異聞帯
概要
ロストベルト。過った選択、過った繁栄による敗者の歴史。歴史の残滓。
それぞれの異聞帯に「異聞帯の王」とされる強大な存在が一人存在している。
“不要なもの”として中断され、並行世界論にすら切り捨てられたifの世界、“行き止まりの人類史”。人々に罪はなく、文明にも落ち度はない。ただ行き止まりになってしまっただけの世界。異なる歴史を歩んできた人類の年表。一時の点ではなく、帯として現在まで続いたもの。
コヤンスカヤ曰く、「自分たちの世界に疑いを持てない」というのが異聞帯の限界であり、だからこそ剪定されたという。
特異点を『正しい歴史が間違ったもの』ならば、異聞帯は『何も間違ってはいない』世界。言うなれば、汎人類史とは異なる歴史でありながら、特異点のように狂った世界ではない領域である。
だが異聞帯は並行世界ですらない。本来なら百年で打ち切られる歴史が、現在まで続いてしまった世界であり、いわば『汎人類史に敗北した歴史』が地球上に突如として現れたようなものである。特異点とは違い、現代の今の時間軸に7つの異常地帯が浮かび上がっている。テクスチャの上書きであるため、点ではなく帯。
最早転換点は過ぎ去り、異聞帯は歴史を紡いでいる。ただしこの歴史はあくまで空想樹が一種のシミュレーターとして維持しているものである為、空想樹が健在であればタイムパラドックスすら許容される一方、異聞帯の生命が異聞帯の外で存在を保つことは原則不可能。
多くの知られざる異聞史の中からより強力なもの、汎人類史を押しつぶせるほどの可能性を持ったものが、侵略兵器として用いられた。異聞帯という人類史による地球そのものを攻撃し、ダ・ヴィンチやクリプターはこれを濾過異聞史現象と呼ぶ。
“異星の神”による侵略が終わり、異聞帯の要である空想樹が根付いた後、その異聞帯を発展させるのは異聞帯の王ではなく、クリプターの役目となっている。
彼らにとってカルデアの抹殺は余分な仕事・雑務でしかないが、最大の障害であることも否定できない。
異聞帯でサーヴァントを召喚した場合でも、基本的に汎人類史の英霊の座から召喚される。ただし英霊や土地、マスターによっては異聞帯の歴史の影響を受けて汎人類史より強大な力を発揮したり、イレギュラーな召喚となることもある。
キリシュタリアは人間に支配者の座を追われた神々の復讐と例えている。
コヤンスカヤは「異聞帯はいつかは破綻する」「すべては『異星の神』が降臨するまでの暇つぶし」と評している。
なお、異聞帯を解決すると跡形も残さず消滅する為、特異点と同じく、レポートによる報告についての信憑性に関しては同様の問題がある。
異聞帯の消滅過程にはある程度差があるようで、一気に消滅する場合もあれば時間をかけて消滅する場合もあり、下記の中国異聞帯の場合には観測者が居ない森や山地から虚無に飲まれていき、人里も夜に忽然と消えて他の村は記憶していない、という過程を経ており、体感時間で三か月以上かかっている。ただし、異聞帯の外と中では流れている時間も異なっているため、外部でも同じ時間がかかっているかどうかは不明である。
人理再編
第2部におけるクリプターの使命。異聞帯による人理再編を目標とし、もう一度人類が神と共にある世界を作り上げる事にある。
第1.5部「Epic of Remnant」の最中、人理焼却と同列の災害かのようにクー・フーリンとBBから呟かれていた。
濾過異聞史現象
多くの知られざる異聞史の中からより強力なもの、汎人類史を押しつぶせるほどの可能性を持ったものが、侵略兵器として用いられた。
地球は完全に漂白された惑星と化し、一握りの生存者の目の前に映るのは、かつての面影の欠片もない、何もかもが一新された白い荒野が広がり、自然も文明も生きる者たちも、すべて消え失せ、削ぎ落された。
窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などの大気成分は基準値をクリアし、大気中のマナも21世紀のものとほぼ同じ濃度。人体に有害な物質は検知されない。
空想樹を打ち込み、異聞帯の書き換えを行う濾過異聞史現象を執り行うが、発芽には90日という時間を必要とする。
異聞帯の安定と空想樹の成長は同義であり、異聞帯のサーヴァントとの契約、その継続に全力を注ぐことが鍵となっている。
クリプターは自分が担当する異聞帯の領域拡大を目的とするが、互いの異聞帯の境界が衝突した場合、より強い人理を築き上げた異聞帯が脆弱な異聞帯を飲み込んでいく。
だが、その衝突以外の対決、他のクリプターの異聞帯内への干渉は御法度であり、異聞帯にカルデアが現れた場合、その異聞帯の王が対応するべき事である。
最終的に、クリプターは一つの異聞帯を選ばなければならず、あるクリプターが担当する異聞帯の領域拡大を放棄しても、そのうち他の異聞帯に侵略される。
地球は白紙化し、異聞帯を除いて生命のない星へと成り果てたが、稀に『白紙化に取り残された』地域、建物、生命が存在する。
建物は全て白く漂白されており、消しゴムで消されたような不自然な欠落部分がある。その姿は砂丘のただ中に立つ近代美術のモニュメントのよう。生命の痕跡は一切なく、生き物の死骸などの死の跡すら存在しない[注 1]。
ノウム・カルデアはこれを『残留物』と呼称した。
デイヴィット・ブルーブックの記録における白紙化の経緯は下記の通り。
宇宙からの侵略が始まり、3ヶ月ものの間は汎人類史の人類は抵抗という名の長い戦いを繰り広げた。
しかし隣国を牽制・監視する手段に長けていれど宇宙からやってくる侵略者には何のプランを持ち合わせてないために、あらゆる抵抗は無意味に終わり、ほとんどの人類が抹殺されその勢力のことごとくが消滅。最後まで侵略に抵抗していた合衆国も同様の末路を迎えた。
そして地球は完全に漂白された惑星と化し、一握りの生存者の目の前に映るのは、かつての面影の欠片もない、何もかもが一新された白い荒野が広がるのみ。
逆転の目も、生存の目もなく、あらゆる活動はなんの成果も現さないという、正しく絶望的な状況を生存者は受け入れてしまったが、ブルーブックその上で過去の記録を漁ろうと行動し、その記録を遺していた。
ただし、この記録はカドックが確認した「白紙化の後に空想樹が降りた」という事実と矛盾しており、上述の侵略がいつどこで起きたかは不明となっている。
異聞帯
- Lostbelt No.1:永久凍土帝国 アナスタシア
- 副題:獣国の皇女
異聞深度:D
年代:AD.1570? - カドック・ゼムルプスの担当地区であるロシア異聞帯。根付いている空想樹は「オロチ」。
- 氷河期が訪れた地球で延々と歴史を積み重ねた人類史。零下100度という極寒に閉ざされた強食の世界であり、ヤガと呼ばれる獣人達が暮らしている。
- Lostbelt No.2:無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング
- 副題:消えぬ炎の快男児
異聞深度:B+
年代:BC.1000? - オフェリア・ファムルソローネの担当地区である北欧異聞帯。根付いている空想樹は「ソンブレロ」。
- 北欧神代が終わらずに続いている、何一つ無駄のない冷酷で残酷な世界。唯一の神に支配された純然なる神の地。神代級の神秘が残されており、文明は発展せず、人間は神を崇め、山嶺を巨人が闊歩している。
- Lostbelt No.3:人智統合真国 シン
- 副題:紅の月下美人
異聞深度:E
年代:BC.0210? - 芥ヒナコの担当地区である中国異聞帯。根付いている空想樹は「メイオール」。
- 環境・生態系・人類種の改変がほとんど無く、確認されている異聞帯の中では、最も汎人類史からの乖離が少ない。
- 他の異聞帯と異なり、領域拡大に適さないとされる。争いなき悠久の平和と麦畑が広がる世界であり、唯一の人たる王が治めている。
- 異聞帯の王は芥ヒナコが溜息を吐き、ポーカーフェイスを保てなくなるほどの野放図か剛胆な英傑。スカサハ=スカディからは論外と言われている。
- Lostbelt No.4:創世滅亡輪廻 ユガ・クシェートラ
- 副題:黒き最後の神
異聞深度:A
年代:??.11900? - スカンジナビア・ペペロンチーノの担当地区であるインド異聞帯。アルターエゴが付いている。根付いている空想樹は「スパイラル」。
- 豊かな水と花々に溢れた平穏期と、それらが果てた荒廃期を周期的に繰り返す。この世界を統治する最後の神は、かつて在りし戦禍に絶望した英雄。
- 謎の『四角』があるらしいが、デイビットの所感によると「アキレス腱」に類する存在であるようだ。スカサハ=スカディによればペペロンチーノ自体は嫌いではないが、話に聞いた限りでは異聞帯は好かないとのこと。
- Lostbelt No.5:神代巨神海洋 アトランティス/星間都市山脈 オリュンポス
- 副題:神を撃ち落とす日
異聞深度:A+
年代:BC.12000? - キリシュタリア・ヴォーダイムの担当地区であるギリシャ・大西洋異聞帯。汎人類史より栄えているとされる、目下最大の異聞帯勢力。根付いている空想樹は「マゼラン」。
- ギリシャの巨いなるモノ達が存在する都市の模様。ヴォーダイム自身の力で攻略しており、3体もの神霊を仕えているのがその証拠。海神ポセイドンが失われ、海に汎人類史の英霊が何騎か現れている。カイニスの発言によると、アルテミスも居る模様。
- ギリシャ世界ではあるもののラスプーチンは「オリュンポス」と言っており、カルデア勢力の観測ではギリシャではなく大西洋に異聞帯の反応が確認されている。
- Lostbelt No.6:妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ
- 副題:星の生まれる刻
異聞深度:EX
年代:AD.500?→■.■.2017 - ベリル・ガットの担当地区であるブリテン異聞帯。根付いている空想樹は「セイファート」。「有り得たかもしれない人類史」とは到底思えない模様。そもそも消えかけており、維持をするのが精一杯とされているが、一方で異常な魔力も外部から確認され危険視されていた。
- その実態は女王モルガンが支配する、人間ではなく妖精の國。その有り様はクリプターの予想を超えた異聞世界。
- Lostbelt No.7:黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン
- 副題:惑星を統べるもの
異聞深度:A++
年代:BC.???? - デイビット・ゼム・ヴォイドの担当地区である南米異聞帯。根付いている空想樹は「クエーサー」。「有り得たかもしれない人類史」とは到底思えない模様。
- 地表は絶え間なく活動する火山と空を常に覆う黒雲により、生命が存在しえない環境となっている。
- 一方で地下には汎人類史のアステカ神話に語られる様な筒状世界「ミクトラン」が存在し、爬虫類から進化した人類「ディノス」が暮らしている。
- その最深部には極限の単独種が潜伏していると目されるが……?
異聞帯の人物
異聞帯の王
- イヴァン雷帝
- ロシア異聞帯の王。
- スカサハ=スカディ
- 北欧異聞帯の女神。
- 始皇帝
- 中国異聞帯の皇帝。
- 神たるアルジュナ
- インド異聞帯の絶対神。
- ゼウス
- 大西洋異聞帯の全能神。
- モルガン
- ブリテン異聞帯の女王。
- マィヤ
- 南米異聞帯の地下世界・ミクトランを運営する寄生生物のネットワーク。
ロシア異聞帯
- パツシィ
- 狩人をして生計を立てている、少し変わった思考をしているヤガ。
- シャンシャン
- 反乱軍に飼われている動物。何故かロシア異聞帯のどの動物とも似ていない。
北欧異聞帯
- ゲルダ
- 集落に住む、最近12歳になった少女。
- ラウラ
- ゲルダと同じ集落に住む少女。
- オルトリンデ、ヒルド、スルーズ
- オーディンが生み出したワルキューレの生き残り。
- 彼女たちをベースにした量産型として「御使い」が生み出されている。
- スルト
- 北欧異聞帯が剪定される原因となった炎の巨人王。
中国異聞帯
- 少年
- とある農村に住む少年。こっそり村の外に行ったりと少々破天荒。
- 衛士長
- 始皇帝の親衛隊のリーダーを務める老人。
- 会稽零式
- 始皇帝の配下。
- 傀儡兵の原型となった人造人間。度重なる改造を受けており、異形の姿となっている。
- 韓信
- 国士無双と謳われる凍眠英雄の1人。
- 秦良玉
- 反乱討伐で名を上げた凍眠英雄の1人。
インド異聞帯
- アーシャ
- ビーチュの町に住む、好奇心旺盛な少女。
- アジャイ
- アーシャの父。不愛想で少々口が悪い。
- ヴィハーン
- アーシャの飼い犬。
- プラカシュ
- ビーチュの町長。恰幅のいい初老の男性。
ギリシャ異聞帯・大西洋異聞帯
- ヘファイストス
- かつてゼウスらと争い敗れた「共生派」の一柱。鍛冶を司る機神。
- エウロペ
- 神妃ヘラと一体化した汎人類史サーヴァント。「破神同盟」の協力者。
- ディオスクロイ
- キリシュタリアと契約した異聞帯サーヴァント。人間を激しく憎悪する、旧き双神。
- ミネルヴァ
- かつてゼウスらと争い敗れた「共生派」の女神アテナが残した、機械仕掛けの梟。
ブリテン異聞帯
- 妖精騎士ガウェイン/バーゲスト、妖精騎士トリスタン/バーヴァン・シー、妖精騎士ランスロット/メリュジーヌ
- 女王モルガンにより、異聞帯には存在しない円卓の騎士の霊基を着名された強力な妖精。妖精としての本来の名は完全に隠蔽されている。
- 妖精騎士ガウェインは領地を有している。
- アルトリア・キャスター
- 妖精國を救う「予言の子」と謳われる、楽園の妖精。
- パーシヴァル
- 反女王派の「円卓軍」を束ねている人間。
- トネリコ
- かつて幾度も厄災を退けて国を救ったという伝説の救世主。
南米異聞帯
- テペウ
- ミクトラン第1階層に住む、他と異なった視点を持つディノス。
- 恐竜王
- ディノスの都市チチェン・イツァーの王。本人はディノスではなくヒトの少年の姿をしており、テスカトリポカを名乗る。
- 神官長ヴクブ
- チチェン・イツァーの神官長。翼竜のディノス。
- デイノニクス11兄弟
- テペウがかつて率いたサッカチームのメンバー。
- 闘士ワクチャン
- 当代最強のディノスの闘士。
- カマソッソ
- 偶数階層=4つの冥界線を支配する、ミクトラン最凶の男。汎人類史におけるマヤ神話の神の名を持つ。
- イスカリ
- テスカトリポカに従い第5階層の住民・オセロトルを束ねる王。彼自身はヒトの姿をしている。
- トラロック
- アステカ神話の雨の神を名乗る女性。オセロトルの都市メヒコシティを守護する。
- ORT
- ミクトラン最深部に眠る「極限の単独種」。
メモ
第5章を以て『クリプター編』と銘打たれていた第2部前半は終了となり、物語は大きな転換点を迎えることとなる。因みに奈須きのこ氏曰く、第5章を物語上の大きなポイントとしたのは『空の境界』のセルフオマージュである模様。
脚注
注釈
- ↑ その為、廃墟でありながら清潔感がある。
出典