媒は先端に青黒い血が付いた古びた矢。
黒の陣営では参謀役を務め、マスターだけでなく、サーヴァント達からの信頼も厚い。
黒と赤の対立構造が崩壊した後はルーラーと合流し、シロウの側についたキャスターを倒す。キャスターが繰り出した「王冠・叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)」との戦いではその弱点を見抜き、ジークライダー赤のセイバーに的確な指示を下して撃破に貢献し、以降も同盟側のブレーンとして活躍する。
空中庭園へ向かう機上では、ついに愛弟子である赤のライダーとの決戦を迎える。己の肉体のみを頼りにした決闘に敗北するも、直後の隙を突く形で宝具を発動させて彼の最大の弱点を撃ち抜き、黒陣営のアーチャーとしての役目を全うして消滅した。
Fate/Grand Order』では第二部第5章『Lostbelt No.5 神代巨神海洋 アトランティス 神を撃ち落とす日』に、汎人類史、異聞帯のサーヴァントとして「2人」召喚された。ただし作中の時点では汎人類史側のケイローンは既に異聞帯ケイローンに仕留められ消滅しており、ストーリーに登場するのは異聞帯ケイローンのみ。
異聞帯のケイローンは「不死性を失う逸話」「オリオンを狙う蠍を狙うといういて座の逸話」が存在しておらず、肉体的には遥かに頑強である代わりに『天蠍一射』の宝具を持っていなかった。ただし作中の時点では汎人類史のケイローンを倒した事でこの宝具(の元になった逸話)を吸収し、宝具の使用を可能としている。人格そのものは汎人類史のケイローンとさほど変わらず、基本は温和かつ知的ではあるが、自らの生まれた世界への愛は強く、ギリシャ異聞帯を消そうとするカルデアは完全に「敵」と見なし苛烈な攻撃を仕掛ける。
人物
広大な森のような清冽な気配を持った青年。
誰に対しても礼儀を持って接する好青年で、常に柔らかな物腰を崩さない。高潔な人格者であり、周囲からは魔術師として当然の事と見なされたフィオレの努力を正当に評価している。
大英雄達の師であるため、面倒見がよく、相手に合わせた的確な助言を行い、ライダーやホムンクルスに度々忠告と助言をする。
聖杯への願いはかつてプロメテウスに預けた「不死」の返還。その理由は「不死」を惜しむからではなく、「不死」であることを両親からの贈り物であり、確かな繋がりだと信じているから。
元より彼の父クロノスは妻の目を欺くために馬に化け、母ピリュラーと交わり、母はケイローンを産み落とした時、彼が半人半馬の姿で生まれたことを嘆き、菩提樹に姿を変えたという。彼の両親は最初から彼に愛情など注いでおらず、彼自身それを理解していた。
だが「不死」という両親との繋がりを失ってしまった自分は最早、「ケイローンであってケイローンではない」と断言し、我欲に塗れた願いであると恥じながらも、彼にとっての父母とのささやかな絆の証を求めている。
能力
半人半馬の姿でもサーヴァントとして召喚されることに問題は無いのだが、視認されただけで真名が露呈してしまうため、自らの意思で一部ステータスの低下を代償に人の姿で現界した。
夜空に燦然と輝く射手座(サジタリウス)の原型である彼は、世界で最も有名な「弓兵」であり、「弓の使い手」として最高位の能力を持つ。
その技量は闇夜の森で赤のアーチャーバーサーカーに放った黒く塗られた音速を超える矢を、遠く離れた城壁の上から正確に捉え、寸分の狂いもなく射抜き撃ち落すほど。矢も魔力を込める事で威力・速度の上昇、突き刺さると大爆発するなど様々な効果を付加することができる。
アポロンから医学や音楽を学び、アルテミスから狩猟を学ぶなど神々から様々な智慧を授かった彼は、熟練した医術の知識も心得ており、専門外であるはずのホムンクルスの状態を正確に把握し、彼の余命まで診断する。[注 2]
『英霊』にまで格が落ちたといっても『神性』は健在で、倒すのに『神性』を必要とする赤のライダーの守りを貫くことが出来る。
ステータスも非常に高く、セイバーランサーにも引けを取らない。また剣術・槍術に加えて、拳闘と組技を複合させた世界最古の総合格闘技『パンクラチオン(全ての力)』の使い手でもあり、魔力放出による爆発的な加速と高所からの落下による運動エネルギーを加わった赤のセイバーの斬撃を受け流し、逆にその力を利用して投げ技で地面に叩き付けカウンターを行うほどの実力者。『Fate/Apocrypha』の漫画版では本気になった際には半人半馬形態になり、アキレウスを上回るほどの高速機動や両手と前足での高速連打のような人型を超越した打撃戦をも可能としていた。
戦術眼も極めて高く、ランサーから前線の指揮を任されており、その優れた戦略判断と弓技によってセイバーとバーサーカーの窮地を救っている。
英雄達の教師として振る舞う中で様々な知識や技術を身につけ、どれも一流レベルで振るう事ができるが、(本人の謙遜が含まれているとはいえ)自分は英雄ではなく教師であり、どれをとっても超一流の専門家には敵わないと認識している。

ステータス

クラス マスター 筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具 クラス別能力 保有スキル 備考
アーチャー フィオレ・フォルヴェッジ・
ユグドミレニア
B B A+ B C A 対魔力:B
単独行動:A
千里眼:B+
心眼(真):A
神性:C
神授の智慧:A+
主人公 (Grand Order) 対魔力:B
単独行動:A
神性:C
心眼(真):A
永生の奉献:EX
神授の智慧:A+

宝具

天蠍一射(アンタレス・スナイプ)
ランク:A
種別:対人宝具
レンジ:5~99
最大捕捉:1人
由来:蠍座のα星アンタレスを狙う射手座
輝く星を射出する狙撃宝具。射手座となったケイローンが常に天の蠍を狙っているエピソードの具現化。
星を穿つという、弓兵が到達できる究極の一撃。弓からではなく、星から放たれる流星の一撃。射手座の概念の具現化だが、射手座が無ければ発動できない訳ではない。
夜空にある射手座は「射手の星は蠍を常に狙い続けている」ため、必要なのは引き絞った弓から指を離すかどうかだけ。よって真名の開放や魔力の充填などの準備を事前に済ませておけば、射つ意思を決定した時点で本来は弓という武具には必ず存在するはずの予備動作やタイムラグをゼロにした射撃が可能。副次的な効果として、宝具を発動したとしても悟られる可能性が低い他、ケイローンが死亡した際も1ターン後、自動的に攻撃が発生する。
ただし一夜に一度しか使用できず、一度発動させると次の夜になるまで再使用不能となる。また攻撃力には特筆する部分がないため、可能な限り一撃一殺を狙う必要がある。
由来となったのは「射手座は蠍座が天空で暴れないよう、その心臓(の位置にあるアンタレス)に向けて矢を番えている」という逸話だが、ケイローンはギリシャ神話の中で蠍座のモデルとなったオリオンを襲った蠍とは関わりがない。「後の時代に追加された有名な逸話が、サーヴァントになったことで顕現した」タイプの宝具であり、その特性も相まって、彼の生前を良く知るアキレウスでも対処のしようがなかった。
『Grand Order』では「敵単体の防御強化状態を解除&敵単体に超強力な攻撃&敵単体のクリティカル発生率をダウン(3ターン)<オーバーチャージで効果UP>」という効果のArts属性の宝具。

真名:ケイローン

ケイローン。多くの大英雄達を育て上げ大成させてきた、ケンタウロス族の「大賢者」。ゼウスの父クロノスと、島の女神ピリュラーとの間に生まれた。
あらゆる知識に精通し、その穏やかな性格と教え方の巧みさからギリシャにおいて彼に教えを受けた英雄は数知れない。
ヘラクレス、アキレウス、イアソン、アスクレピオス、カストール……年代こそ異なれど、皆ケイローンの門下生である。
ケイローンの父である神クロノスは馬に化けて彼女と交わったため、ケイローンもまた、半人半馬のケンタウロスとして生まれた。
怪物のような彼に乳を与えることをピリュラーは激しく厭い、菩提樹へと姿を変えてしまった。
父母から愛されなかったものの、成長したケイローンはあらゆる勉学に秀でた賢者となった。
これは母の名である「ピリュラー」が菩提樹を意味することとあながち無関係ではない。菩提樹の花は気付け薬に使われ、樹皮は占いや書板として活用されたためだ。
大人になったケイローンは、ギリシャ中から乞われて「未来の英雄」を養育し始めた。
彼が教えた者には大英雄ヘラクレス、アキレウスの他、後に医術の神となったアスクレピオス、双子座に昇華されるカストールなどである。アルゴナイタイのリーダーであるイアソンも、彼に教えを受けた者の一人である。
大地と農耕の神クロノスを父に、女神ピリュラーを母に持つ完全な『神霊』であり、本来『英霊』のカテゴリーに収まる存在ではないが、ヘラクレスから誤ってヒュドラの毒矢を受け、その痛みから不死性を捨てたことで完全な『神性』を失い、『英霊』に格が落ちたため聖杯戦争に召喚し得る存在となった。

登場作品と役柄

Fateシリーズ

Fate/Apocrypha
「黒」のサーヴァントとして登場。
Fate/Grand Order
2018年の『Fate/Apocrypha』とのコラボイベントに合わせて実装された。

その他

ちびちゅき!
当然のように教師役。星座について講義していた。

人間関係

Fate/Apocrypha

フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニア
マスター。彼女との関係はユグドミレニアの他の組と比較しても、抜きん出て良好で、彼女はアーチャーに全幅の信頼を置いていて、睡眠時などを除いたほとんどの時間を彼と過ごしている。主従や恋人というより、教師と教え子のような関係
カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア
マスターの弟。自分がいなくなった後の事を考え、フィオレが抱えている弱さについて語って後事を託し、またカウレスがバーサーカーの死に対する自責の念に駆られている事を見抜き助言を送る。
黒のライダー
召喚されたときからの付き合い。彼の英雄としての本分に忠実で高潔な在り方を信頼しており、ライダーもアーチャーの人柄を信頼している。
たまにホムンクルスとの会話で、真名をぽろっと洩らされたりしているが、それも彼なりの信頼の証だと理解している。
黒のバーサーカー
驚くべきことに、唸り声にしか聞こえない彼女の言葉が分かる模様。戦闘中コミュニケーションを取り、的確な指示を下す。
彼女も自分の言葉が分かってもらえるためか、彼の判断を信頼しており、一見無謀に見える指示でも忠実に実行する。
黒のランサー
『大賢者』と尊称で呼び、セイバーと同等の信頼を置いている。
黒のキャスター
自分自身もマスターも聖杯戦争も眼中になく、ゴーレムの完成にしか関心を払っていないことに薄々感づいていた。その真意にいち早く気づき、滅多に見せない怒りを込めて粛清する。
ちなみに『Grand Order』では、彼の幕間の物語でロボット系中核たるギリシャ神話代表という事からエジソンと共に解説役を担うことになる。
ジーク
ライダーの求めに応じ、自室を提供して、彼を匿うのに協力する。彼に敢えて余命を告げ、生きることへの助言を与える。
ルーラー
同盟の代表者。空中庭園脱出から、という短い付き合いだが同じ「秩序・善」属性であるためかお互い相性は良い。
たまに、彼女とライダーがジークを奪い合っている所を面白そうに眺めている事も。
赤のセイバー
アサシンを巡る戦いで戦闘を行ったサーヴァント。後の同盟相手であり、「紛れもない英傑の相が有る」「素晴らしい英霊だ」と高評価。
セイバーの方は前回の戦いは互いに痛み分けで終わったため、本音は決着をつけたかったが、状況が状況なので共同戦線を張る事に。
赤のライダー
生前深い関りがあり、彼の真名を知っている。彼を打倒するのに必要な『神性』を持つ者が黒の陣営では自分しかいないため、苦悩を感じながらも自らの手で倒すことを決心している。

Fate/Grand Order

アステリオス
系図上は義理の甥(異母兄ゼウスの息子ミノス王の義理の子供)
面識があるのかマイルームにて彼について言及している。
反英雄である彼が穏やかに過ごしていることに感慨を抱き、それがマスターの善性によるものだと評価している。
アーラシュ
まだ直接の面識は無いものの、コラボイベントにて弓兵として自分に勝る存在として彼の名を挙げている。
星を穿つという弓兵として究極の技を宝具とするケイローンが弓で勝てないと評していることからも、「星を砕く」アーラシュの偉業が凄まじいものであることがわかる。
スカサハ
同じく『名高い大英雄を育て上げた師匠』という共通点を持つサーヴァント。
『FGOマテリアルⅡ』の中で彼女が「気が合うかもしれない」と述べる一方、教育方針の違いで殺し合いになる可能性があることを言及している。また、教え子同士の性格もどことなく似通っている。
アシュヴァッターマン
幕間で共演。彼自身の中の怒りを昇華するアドバイスと手伝いをする。
トリスタン
同じく幕間で共演。彼の扱いには流石のケイローンも持て余し気味。
ゲオルギウス
期間限定イベント『アイアイエーの春風』にて、自分が同行するとイアソンが過剰に先走るからという理由で彼に代理を依頼した。
オデュッセウス
大西洋異聞帯では総大将として指揮を執る彼を副官としてサポートしていた。
赤兎馬
自分と同じケンタウロス……のような何か。
彼の幕間の物語では自分はケンタウロスなのではないかと思った彼から相談を受けていた。

生前

カリクロー
妻。上位種の精霊で、夫を支え教え子達からも母同然に慕われた良妻賢母であった事が窺える。
小説版ではアキレウスに一心に愛情を注ぐことの大切さを教えており、コミック版では彼を見送る場面にて、僅かかつ顔は不明確ながらも姿が描写されている。
アルテミス
狩猟と弓の師匠…なのだが、血縁上は姪(異母兄ゼウスの娘)。
アポロン
音楽と医術の師匠。血縁上は甥(異母兄ゼウスの息子)。後に息子のアスクレピオスを託される。
ヘラクレス
弟子の一人。師から弓技を初めとする多くのことを学び、ギリシャ神話最強の大英雄と称えられるほどの活躍を見せた。
イアソン
弟子の一人。アルゴー号の中心人物であり、メディアのかつての恋人。
「まあ俺くらいになると、ああいう、簡潔でわかりやすい授業というのはむしろ耳障りでね! 地雷女に引っ掛かったときの対処法くらい教えて欲しかったさ!」とのこと。
『Fate/Grand Order』では彼に馬蔵だの馬小屋だの呼ばわりされた事は気にしていない……ように見えるが、ランドセルを背負わせようとした上に課題を三倍に増やしにかかった[注 3]
ディオスクロイ・カストロ
弟子の一人。後に双子座に昇華される。
アスクレピオス
弟子の一人。後に医術の神となり、蛇遣い座に昇華される。
『Fate/Grand Order』では一応師匠として敬う姿勢は見せるも、新しい医学知識がないと分かると塩対応を取る。

名台詞

Fate/Apocrypha

「……確かに、私は父にも母にも愛されなかった。それでもやはり、血の繋がりの証とも言えるものを取り戻したい。
 我欲に塗れていると言っても否定はできません。そもそも、今更不死になったところで何か変わる訳でもない。
 ただ、それでも―――」
フィオレに語った自らの願い。父と母とのささやかな繋がりを求めて。
「ええ、教師ですよ」
ライダーにホムンクルスへの接し方についてアドバイスした際、「まるで教師みたいな言い方だなぁ」と言われた事への反応。彼が正論や合理的な思考に囚われた堅物ではなく、柔軟な対応ができる人物であることが良く分かる。また大英雄達の後見人であった自負も垣間見える。
「なるほど。仮にもこれが聖杯戦争であるならば、こういう可能性もまた有り得なくは無かったか。
 ………運命というものは、時に死者である我々にまで牙を剥く」
赤のライダーとの戦いを終えた際のセリフ。生前に知己を得た者と殺し合うという、運命の悪戯を苦々しく思いながらも、主に勝利を捧げるため、そして自らの願いを叶える為彼を倒すことを決意する。
「愚問ですよ。此度の聖杯大戦において、私は“黒”のアーチャーとして顕現した。そして君は“赤”のライダーとして顕現した。
 互いに懸ける望みがあり、未練があった。だから此処に居るのでしょう。私も、そして君も」
「どうして、貴方が」と問う嘗ての弟子に返した至極当然の返答。愕然とする弟子を厳しい言葉で撥ね付け、ただ「戦え」と言外に告げる。
「キャスター、君はまさか―――」
この時、彼の声は凍るように冷たい。キャスターがシロウの誘いに乗る条件として「元のマスターであるロシェに危害を加えるな」と提示した際に、その真意を悟ったが故の激怒。
「当然でしょう。迷う者を導くことが教師の務めです。
 英霊になったからといって、生前からの務めをおろそかにはしませんよ」
カウレスにフィオレがユグドミレニアの長になった場合、人間的な精神を持った彼女は耐えきれなくなる可能性が高い事を語って。最終的に座に還る英霊にとっては、例え自分のマスターであってもその後の事は無関係といっても良いのだが、数多の英雄を教導した大賢者は最後までマスターの事を考えていた。
「では最後に。
 私は、バーサーカーフランケンシュタインのマスターが貴方で良かったと思います。恐らくは、彼女自身もそうでしょう」
カウレスとの問答の終わり。カウレスがバーサーカーを無駄死にさせてしまった、と気に病み続けていた事を見抜き、別れ際に言い放つ。明確な保証のない言葉だったが、カウレスの心に慰めをもたらし、彼が張り続けていた虚勢は脆くも崩れ去った。
マスターだけでなく自分にまで教えを授けて去っていく彼の姿にカウレスは「どこまでも教師なんだな、アイツは」と密かな感謝の念を込めて呟いていた。
「おや。修羅場ですか?」
ルーラーライダージークを巡って論争していた場面に対して。彼にしては珍しく口を押さえてくつくつと笑っていた。
「空に浮かぶ射手座。それが私であるならば、私は常に矢を番えている。
 つまり宝具はもう発動済みです。真名を発動させる必要すらない。
 何故なら、矢は既に放たれているからです」
教え子である赤のライダーとの一騎打ちにて一瞬の隙を突かれ致命傷を受けたケイローン。決闘の条件に黒の陣営に彼の宝具を貸し出す約束を取り付けた直後に油断した赤のライダーの隙を突いて宝具「天蠍一射アンタレス・スナイプ」の一射を投下。上空から何の前触れもなく、赤のライダーの踵を正確に射抜いた。
「マスター。最後の最後で、私はようやくサーヴァントとしての務めを果たせたようです。
 どうか、最後の教え子であるあの子たちが夜空の星のように輝きますように」
黒の陣営にとって最大の難敵になるであろう赤のライダーの不死性を奪い、戦闘機と共に落下していくケイローン。二度目の生で出会った最後の教え子たちの生き様とその未来を胸に刻みながら、彼はサーヴァントとしての役目を終えた。

Fate/Grand Order

マイルーム

「サーヴァント、アーチャー。ケイローン、参上しました。我が知識が少しは役立てばいいのですが……。
 ともあれよろしくお願いします。あなたのため、力を尽くしましょう」
召喚時の台詞。真面目で穏やかな教師らしい発言。
「知恵は不変のものです」
スキル使用ボイス2。知恵を何よりの武器とする大賢者の言葉。
「これこそは、星の蠍を穿つ一撃なり。我が矢は既に放たれた!『天蠍一射アンタレス・スナイプ』!」
「禍津の蠍よ、粛清は既に訪れた!星と共に散るがいい!」
宝具発動。天から放たれる星の蠍を穿つ一撃。
「マスター。可愛い子には旅をさせよ、という諺もあります。旅をしましょうか」
「あなたに幾つかお教えできるものがあります。さあ、共に学びましょう」
「あなたがマスターでありたいならば、マスターとして為さねばならないことがあります。ご安心を。お教えしましょう」
マイルーム会話。どれも教師としてマスターを教え導こうとする発言が特徴的である。
「マスター。あなたに教えたいこと、伝えたいことがたくさんある。しかし、サーヴァントの命は限りなく短い。それがなんとも惜しいですね」
「いや、伝えたいことはただ一つ。あなたは素晴らしい。
 これから先の生にどのような苦難があったとしても、挫けず前を向いて歩くことができる……あなたはそういう生徒だと、私は確信しています」
マイルーム会話「絆Lv4」「絆Lv5」。マスターを最高の生徒として、サーヴァントとして短い間しか共にいられないことへの惜しみと、それを超えた生徒への信頼を抱く。
「バーサーカーとして狂乱しながらも、知性を残している。さすが英雄ヘラクレス。だから、そんなに気まずそうにしなくてもいいのですよ」
マイルーム会話「ヘラクレス」。
生前での最期にヘラクレスが大きく関わっているため気を遣われているのか、気にしなくてもいいと本人は大らかに流している。
「矢と矢が衝突したことを、それほど気にしているのですか?座標と速度の演算さえできれば、誰にでも可能ですよ。
 アタランテならば、二、三度やればコツは掴めると思うのですが……。え?もうできる?流石」
マイルーム会話「アタランテ」。
聖杯大戦で戦った際に黒のバーサーカーを狙い放った矢をケイローンに矢で撃ち落とされたことに少なからず驚愕していたアタランテ。ケイローンは教師としての癖から彼女にも方法を教えようとしたが、アタランテの方もすでにそのスキルを会得していた模様。
アタランテの方でも弓兵としてのプライドから、今度は自分がやってみせると張り合っている。
「かの反英雄がこうも穏やかに過ごせているとは……。今の彼が真実のアステリオスなのか、それは分かりません。
 ですが、確かなことが一つ。あなたの善性に惹かれて、彼は召喚に応じたのでしょう」
マイルーム会話「アステリオス」。
彼とどのような縁があるのか不明だが、彼がカルデアで穏やかに過ごせていることに感慨を抱いている。
「おやアキレウス。今回は味方のようですね。ほっとしました。暇そうなら授業に……おや、逃げましたか」
マイルーム会話「アキレウス」。
生徒であるアキレウスを見かけ授業をしようと声をかけるも、彼の苛烈な指導も経験しているアキレウスは何らかの危険を察知し逃亡した。
突貫コースで狭い洞窟の中一方的に百を超える矢を浴びせられたことを想えば無理もないかもしれない。
「イアソンが馬小屋だと言っていましたか? ええ、実際に馬小屋でしたから。そういう艱難辛苦もまた、英雄に必要な苦労です。それはそれとして、彼への課題を三倍に増やしておきましょう。大丈夫です。限界をどう考えても上回った辺りからが、イアソンの真骨頂です」
マイルーム会話「イアソン」。
かつての教えをすっかり忘れてしまった彼に再教育を施すべく意気込んでおり、扱いにも手馴れている。

メモ

  • 小説版で新規に追加されたサーヴァントの一人。ゲオルギウスが聖人被りで没になり空いたライダー枠をアキレウスが埋めたため、ライバルかそれに類する存在が必要になったため起用された。
  • 元は『神霊』という点は、玉藻の前と同じであるがあくまで不死の肉体を捨てただけで人間として生きた逸話があるわけではないので神性はCで残っている。
  • 宝具を一切使用せずサーヴァント二騎を軽々と退ける弓兵として最強の技量、最高クラスのサーヴァントに引けを取らない高ステータスと格闘戦の実力、作戦立案から前線部隊の指揮まで全てこなす戦略眼、マスターや味方のサーヴァント達に的確なアドバイスを与えられる人間としての器の大きさ、神秘や医術に関する極めて高度な見識、と従者サーヴァントとして余りにパーフェクトな人物。
    その上、高潔なだけでなく、隙を見せた相手には不意打ちを行うなど実戦的な判断能力も備え、生前英雄たちの教師をやっていたことからファンの間では称賛の意味も込めて「ケイローン先生」と呼ばれている。
    そもそも前述の器用万能を地で行く在り方から欠点を挙げる事自体難しいサーヴァントであるため最優のサーヴァントとの呼び声も高い。
  • スキル「神授の智慧」は「特定の英雄が独自に所有するものを除いたほぼ全てのスキルを、B~Aランクの習熟度で発揮し、マスターの同意があるならば他サーヴァントにスキルを授ける」と恐ろしく強力な効果であるものの、英雄として成立しているサーヴァントが教えを乞うことはほとんどないため、実際にスキルを授けられる可能性は通常の聖杯戦争はもちろん聖杯大戦ですらなかなか存在しないだろう。
    • 黒の陣営のメンバーだと狂化されているフランケンシュタインと理性蒸発のアストルフォは真っ先に除外。
      ジャック・ザ・リッパーも精神汚染持ちな上にそもそも新宿で召喚された瞬間から実質的に陣営を離反していたため陣営内にはいない。
      ヴラド三世も王として召喚されているため教えを乞う状況にならないので除外。アヴィケブロンはゴーレムにしか興味がなくそもそも人嫌い。
      残るジークフリートは謙虚な人柄ではあるがマスターによって会話を止められている。と教師としての本領発揮が徹底して難しい状態であった。
    • そんな事から大量のサーヴァントが味方側に付くカルデアならば教師として本領を見せる機会があるかもしれないと一部のファンから期待されている。実際『Grand Order』のゲーム内マテリアルでは『別の聖杯戦争においては自分以外に使う機会がなかったスキルだが、此度のカルデアでは使う気満々である』と書かれている。後にこれは2021年12月に実装した自身の幕間の物語で報われる事になった。
  • 野蛮で粗暴なケンタウロス族の中で、彼は例外的な存在であり、アポロンから音楽、医学、予言の技を学び、ペリオン山の洞穴で薬草を栽培しながら病人を助けて暮らしていたという。
    • 同じく争い事を好まず、穏やかな性格のケンタウロス族に「フォロー」という人物がいる。何の因果か彼もヘラクレスと知り合い、不注意からヒュドラの毒矢で命を落とした後、ゼウスによって『ケンタウルス座』として星座になるという、ケイローンと似た運命を辿っている。
  • 弟子のアスクレピオスは、アテナから授かったメドゥーサの右側の血管から流れた血を使い、死者を生き返らせることができるようになったという。
    また同じく弟子のディオスクロイ・カストロも、伝令神ヘルメスからメドゥーサの子、天馬ペガサスの弟である「ケレリス」を与えられている。面識は互いに無いにも関らず、弟子達を通じて、彼女と不思議な縁がある。ちなみにこのペガサスが星座になった際、隣に頭だけで寄り添っている『こうま座』があるのだが、これは弟馬ケレリスの他、ケイローンの娘ヒッペーだとする説がある。
  • 『Apocrypha』3巻の口絵のステータスでは、宝具の真名や説明がぼやけていて隠蔽された状態となっている。その後本編終了後に発売されたマテリアルで正規版が公開された。
  • あだ名はケイローンP。これは、ケイローンの声を担当する武内駿輔氏がアニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』のプロデューサーを演じたことから奈須きのこによって命名された。
    • ついでに言うと、マスターのフィオレの担当をしている声優の赤﨑千夏氏もその作品でアイドルを演じている。
    • そのプロデューサーはケイローンとはキャラクターの方向性が異なるため、人によってはネタや比較を嫌がる可能性があるのであくまで愛称の範囲にしておこう。
    • ちなみに2015年のエイプリルフールでスパルタクスがプロデューサー役をやった時の元ネタも同じキャラである。そのため同じアポクリファ内での武内駿輔氏の起用はファンを驚かせた。
    • 実際ギリシャ神話でも「英雄の師」として有名であり、ざっと挙げただけでヘラクレス、イアソン、カストロ、上記のアスクレピオスとそうそうたるメンバーである。その意味でケイローンPと呼ぶ人も前々から少数ながら存在していた。
  • アニメ第16話ではまさかの黒いスーツ姿をお披露目した。これにはイラスト担当の近衛氏もニッコリ[1]。だが、このスーツでプロデューサー感がますます増してまたコラージュ画像が作られるようになってしまった……。
    さらに小説版では霊体化してフィオレの元へと向かったのだが、アニメでは実体化したスーツ姿のままで昼日中の街中を大ジャンプで移動していた。
    「昼日中からGロボばりにスゲえジャンプをしたスーツ姿の男がいたのですが」「気のせいです」[2]
  • Apocryphaマテリアルによると、デザイン開発コードネームは「パイナップル先生」だった模様。

話題まとめ

脚注

注釈

  1. ヘラクレスには秘密にしている。
  2. ただし、本当の意味で「なんでも知っている」わけではない。例えば彼の生前は万有引力の法則を始めとする物理法則が確立されるより前の時代なので、当然ながら物理学を教えることはできない。彼もそれを理解しているため、『Fate/Grand Order』では現代の学問を積極的に学習しているようである。
  3. 個人的な感情だけではなく、「限界以上に追い込まれると真価を発揮する」という彼の特性を理解しての行為でもあるが。

出典


リンク