Fate/Labyrinth

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Fate/Labyrinth

あら――?
 どうして、女の子なのかしら

コンプティークで短期集中連載された『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』の外伝。第三章と第四章の間で連載され、全3話。

本来、出会う筈のない平行世界の聖杯戦争の参加者たちと愛歌が邂逅する。

2016年1月に書き下ろし完結編を加えての単行本が発売された。

あらすじ

聖杯戦争終結間近、大聖杯の覚醒を待つ愛歌。彼女は思い付きから普通の人間のように、全能である自分では感じられない変化と驚きを求め、夢を通して平行世界を旅する。
愛歌はその過程で「アルカトラスの第七迷宮」で聖杯戦争が行われている世界に偶然辿り着き、気づいた時には一人の少女に乗り移っていた。

登場人物

聖杯戦争参加者

沙条愛歌
主人公。セイバーのマスター。
本来のセイバーの元に帰還するため、セイバーを従え、3騎のサーヴァントと協力関係を結び、亜種聖杯戦争の終結を目指す。
少女と一体化した影響によって、第三者と少女の側から彼女の姿を見ると愛歌だが、鏡などで愛歌が自分の姿を見ると元の肉体の所有者である少女が映るという特異な状態になっている。
また全てを見通し、理解し可能とする全能の力は失われており、魔術師としての能力も『色位程度』に弱体化している。だが怪我の功名というべきか、全能でないが故に歯止めの効かない冷酷な顔は鳴りを潜め、少女の純粋な面のみが残ったため、一体化した少女や周囲のサーヴァント達に自然に受け入れられている。
愛する騎士と一時とはいえ離れ離れになってしまったことを悲しんでいるが、全知全能であるが故に生まれてから経験したことが無かった「普通の人間の感覚」に新鮮な感動と喜びを感じ、それを満喫している。
ノーマ・グッドフェロー
もう一人の主人公。本来セイバーのマスターになる筈だった人物。セイバーを召喚した瞬間に愛歌の精神が転移してきたことで、結果的とはいえ身体のコントロールを乗っ取られてしまう。それからは意識の欠片となって、一歩離れた視点で物語の狂言回しを務める。
とある魔術師の弟子であり、一流とはいかないが、迷宮探索の専門家。
愛歌の大胆な行動に驚いて気絶しかけ、迷宮を徘徊する怪物に恐怖し、サーヴァント達の殺気に恐怖する常識人。
ただ元々の芯が強いのか、自分の身体を得体の知れない存在に乗っ取られるという、常人の精神では耐えられないような事態に在っても冷静さや判断力を失っていない。
年齢は十代半ばほどで、温泉でキャスターの肢体を見た際、自分の体の未成熟ぶりを意識してしまう事も。
視覚・聴覚・嗅覚は共有しているが肉体の主導権は完全に愛歌に移っていて、言葉を話す事も明確なメッセージを外界に伝える事ができない。味覚は意識的に同期させる事で共有できるが、触覚は完全に蚊帳の外。また愛歌が心の中で抱いた感想をある程度は読み取る事ができるが、記憶には干渉できない。
セイバー
平行世界に存在する「女性」のアーサー王。
単純な戦闘能力では今聖杯戦争最強。直感によって罠に対する耐性がある。また愛歌から供給される莫大な魔力によって高い継戦能力を発揮し、戦闘中の各ステータス強化、状況に応じた援護攻撃、敵に対する行動阻害といった多く恩恵を彼女から受けている。
反面、霊体化できず栄養補給が必要だが、愛歌が幻想種から作った料理で食事を賄われている。
祖国の救済を願うつもりだったが、亜種聖杯では願いが叶わない事を確信し、聖杯の破壊を望む。
アーチャー
斥候の専門家。仕掛け罠全般に詳しく、隠密行動を得意とするため愛歌達より迷宮の攻略はずっと進んでいる。
亜種聖杯の破壊を目的としており、愛歌とセイバーを利用するために情報を流し、彼女達の動向を監視していく過程でその傘下に加わる。
お互いに気が合ったのか、アサシンの事を「アサシンの旦那」と呼び、コンビを組んで探索・戦闘の両面で活躍する。
キャスター
魔術のプロフェッショナルであり、閉鎖空間での対集団戦闘に優れる。また迷宮・迷路に関して参加者の誰よりも造詣が深い。しかし大魔術の連発によって発生する魔力消費は膨大で、継戦能力に不安を抱える。
魔力消費の問題を突かれ、愛歌から誘いを持ちかけられ彼女の傘下に加わる。
愛歌と一緒になってセイバーの身体に触りたがったり、彼女に白いドレスを着せようと企むなどセイバーに対する興味と関係は変わらない。
アサシン
施設潜入と探索に関して、アーチャーより優れた専門家。
だがその「人を断罪する」宝具が迷宮内の幻想種との戦いに向いていない。
キャスター相手に全く物怖じせずに交渉する愛歌に興味を示し、彼女に協力する。
状況を冷静に判断し、睨みあうセイバーとキャスターの間に絶妙なタイミングで現れ場を取り成したり、自身の宝具の情報を真っ先に公開する事で同盟の締結を円滑に進め、アーチャーとの抜群の連携を見せるなど、要所要所で優れた働きをする。
グレイ
魔術協会の亜種聖杯戦争調査のために先行して迷宮に侵入しており、探索途中でノーマと出会い行動を共にする。

亜種聖杯戦争の開催者

ヴォルフガング・ファウストゥス
亜種聖杯を迷宮の最奥部に設置し、亜種聖杯戦争を開いた吸血鬼(ラミュロス)。
死徒ではない純粋な吸血種であり、自身の目的のために迷宮に召喚される英霊を待ち受ける。
狂戦士
ヴォルフガングにより、英霊の座から通常とは異なる形式で召喚されたバーサーカーのサーヴァント。
体が血の濁流で構成された異様な存在として現界し、尖兵として英霊達へと襲い掛かる。

その他

コーバック・アルカトラス
「アルカトラスの第七迷宮」の本来の造成者。
孤高なりし優しき竜
幻想が眠る世界の裏側で、永遠に近い時の中、誰かを待ち続ける竜。
愛歌はその姿を「綺麗」と評したが彼はその言葉に応える事は無く、世界の果てを見続ける。
互いに相手に余計な手出しをせず、そのまま別れる。
青く輝く瞳を持つ人
宇宙の暗黒の様で、輝きの窮極の様でもあり、あらゆる全ての中心たる渦のようで、生活感のまるでない小さなワンルーム・マンションの一室のような場所にいる。
ビースト
愛歌がいなくなったことに気づき、ノーマと同化していた彼女を自身の元へと引き戻した。
ロード・エルメロイⅡ世
亜種聖杯戦争の調査のため魔術協会から派遣されグレイと共に赴いたものの、迷宮の入り口が封鎖されて外に取り残されてしまった。

アルカトラスの第七迷宮

全四階層からなる地下迷宮で、幻想種や合成獣、ゴーレムが徘徊し、サーヴァントですら危険な致死の罠と結界が張り巡らされている。
過去、協会から派遣された魔術師を含む多くの探索者が訪れたが誰一人として生きて戻た者はいない魔窟。

アグリッパの惑星魔方陣に対応した内部構造をしており、階層を下っていく毎に現れる幻想種や罠が強力になっていく。

生息する幻想種は適切な処理を行えば、人間が食べる事ができるものが多い。
また造成者の茶目っ気というべきか、嫌味というべきか、内部には貴重な魔術触媒や礼装が入った宝箱が丁寧に設置されており、魔力補充の出来る温泉施設まである。

迷宮の聖杯戦争

ファウストゥスによって設置されたアルカトラスの第七迷宮に設置された亜種聖杯を巡る聖杯戦争。
聖杯自体はアインツベルンの第三魔法を中心として創られた大聖杯を模造したもの。

勝利条件は最下層の最奥に存在する聖杯を見つけ出し手に入れる事で、そのためサーヴァント同士共闘する事も、一度も戦わずに終えることもできるとされていた。

模造品なだけに召喚されるサーヴァントは4騎しか存在せず、根源への到達は不可能で、英霊達の願いも完全な形で叶える事ができるかどうかは分からないという。

この聖杯戦争では、通常はマスターが担う、サーヴァントが現世へ留まるための要石としての役割を亜種聖杯そのものが果たしているため、マスターが存在しない。 しかし現界を維持するための魔力は一切供給されておらず、幻想種を狩るか宝箱に隠された礼装を通じて、サーヴァントが自力で魔力を補給し続けなければならない。

本来、迷宮内の仕掛けは盗掘者や探索者の排除を目的としたもので、迷宮を何らかの実験場に選んだ人物によって聖杯を組み込まれ、内部に生息する幻想種も含めた魔術的存在を英霊四騎の為に消費するよう再設計されている。 また聖杯戦争開始前から手が加えられており、迷宮内で死亡した人間を怪物に変える機構が組み込まれている。

この聖杯戦争の本来の目的は、「願い」をエサに召喚したサーヴァントを迷宮の罠やモンスターで疲弊させ、殺すことで英霊の霊核を確保すること。確保された霊核は組み込むことで非常に強力なモンスターを作り出したり、ファウストゥス自体の能力向上に使用されたりしている。最終的には大量に集めた霊核を使用し霊基再臨を行い、より高次の存在に進化することを目論んでいる。(メディアは幻想種を超越して精霊種になることと推測している)

生息する幻想種その他

合成獣
魔術によって生み出された魔獣。
元から迷宮に用意されていたものと、後から付け加えられた機構によって人間が変えられたものの2種類がいる。
元から迷宮に用意されていたものの肉は調理すれば食べる事が可能。
殺人兎
正式名不明の魔獣なので名前は仮称。
セイバーと愛歌に倒され、愛歌に骨付きもものあぶり焼きに調理される。
大蛇
愛歌と一体化した少女がセイバー召喚前に迷宮入口付近で遭遇した魔獣の一種。この時の錯乱して、少女は事前に用意した装備一式を落としてしまったらしい。
ケルピー
イギリス・スコットランド地方の伝説で登場する、水面を闊歩する蹄と魚の鱗に似た尾を持つ青ざめた馬。別名アハ・イシュケ。人肉、特に少女の肉を好んで喰らう危険な魔獣。
セイバーと互角に打ち合えるほどの攻撃性と、ダイラタンシー流体を魔術的に成立させた防壁である魔の水膜を有する。また有翼の飛翔形態である「水の鳥(ブーブリー)」へと変身する事ができる。
第一階層の番人であり、敵対者の行動を妨害する落とし穴と、それを隠すように水が張り巡らされた空間で侵入者を待ち構える。
セイバー相手に善戦するが、愛歌に魔の水膜の仕組みを破られ、怒り狂い形態変化して高所からの攻撃を仕掛けるが、セイバーの『風王鉄槌』によって粉砕される。
なお変身すると肉質も馬肉から鳥肉に変化している。
水晶の巨像(クリスタル・ゴーレム)
全身が魔力の輝きを映し込んだ水晶で出来たゴーレム。
セイバーに粉砕され、周囲を照らす輝きに変わる。
大型食人植物(クリーピング・プラント)
その名の通りの危険な生物だが、葉はレタスに、果実はトマトに似ており、食用に適している。
樹精(トレント)
樹木の様な姿の生物。魔術触媒として用意されていたものだが、根は料理の野菜代わりに使う事ができる。スライスして加工すればパンの代わりに使う事も可能で、スライスしたもの自体は愛歌が味見をした時に感覚を同期させた少女曰く、「東洋の餅のような食感」がするらしい。
グレイ・ゼリー
灰色の巨大不定形生物。通路いっぱいに広がるほどの巨体で、セイバーでは打ち倒す事ができず、倒すにはかなり大掛かりな火炎の魔術が必要とされる。
食人昆虫の群れ(インセクト・スクール)
第二階層の番人。身体は微小だが、広い部屋の中でさえ数え切れないほど数が多く、その上、非常に俊敏。核の個体を中心として群れを形成しているが、その見極めも困難。
愛歌を守りながら戦うのは不利だと判断したセイバー達は立ち往生しかけるが、攻撃魔術の連射によって空間内にいるものを全て薙ぎ払うキャスターによって殲滅される。
岩石の巨像
コーバック・アルカトラスの残したスートンゴーレム。普段は壁と一体化し、侵入者が近づくと3メートルほどの人型になり防御機構として活動を始める。
蜘蛛人形
小さな球形の胴体に、8本の脚を持つ蜘蛛に似た自動人形。群れを成して壁や天井を這いずり回り、刃としての役割を兼ねた脚で侵入者の首を狙う。
ドラゴンゴーレム
第三階層の番人。人工的に造りだされた、竜を模した怪物。
魔力炉心に近い核を元に駆動しており、爬虫類と蝙蝠を混ぜ合わせたかのような外見に、分厚い金属装甲に等しい鱗を持つ。
ドラゴンダイン
第四階層の番人。上記のドラゴンゴーレムに似た姿をしているが、一回り大きく双頭を持つ。
神性スキルを持つ英霊の霊核や本物の竜種の遺骸などの規格外の部品が使用されており、その力はサーヴァント数人分にも匹敵する。
食人妖精
最下層の洞窟部に多数生息。
かわいらしい、いかにも妖精な姿をしているが、捕食時は顔が縦に裂けて乱杭歯を覗かせる。
強力な魅了の力も持っており、獲物を誘惑して集団で襲いかかる。

関連書籍

メモ

  • 短期集中連載という事もあり、物語は一旦未完で終わる。愛歌と一体化した少女の素性や亜種聖杯戦争を始めた人物の目的も登場人物たちがその後どうなったのかも詳しい事は不明のままであったが、冬の単行本に収録された完結編でそれらの点は決着がついた。
  • 愛歌はラスト、この聖杯戦争で複数のサーヴァントと共に行動して『みんなで力を合わせる』事を学んだという。言葉の通りの純粋な気持ちであると同時に、黒化した複数のサーヴァントを同時に使役し連携させる事を思いついた、とも取れる。
  • アインツベルンから秘術が流出し、亜種聖杯戦争が行われている世界観は『Fate/Apocrypha』に近いように思われるが、詳しい関連は不明。

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